第三十六章
ルナがゴミ集積所に戻ると、彼女のランタンを見極めたのか、すぐにダンたちが近づいて来た。
「……どうだった? 父ちゃん」
心配そうなダンに、ルナはいつもの笑顔になる。
「大丈夫です。今日は好きなだけ呑めるでしょう」
「そっか、こっちはダメだ。縫いぐるみはまだ見つからねー」
「そうですか」
とブリスに答えていると、ダンが何かに耐えるように唇を噛みしめている。
「どうしました? ダンさん」
「ルナ……頼むから父ちゃんを嫌わないでくれ」
「え?」
「父ちゃんは、確かに酒ばかりでダメだけど、優しいところもあるんだ。いつもあんなんだけど、おれが母ちゃんに出来たから、傭兵を辞めて処刑人になった……おれの為に父ちゃんは名誉を捨てたんだ」
「……ダンさんのお母さんは?」
「ずっと前に病気で死んだ」
「そうですか……」
「ルナ。今日父ちゃんが呑んだ分の代金は、必ずあんたに返す。だから父ちゃんを嫌わないでくれ」
ルナの呼吸が詰まる。
彼女は気づいた。
それは、知っては、ならぬ、情報だ。
刺客が、殺害対象の事情知ると、手が鈍る。
不安そうに見上げるダンの瞳に、ルナの硬質な仮面のような笑みが写っていた。
その後、再びゴミの中を探したが、やはりアイリス姫のウサギの縫いぐるみは出てこず、自然と時間になり、解散した。
ルナは約束通り迎えに来たゴーチエの馬車に乗って、エンディミオン宮殿へと戻る。
二日目の徹夜の後であるために、身体は緩く温まり出すが、それをおくびにも出さず、彼女は侍女の仕事をこなした。
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