第四十四章
今までテーブルで、ゴミの中の大きな穴を覆い隠していたようだ。
「大丈夫ですか? ウィル様」
ルナも少し慌てて、ゴミの中に落下したウィルを探そうと、ランタンで上から照らした。
「何だよこれ、うえっ、汚いなあ」
ウィルは高価そうな衣服を汚し、色々なゴミがひしめく穴の中で、悪態をついていた。
何か咄嗟に掴んだのか、彼の腕には布のようなもの、だらりとしたものがある。
「あ!」
ルナは思わず口に手を当て声を上げた。
「何? えっとこれなんだ? 縫いぐるみ?」
ウィルがゴミの山から滑るときに掴んだのは、ウサギの形をした縫いぐるみの耳部分……アイリス姫の、あの縫いぐるみだったのだ。
「見つけましたっ!」
喜びが溢れ、ルナの胸が痺れた。
ついに、彼女は見つけたのだ。アイリス姫が奪われた大切なものを。
「これは……でも、これ……」
ウィルは手の中にある縫いぐるみを確認しながら、何か呟いている。
「見つけたのか?」
ダンが嬉しそうに目を輝かせるから、ルナは強く頷いた。
「はい、皆さんのおかげです! ありがとうございました!」
「やったじゃん! ルナ」
「はい、ブリスさん。お手伝い、とても助かりました」
ルナと少年たちがそう盛り上がる中、どうしてかウィルは険しい表情になっている。
「……これで良いのか? これを探していたのか?」
「はい。ウィル様。大手柄です」
「……そうか」
彼は汚れて機嫌が悪くなったのか、何か沈思している。
「……では見つかったことだし、もう宮殿に帰るぞ」
ウィルは縫いぐるみを持ったまま、いそいそとルナに告げる。
「そうですね」と彼女は頷き、ランタンで協力してくれたダン、ブリス、コーム、ゲルトを順に照らす。
「皆さん、このお礼は改めて致します。本当に助かりました」
「なあに、気にすんな。オレたちは暇つぶしをしただけさ」
ブリスが澄ましたように答え、ルナの目頭が熱くなる。
「行くぞ、ルナ」
何故かウィルが急かすから、「はい」とルナは慌てて彼と馬車に向かう。
振り返ると、ゴミ漁りで生計を立てていた少年達が遠ざかった。
「ありがとうございます」
ルナは今一度呟いた。




