千二百二十二話 預け合える
SIDE ディーナ
「…………」
「…………静かだな、ブローズ」
「ガゥ」
Bランクの女性冒険者、ディーナは従魔である虎竜のブローズと共に最前線となる街の一つ、スパリガへと向かっていた。
アラッドから頼まれていた通り、ディーナはがっつり戦争に参加するつもりで目的地へと向かっていた。
そんな中……普段と比べても、やけに静かだなと感じた。
(こんなにも静かだったか…………いや、多くの冒険者たちが狩りや依頼に向かわず、戦地へと向かっているからか)
微かに、獣の声は聞こえる。
だが、生物と生物が戦う音、吼え合う声などは全く聞こえない。
(……今更だが、冒険者や騎士たちが戦争に集中している間、モンスターたちが街を狙わなければ良いが……さすがに考えているか)
強者を戦地へ送らなければ、戦争に勝てない。
しかし、全ての強者を戦地へ送ってしまうと、強大な力を持つモンスターに街を攻められた際、守れず壊滅してしまう。
(ブローズの母親は、確かな知性を持っていた……アラッドから聞いた闇竜デネブは、確かな知性を持ちながら、明確に人間を仕留めようと……襲おうという闘争心、征服心を持っていた。仮にあのようなモンスターが残っていれば………………考え込んでしまうな)
街の防衛の心配などは、自分が考えるようなことではない。
それはディーナも解っているが、これまで……両親の仇を討つために、その事だけしか考えていなかった反動からか、自分以外のことをよく心配するようになった。
(アラッドであれば、その辺りも上手く考えているのだろうか)
「ガゥ?」
「……ふふ、バレたか」
アラッドの事を考えていたのを相棒に見抜かれたディーナ。
苦笑いを零しながらも、否定しなかった。
「彼はただ戦うだけではなく、多くのことを考えていそうだと思ってな」
「ガゥゥ……ガゥ?」
「ん~~~……そう、だな。実際にパーティーのリーダーとして行動している。今回の戦争でも、部隊のリーダーとして活動している可能性は高そうだな」
本人が否定する顔が容易に浮かぶも、ディーナはアラッドにはそういった立場が割と似合うと思っていた。
「とはいえ、そうなるとそれに不満を持つ者が……っ!!」
「ガルルゥ」
「あぁ、そうだな……近いな」
戦いの音が耳に入る。
鉄と鉄がぶつかり合い、吼える声までもが聞こえる。
明らかに……モンスターと人ではなく、人と人が戦っている。
「行こう」
「ガウッ!!!」
即座にディーナを背に乗せ、音が聞こえる方へ駆け出すブローズ。
(むっ……どうやら、あまり必要なかったか)
十秒後には現場に到着。
ディーナの予想通り、そこは人対人……山賊対冒険者による戦場だった。
冒険者たちは街へ向かう商隊を守っており、不利な状況ではあるが……護衛である冒険者たちの中に、二人ほど光る実力を持つ者たちがいた。
(とは、気付いたのだから、少しは手伝わなければな)
ブローズの背から飛び出し、得物である槍で山賊の脳天を一突き。
「なっ、なんだてめぇは!!!!」
「お前たちを始末するものだ」
「っ、嘗めてんじゃねぇぞッ!!!!!!」
「…………」
ディーナは山賊が何を言っているのか解らなかった。
そもそもの実力が離れている。
山賊たちの中ではそれなりに実力があるものの、ディーナは若くしてBランクに至った傑物の一人。
並みの山賊であれば、ブローズの力を借りずとも一人で盗賊団を潰すことが出来る。
「がっ!!!???」
「なん、で…………」
元々数が減らされていたこともあり、ディーナとブローズが参戦したことで、戦闘はあっという間に終了した。
「……勝手に参戦させてもらった」
「い、いえ。あなたが参戦してくれたお陰で、無駄に疲労せずに討伐することが出来ました! ありがとうございます!!!」
一人の青年が……パッと視、光るものがあると感じた青年がディーナに頭を下げ、礼を告げた。
その後、青年だけではなく他の同業者……商隊の商人たちも礼の言葉を伝えた。
彼らにとって一番大事なのは勿論命ではあるが、それ同等と言えるほど……商品も極めて大事なものであった。
移動中の商品に傷がつく、壊れる……商品として売れなくなってしまえば、その分だけ利益を確定で失うことになる。
「あの、ディーナさん。良ければ、次の街まで一緒に向かいませんか」
「………………そうだな。そうさせてもらおう」
あっさりと盗賊を仕留めたディーナではあったが、過去に対峙した盗賊と比べ、やや強さが上であった。
この先も商隊が盗賊に襲われる可能性があると思うと……同行したほうが後で悪い知らせを聞かずに済むと判断。
「あっ、そういえばまだ名乗ってませんでしたね。俺はクラート。Cランクの冒険者です」
「……オルフェンです。ランクは、クラートと同じCランク」
「オルフェンとは、この先の件で臨時でパーティーを組むんですよ」
「この先で…………なるほど、そういう事か」
正体の護衛を担当している冒険者たちは、全体的に見ても弱くはない。
ただ、頭二つか三つ抜けているのはクラートとオルフェンの二人。
護衛の冒険者たちであればまだしも、クラートとオルフェンだけであれば、互いの背を預けて戦うことが出来る。
そして、何の為に背を預けるのか、ディーナは直ぐに察した。




