第六十二章
その報告をルナが受けたのは、昼過ぎだった。
ファンニが何か問いたいのを我慢しているように、ルナへと告げる。
ダンとブリスらについての、ルナの希望が全て叶えられたのだ。
ダンには貴族の後見人がつき、教育の機会が与えられ、ブリスたちは軍隊の学校には入れる。
「だから今、時間を与えるので、その子たちに教えてあげて来なさい」
ファンニに言われ、ルナは勇躍して馬車に飛び乗った。
目的地は例のゴミ集積場。
日が高いからか、まだロドリン地区は平和なフリをしていた。
ルナは停車した馬車から降り、折良く集まっている少年たちに、近寄った。
「ルナっ!」
彼女に気づいたダンが、泣きながらその胸に飛びついた。
「どうしました……?」
「ああ」とそこに、一人の名も知らぬ大人の男がいる。
「ダンの父親、コリーが死んだ……今確認をして来たところだ……昨日の晩、何者かに襲われたようだ」
「父ちゃんが、父ちゃんが殺された! 父ちゃんが、死んだんだっ!」
ダンの悲痛な悲鳴に、ブリスたちも言葉を失っている。
「コリーは最近おかしかった。妙に金回りが良かった……みんな噂していた……やっかいなことに手を出したんだって……あるいはマズイ奴から盗んだか」
「違う!」ダンは男に声を枯らして叫ぶ。
「父ちゃんを悪く言うな! 父ちゃんは、父ちゃんは……ちくしょう、ちくしょう」
ダンの涙で、ルナの服が湿っていく。
「おれが、おれが必ず犯人を見つける! おれが復讐するんだ! 父ちゃんの」
「いいえ、ダンさん。その必要はありません」
と、ルナは否定した。
「あなたのお父様を殺した人殺しどもには、必ず神様、聖カリステゥス様が天罰を落として下さるでしょう。そうです! コリーさんを殺した人殺しどもは、
必ず地獄に墜ちるのですっ!
だから、あなたはただ、それを待って見ていれば良いのですよ」
ルナはその時、優しく微笑んでさえいた。
「地獄に……? 本当かい? ルナ」
「ええ……彼らは地獄に堕ちるだけです」
それからルナは、ダンとブリス、コーム、ゲルトに人生の転換を告げた。
みんな驚き、興奮したが、ダンの手前、喜びを爆発させるものはいなかった。




