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第十九章
ロドリン地区で歩を進めて、すぐに分かった。
確かに危険だ。
ルナが手にしているランタンから隠れるように、いくつかの目が彼女に向いていた。
街角、部屋の窓、物陰。
びりびりとした警戒信号が、彼女の中枢神経を這い上った。
ルナは腰の拳銃ではなく、ベルトの下部分に連ねてある針を撫でる。
そこらの狼藉者などに負けるつもりはなかった。むしろ返り討ちに出来る。
彼女は、いつもは隠している殺意を、敢えて剥き出す。
唇に硬質な笑みが浮かび、簪から長い針を抜いた。
それだけで十分らしい。
ぎらぎらとした獣の視線が、ルナから外される。
この街の住人はただの犯罪者ではない。本物の悪党だ。
だから分かる。嗅覚に触れる。
ルナは人殺しなのだ。
それも訓練を受けた、普通ではない異常な人殺しだ。
半端な悪党を逆に喰らう、猛獣である。
すっとルナに絡みつく気配が緩む。
肉食獣を襲う獣はいない。
ルナは持たされた拳銃の重さが気になり、一度立ち止まり、針を簪に戻す。
今の彼女に闇の中で飛びかかるバカはいない。
確信したルナは、むしろ軽い足取りで、いつかマリアから聞いていたゴミの集積所に向かった。




