千三百十話 その事実に、変わりはない
「ここから先は、絶対に通さんぞッッッ!!!!!!!!」
「であれば、俺たちとしては、確実に、通らせてもらいます」
最初の接敵までかなり移動し続け、ようやくゴリディア帝国の騎士や冒険者たちと遭遇。
変わらず強者であることに間違いはない。
ただ、アラッドはこれまでの強敵たちと違う点に関して直ぐに気づいた。
(この人たち……気合の入りようからも、解る、が……あまり、俺たちを殺す気が、ない?)
騎士や冒険者関係なく、多くの者が盾を有している。
「ッッ!!!!!! くぅ~~~、堅い、じゃない!!!!」
ガルーレの剛拳にも耐え、連撃にも対応。
(簡単には、打ち破れない、ね)
スティームの雷速に反応できる者も多く、これまでの戦闘と比べてダメージが通りずらい。
「っ、チッ!!!!!」
当然のようにアラッドの斬撃にも対応し、攻めっ気は薄いものの、受け流した隙などは見逃さずに攻撃を仕掛けてくる。
(このまま消耗させられるのは良くない……手を変えるか)
アラッドは愛剣をしまい、迅罰を取り出した。
「ふぅーーーーー、っし!!!!!!!!!!」
「ぐっっっ!!!!!!!!!」
迅罰は木刀の形状をしており、斬るのではなく叩き潰すことに特化した武器。
騎士たちとて剣だけではなく槍や戦斧、ハンマーなども同じく受け流すことが出来るのだが……斬るのではなく叩き潰すという行為に力を注いだアラッドの一撃は予想以上のもの。
加えて木剣から放たれる雷に耐えるには、それ相応の魔力を纏わなければならない。
(予想以上の、衝撃だが、しかし!!!!!)
主にアラッドの相手をするのは歴戦の守護騎士。
斬撃から打撃という変化に戸惑うことはなく、すぐさま受け流しの質を変化。
「っ!!」
(ここだッ!!!!)
守護騎士らしく盾の扱いに優れた騎士ではあるが、攻撃の腕も一流レベル。
「がっ!!??」
だが、アラッドは老いても実力者である守護騎士を嘗めてはおらず、迅罰による打撃も受け流されてしまうだろうと予想していた。
だからこそ、受け流された瞬間に蹴りを叩き込んだ。
(これなら、通じそうだな)
防ぐ技術は当然超一流であり、受け流す技術も同じく超一流。
その技量に感服すらしていたアラッド。
自分では絶対にたどり着けないだろうと認識しているからこそ、斬撃という技術を無視してはならない攻撃から、木刀による打撃という多少は無視しても構わない攻撃方法へとチェンジ。
アラッドは一般的な剣技をメインとした攻めから野性的な剣技へと変え、攻撃も受け流されることを前提とした動きをしていた。
(この、ままではッ!!!!)
アラッドを相手に、既に五分以上耐え続けている守護騎士。
狂化を使用していないとはいえ、殺す気で挑んでいるアラッドにそこまで耐え続けるのは偉業とも言えた。
だが……全ての盾使いたちが、老騎士ほど耐えることは出来なかった。
「ふぅーーー、最後まで油断ならない、って感じだったね」
「そうだね……殺す気が無いように思えて、全くそんな事はなかった」
ガルーレたちの周辺には盾を持った騎士や冒険者たちだけではなく、黒衣を身に纏う影の者たちまで倒れていた。
盾を扱う者たちも可能であればガルーレたちを倒したかったが、部隊としてはあくまでアラッドたちをこれ以上奥へ行かせないこと。
彼らも老騎士と同じく、防御力に囚われたサンドバッグではない。
元々無視するつもりはないものの、越えて奥に向かおうとすれば、無視できない攻撃が迫る。
だが、ゴリディア帝国の本命は影の者たちによる襲撃。
盾使いたちを倒し終え、気が緩んだ隙を狙う。
装備にはしっかり猛毒や呪いの効果が付与されており、普通に油断してたらあの世へ飛ばされてもおかしくない。
しかし、事前にファルやクロが存在を把握していたため、その刃もガルーレたちに届くことはなかった。
(……だとしても、諦めるわけには、いかんのだッッッッ!!!!!!)
「っ!!!!!!!???????」
熟達した盾使いと戦う際、気を付けなければならないことがある。
それは……ダメージの反転。
盾で受けた攻撃力をそのまま返す技、反転。
これまで受け流してきたアラッドの打撃……それを返したことで、アラッドの右腕は弾き飛ばされる……だけでは済まず、手や腕が複雑骨折状態となり、激痛が走る。
(っっっっっっ!!!!! っ、が、どうしたッッッ!!!!!!!!!!)
痛みに怯むことなく、残った左腕を伸ばし……盾を握りしめた。
「ぅお、ら゛ッッッ!!!!!!!!!!」
「なっ、っ!!!!!!??????」
老騎士の戦斧が間に合う前に宙で身を捻り繰り出されたアラッドの蹴りが、男の鎖骨に突き刺さる。
「はぁ、はぁ……」
(両手では……もぅ、持てぬ、な…………)
アラッドの蹴りは鎖骨を完全に砕くだけではなく、左の肺にまで無視できないダメージを与えた。
直ぐに質の高い回復を受ければ治るが、老騎士が身に着けていたアイテムは既にアラッドとの戦いで使い果たしていた。
「…………」
「……ふっ、何を……躊躇う。若き、強者よ」
「……あなたは、ただ……守りたかったんだろう」
アラッドの言葉に、同じく盾を扱う者たちと戦っていたフローレンスたちの表情が、僅かに震える。
「ふふ……違うな。私は……私たちで、確かに君たちを仕留めようとした……その事実は変わらない」
「……そうですか」
それ以上語ることはなく、アラッドはロングソードを抜き……老騎士の首を斬り飛ばした。




