千三百九話 終わった後……
SIDE アラッド
(はぁ、はぁ、っ!!!! 死ぬ、のか……どうすれば、どうすれば、あの、怪物を!!!!!!)
青痣、切傷は言うまでもなく、内傷も至る所にあり、幸いにも四肢は動かせるといった状態。
アラッドは仲間を、家族を人質に取られている訳ではない。
ただ単純に目の前の敵と真正面から戦い、ただ……残酷にも、追い詰められていた。
「よし……行くぞ」
アラッドの声に、パーティーメンバーであるスティームたちが頷く。
アラッドたちがいる戦場では基本的に彼らが強敵たちを潰し、零れてしまった者たちを騎士や冒険者たちが打ち取ると言った歪な陣形で戦っている。
しかし、アラッドたちの戦力であれば、決して理不尽なものではない。
加えて……ゴリディア帝国としてはアラッドたちを潰したいという思いもあり、戦力が彼らに集中していた。
それはそれで、アラッドたちにとっては好都合な展開であり、これまで全戦全勝……勝利の山を築き上げていた。
「…………ねぇ、アラッド。もしかして、今日で終わりそうな感じかな」
「どうしてそう思うんだ」
彼としては、早く終わるに越したことはない。
だが、今日で終わるだろうという予言めいた感覚は特になかった。
「ん~~~~……やっぱり、ゴリディア帝国も人材? に、もう余裕がないんじゃないかな~って」
「あぁ、なるほど。そういう事か…………冷静に考えてみると、やっぱりそう思うか」
ゴリディア帝国はアラッドたちを強敵と認識している。
それもただの強敵ではなく、常識外の強敵。
そのため四人……従魔や精霊も含めて八名ほどの少数部隊を潰すために、多くの実力者たちが派遣された。
しかし、アラッドたちはその実力者たちを悉く殲滅し続けた。
基本的に慈悲を与えることはなく、全て首を跳ね、心臓を貫き、胴を切断。
ヴェラ、レピア、ソーニャ、カーラ、イリスの五人のみ保護し、現在サルトの収容所に入れられている。
「そうだよ。だって、もう……何人殺ったか全然覚えてないしさ」
遭遇する敵を全て殲滅し続けているため、ガルーレの殺った数を覚えていないというのは、決して嘘ではない。
それほどまでに多くの強者たちがアラッドに挑み、その命を散らしていった。
実力者たちの中にはタイマン勝負となるとスティーム、ガルーレの二人だと勝率が五割を切る強敵もいたが、これは戦争であり……二人には相棒である従魔もいる。
その結果、百を優に越える実力者を投入しても、アラッドたちを誰一人として削ることが出来なかった。
「それに、他の戦場でも強い人を用意しとかないと対応できないでしょ。戦争が何日で終わるのかなんて解らないけど、もうゴリディア帝国にはあまり人がいないと思うんだよね~」
「………………それが、ゴリディア帝国が望んだ未来ということだ」
終わった後のことを考えると、国に残っている者たちが不憫だとは思う。
しかし、アラッドはアルバース王国の人間である。
一番の願いは、アルバース王国の者たちが生き残ること。
だからこそ、自分の命を狙う者たちを……この先他の戦場で暴れるかもしれない者たちを見逃すことは出来なかった。
(……アルバース王国がどういった対応をするのかは解らない。ただ、他の国が狙うかもしれないな)
ゴリディア帝国が今回の戦いが終わった後、どこまで見通しているのかアラッドには解らない。
それでも、ゴリディア帝国の国力……戦闘力が落ちるのは間違いなかった。
そうなった場合、アルバース王国は勝者として、これ以上血を流させないためにそこで終わらせる。
だが、他国がどう対応するかは解らない。
基本的にどの国も現状に不満はなく、戦国時代のような状況ではない。
そのため、戦争など行わないに越したことではない。
民だけではなく、国の上層部たちも同じ気持ちである。
ただ……大した消費をすることなく他国を支配できるとなれば、話は変わる。
「……チッ。今回の戦いが終わっても、新たな火種が残るのかもしれないな」
「…………っ、なるほど……確かに、大きな火種ですね」
「火種?」
火種という言葉に首を傾げるガルーレ。
対して、スティームは少し考え込んだ後、二人と同じ考えに至った。
「っ、そっか…………数十年後ぐらいに、また今回みたいなことが起こるのかな」
「どうだろうな……数十年後か………………」
仮に他国がゴリディア帝国に攻め入り、実質的な支配下に置いた場合、数十年もあれば……自然の影響もあるが、人が育つには十分な時間となる。
「……もしかしてアラッド、数十年後はどうやって戦おうかって考えてる?」
「そうならない方が良いのは解ってるけど、今回みたいに戦争っていう戦いが起こった以上、起こり得ない話ではないからな」
ガルーレとしてはそこではなく、数十年後……肉体的には全盛期を過ぎたあとでも、参加する気満々なところにツッコみたかった。
「……へへ、アラッドはアラッドのままって感じだろうな~~~」
「なんの話だ?」
首を傾げるアラッド以外のメンバーは、ガルーレの言っている事が理解でき、その通りだろうと笑みを浮かべるのだった。




