表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/64

第五十七章


「へ、へへへへ」コリーが安心したように、口を開く。 


「なんだ、あんた、大したこと無いな……オレから身ぐるみ剥ごうって考えているようだが、オレを狙ったのが間違いだぜ」


 彼は自分自身を、親指で指した。



「オレを知っているか? コリー様だ……あの英雄、アレクシスの首を刎ねた、へへへ」



 コリーは何がおかしいのか、肩を大きく震わす。


「あいつは最高だったな。わざと背中に最初、入れてやった……そしたら血がマグマのように……」


 ルナの額から血の気が、あらゆる温度が消えた。


 彼女に流れる全ての血液が、そこで沸点を迎え、体内で爆発する。




「……ありがとう、ございます」




 ルナは丁寧に礼を言った。




「ほんとうに、ほんとうに……ありがとうございます」




 凄絶に、残酷に、冷酷に、殺意のまま礼を述べた。



 もうあんなに胸の中で囁いていたダンの儚げな姿は、どこにもいなくなっていた。


 ルナの放った凄まじい殺気で、彼らの近くで這っていたネズミが恐慌を来たし、逃げ出す。


 自分が有利だと勘違いしているコリーは、気づいていない。


「うるせえっ!」


 コリーのナイフの切っ先が、彼女に走る。 


 だが片手で簡単に、ルナはその手首を抑え、外へと方向を変える。


 そして飛びこんだ。コリーの懐の中だ。


「う、ぐっ」彼が苦痛の声を漏らす。


 ルナの針はコリーの脇腹を、深々と貫いていた。


「うわあっ!」


 コリーが腰が抜けたように、その場に崩れる。


「いてえ……いてえ、いてえ!」


 彼は衣服を泥だらけにしながら、地面を転がった。


 ルナは極低温の目で、それを眺めている。


 急所は狙っていない。だからコリーはまだ死んでいない。


 ただ、針の毒が回り、コリーは苦しみ出す。


「うう、ううう」彼は呻き出す。


「頼む、助けてくれ……頼む……分かった、金は渡す、だから……」 


 コリーは涙を流しながら、ルナを見上げた。


 血にまみれるコリーだが、それはわざとだった。


 ルナは彼を一撃で殺そうとは思わなかった。


 アレクシスがそうだったのだ。


 毒が効き、苦しくなって来たのか、コリーの呼吸が荒くなる。


「……頼む。命だけは勘弁してくれ……オレには、オレには息子がいるんだ、だから……」




「兄様には私がいた!」




 ルナは長い針をコリーの眉間に突き刺した。


 ばたり、と不意に力を失ったコリーの腕が、落ちる。


 はあはあ、としばらくその場で息を整えていたルナは、コリーの衣服に手を伸ばすと、探る。


 すぐに見つけた。


 彼女がわざと置いていったのをコリーが拾い、勝手に使っていた、貨幣が入った革袋だ。



「使い出があったろ? これは私が侍女として働いた給金だ」



 ルナはそれを回収し、言い残すと、さっと離脱した。 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ