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スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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千二百二十一話 やはりぶっ飛んでいる

一度ある事は……とりあえず二度ある。


アッシュたちの前で、ラディアたちが深々と頭を下げていた。


「本当に、済まなかった」


「……ドラスさんたちにも散々頭を下げられたので、お願いですから頭を上げてください」


なんとか、溜息は吐かなかった。


ラディアたち三人が、シルフィーに迫る攻撃に対して対応出来なかったことを、本気で後悔しているのが解る。

だからこそ、その気持ちは有難いし……無駄な気持ちだとは思わない。


ただ、そういったところはアラッドに似ているのか、あまり頭を下げられるという対応に息苦しさを感じる。


「しかしだな」


「多分ですけど、ラディアさんたちに仕掛けていた人たちのレベル、上がっていましたよね」


基本的に目の前の戦いに集中し続けていた。

それでも周辺視野から入る情報から、なんとなく初日、二日目との変化を把握していた。


「うむ、そうだな。間違いなく、三人に迫る者たちの強さは上がっていた。冒険者のランクにすれば……最低でもCランク、といったところか」


ゴリディア帝国は、リエラとラディア、ライホルトの三人の詳細は知らない。


アルバース王国側として参加しているため、アルバース王国の若く優秀な種だと判断し……シルフィーとアッシュと同じく、戦争に負けたとしても潰しておくべき存在だと認識されていた。


「むっ、それは……そうかもしれないですが」


実際のところ、ラディアは精霊剣の力を発揮することが多く、ライホルトも巨人の怒りを何度も使用させられた。


Bランククラスの戦闘者が襲いかかってくることも珍しくなかった。

アッシュとシルフィーたちと同じく、今回の戦場に来てから絶えない戦いによってレベルは上がっていたが、それでも楽に対処出来るほど能力値は上がっていない。


ライホルトたちはライホルトたちで、三日目は特に苦しい戦いを強いられていた。


「間違いなく、楽に対応出来る状況ではなかったと思います。なので、三人とも頭を上げてください」


「…………分かった。ふぅーーーーーーー……しかし、アラッドであればと考えてしまうな」


アラッドであれば、あれほど多くの襲撃者が来たとしても、上手く対応しながら二人に迫る強敵にも対応出来たのではないかと思ってしまう。


(出来るか出来ないかで言えば……出来なくはないと思う。ただ、アラッド兄さんの傍にはクロがいる……多分、今はスティームさんやガルーレさんとも一緒に戦ってる。アラッド兄さんも……誰かと共に戦っている)


なんでも出来る、なんでも対応出来そうなアラッドではあるが、現状……周りにいる者たちと共に支え合いながら戦っているのは間違いなかった。


「アラッドも、人間であることに変わりはない……今回の様な戦いであれば、無茶を続けていればその隙を狙われてしまうこともあるだろう。まぁ、その時はクロが防ぐじゃろうが」


「……アラッドたちは、無事だろうか」


自分がアラッドの身を心配するなど、おこがましいことは解っている。


それでも、この三日間の戦闘で自身の身に危機が迫ると感じたのは、一度や二度ではない。

ラディアは戦闘者たちの中でも一応上澄みには入るが、戦場という乱戦ではどこから飛来するか解らない攻撃で致命傷を受ける可能性が十分にある。


加えて……なんとなくではあるが、自分たちが戦ってきた相手よりも、強い相手と戦っている思えてしまう。


「…………ブルルルゥ」


「む? それは本当か?」


「ルルゥ」


「そうか……なんともあやつらしいというか」


「? 何があったのですか」


「ユニコーンがな、先日の昼頃にアラッドの笑い声を聞いたらしいんじゃ」


「……え、えっと……それは、どういう事、でしょうか」


意味が解らない。

そんな表情を浮かべるのはラディアだけではなく、他二人も……シルフィーやアッシュも大なり小なり差はあれど、似た様な表情を浮かべていた。


「言葉通りじゃよ。アラッドはどこかしらのタイミングで大笑いしていたようじゃ」


「……この戦いの中で、ですか」


「おそらく、戦いの中でじゃろう。もしくは、ゴリディア帝国の者があまりにも馬鹿馬鹿しく、怒りが全く湧かず……逆に笑ってしまう様な状況じゃったのかもしれんがな」


「あぁ~~~~、一周回ってという感覚であれば、戦争という戦いの中でも、笑ってしまうかもしれませんね」


ぶっ飛んだ存在、常識の外にいる存在……そう思われながらも、それなりに常識のある人間……と思わせて、やはりぶっ飛んでいるところがあるのがアラッドという人間。


戦争中、テンションが高まり過ぎて笑い声が零れてしまうことは、そこまでおかしくない。


ただ……少なくとも、アラッドはこの戦場にはいない。

つまり、別の戦場にいるにもかかわらず、ユニコーンの耳に届くほどの大爆笑をしていたことになる。


「まぁ、そういう状態であれば、まず生きて戦い続けてるのは間違いないかと」


「そうですよ!! スティームさんやガルーレさんも超強いですから!!!」


「……ふふ、そうだな」


彼らは知らないが、現在アラッドの少数鋭部隊にはフローレンスというスーパーエリートもいる。


(アラッド兄さんだけじゃなくて、スティームさんやガルーレさんも頑張ってる……私も、もっともっと頑張らないと!!!!)


シルフィーは……決して、自分を追い詰めてはいなかった。

変な焦りも感じていない。


ただ真っすぐ、前に進もうと純粋な炎を燃やし、滾らせるのだった。

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