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元引きこもりが強箱スキルで異世界勇者っ!!  作者: 大石次郎


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32話 栗鼠の路地

午後から俺とユミィは、港の方にゆくリリンとミゼヤッポとリリンのゴーレムと別れ、中央聖教会に行くことになった。


すんごい人混みだ。各地の異変のせいで余計に王都の人口が増えてるらしい。


タンダ・シュノー市より段違いで規模があり、余裕で身長2メートル越えのオーガ族や鳥の羽根を持つバルタン族といったレアな種族も多い。


「スリが多いので気を付けましょう」


「うん」


馬車もあるがより速くてパワーのある小型の恐竜みたいなのが牽く竜車(りゅうしゃ)もある。飛行絨毯の利用者もチラホラ。


たぶん地球の都会と変わらないくらいの喧騒だ。地球に竜とか空飛ぶ絨毯とかないけど···


前よりマシになったといっても俺は緊張したが、ユミィはリリンやミゼヤッポ程はノリが軽くないから、弱音を吐くと普通に心配されて『ケアされてしまう』ので下手なことを言えない謎のプレッシャーを感じ、二重にちょっと参った。


「タケルさん、顔色が悪いですね。人混みですか? カームを掛けましょうか?」


「いや、鎮静スキル取ったから」


使う程でもなかったが言ったからには使わないワケにもゆかず、俺はスキルで気持ちを落ち着けた。


「···うん、落ち着いた」


「表通りは1本外してゆきましょう。水路が整備されてるようですよ?」


「うん」


付き添いに気遣われるお爺ちゃんの散歩みたいだが、俺は素直に従い植え込みを含め中々綺麗で人通りの落ち着いた、水路沿いの通りをユミィと歩いていった。


テンパると押し出し強めだが、ユミィは基本、徳高いなぁと。


_____

  


で、スエリィーア国の中央聖教会の大聖堂の奥間まで来たワケなんだが、


「失礼、もう一度鑑定してもよろしいですか? むぅっっ、···勇者だ!」


「私も鑑定してよろしいか?」


「私もっ」


「ニホン語! これが勇者学で言うチキュウ世界の言語か···」


「やはり『とらっく』という転送神獣に一度殺害される儀式を経てこの世界にっ?!」


「いや、経てないです···」


事情を知る教会のお偉いさん達に鑑定されまくるやら、質問されまくるやら。


「タケルさんは他の世界から来られたんですか?」


そう、ユミィや仲間にも出自はややこしいからボカしてきていた。


「このクエスト終わって合流したら皆に詳しく話すよ。というか! いいですかっ?」


面倒過ぎて、ステータスオープンされ過ぎて、人見知りより『もう勘弁してくれ』という意識が勝り、俺は大きめの声を出せた。


「『聖堂の古物所蔵庫で暴れてる悪霊退治の応援』に来たのですがっ??」


お偉いさん達は戸惑った顔をした。


「いや、それでしたら午前中に手の空いた僧兵と出入りのアンデッド退治の得意な冒険者達に片付けてもらいました。入れ違いでしたな」


「ええ?」


「まぁ」


空振りだ。どーしよ? 顔見せ『だけ』なら済んだからもう海辺のクエストに戻ろうかな? 気が抜けた俺が、一応と神様メモを見ようとしたら、


「せっかくですので繁華街の裏手で探索している者達を支援してもらえませんか?」


「邪教徒の炙りだしか。後方支援くらいならいいんじゃないかね?」


「邪教徒対応の様子くらいは見ておいた方がいいだろう」


「1人、密偵と連絡がつかなくなっているが」


「今、囲みを掛けているはずですよ」


「栗鼠使いの付き添いくらいでよいのでは?」


なんか、新しい仕事が生えてきてる···


「タケルさん、教会任務の範囲でも、こういう『その場の流れで切り替わる仕事』はあやふやな所があります。気を付けましょう」


ユミィが耳打ちしてきた。


「あ、ああ、そだね」


教会のお偉いさんは咳払いして俺達に向き直った。


「勇者タケル殿。繁華街裏手に邪教徒達の拠点の噂があります。念入り隠しや迷いの術が掛けられていたのですが、だいぶ抜けて、今はルートを取って突入の機会を伺っているところです。探知専門の班の『ほんの付き添い』という形で少し参加してみませんか? ギルドにはこちらで報せておきましょう」


「···やってみます」


ここでお偉いさん相手に、


「急に振られても困ります。正式な資料を作ってギルドを通して発注し直して下さい」


とズバーンっ! と断れる俺じゃなかったさ。


_____



ざっくりとした資料をもらい、昼間でも騒がしい繁華街をうへぇ、となりながら横切り一転してうらぶれて薬品臭の強い裏手の通りに入って資料頼りに進むと、


「同志ユミィ・ゴブレットと護衛の魔法兵の方ですか?」


路地を占拠する形で魔除けの利いた簡単なテント拠点があり、教会関係者が十数名程いた。


目配せする俺とユミィ。末端だとそういう感じか。


「はい、こちらタケル・キャンデさん。タンダ地方の有力な冒険者です」


「そうですか、田舎からわざわざ御苦労様です」


「どうも···」


ナチュラルな都会人ムーヴに面喰らうよ。


「鑑定しますね」


念入りに鑑定される俺達。今は入れ替わりの類いはかなり警戒されてる。


「はい、結構です。話は伺っています。ええと、中央からの推薦···さすが聖都御出身ですね」


「いえ」


困惑のユミィ。


「はい、先程鑑定済みの使い魔で承っております。資料通り、この先のニョの16番隊の冒険者達に合流して下さい。『遠距離探索の護衛』程度ですので、お気軽に」


「はい。それでは···」


「失礼しまーす···」


「神の光あれ!」


俺達はそそくさとテント拠点を通り抜けていった。


「すいませんね、タケルさん。悪気はないのですが、教会はどうしても浮世離れした感覚があるので」


「いや、まぁ」


歩きながらちょっと気まずくなってしまった。


「···神様のメモはなにか書かれていましたか?」


「え? ちょっと見てみよっか」


タイミングを逸していたメモのチェックをしてみる俺。


『栗鼠は勢いあるよ?』


と書かれていた。


「栗鼠···」


「どうしました?」


またわかり難いコメントきちゃったな。だがっ、経験上のこの感じと状況はタダで済まないヤツ!


『そっと後ろで見届けるだけ』みたいな楽なクエストとか、やっぱないかぁ···

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