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スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす  作者: Gai


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千二百二十三話 運が良かっただけ

「クラートとオルフェンは、ゴリディア帝国の戦争と参加する為に臨時パーティーを組むんだな」


「えぇ、そうなんですよ。恥ずかしながら、俺はあまり他の冒険者と交流がなくて」


「俺も、似た様な理由」


護衛中、ディーナたちは自分たちの目的地が同じであると知り、ほんの少し盛り上がった。


「ディーナさんは……お一人で参加するんですか?」


「あぁ、そうだな…………同業者たちと関りがなかったわけではないが、ここ最近までずっと自分の目的の為に生きてきててな」


「目的の為に、ですか。その……どんな目的なのか、お聞きしても大丈夫ですか?」


「問題無いよ。冒険者にはよくある事……復讐さ」


次の瞬間、クラートは軽々しく訊くんじゃなかったと若干後悔した。


他の同業者たちも似た様な反応であり……オルフェンだけが、ディーナの冒険者にはよくある事、という言葉に納得していた。


「ふふ、そんな顔をする必要はないよ。本当に、冒険者にはそこまで珍しいことじゃない」


ディーナは過去、それなりの攻略難易度のダンジョンを探索していたことがあり、そういった場所では特定のモンスターに復讐心を持つ人間がちらほらといる。


「それに、復讐は……達成出来たからね」


「そ、そうだったんです、ね。それは……その、良かったです」


「とはいえ、私の力だけで成し遂げられた訳ではない。それまでに関わってきた者たち。加えて……その時点では、まだ友人ではなく……知人と言える関係性だったか。実は、私が復讐対象であるモンスターを標的にした同世代の冒険者たちがいたんだ」


「もしかして、喧嘩になったんですか?」


「喧嘩にはならなかった、かな。ただ、私から挑んだ。私があなたとの試合に勝てば、そのモンスターに挑むのは止めてくれないかと……無茶なことを言ってる自覚はあったよ。でも……それを奪われてしまったらと思うと、ね」


ディーナの当時の思いを聞き、年配の同業者たちなどは……彼女の気持ちを否定する気持ちは湧き上がらなかった。


寧ろ「てめぇ、なにうちの獲物に手を出そうとしてんだ!!!!!」と食って掛かりなどはしてないのであれば、まだ冷静に行動出来ていると思えてしまう。


「結果として、私は負けてしまった」


「ディーナさんに勝ったんですか…………相当、強いですね、その人」


クラートはあまり同業者たちと関わりはなく、あまり比べられる者が多くなかったということもあり、自惚れてはいなかった……が、弱いとは思っていなかった。


ただ、一目視ただけでそんな自分よりもディーナの方が強いと断言出来た。


「あぁ……本当に、強かった。多分、その人は手加減してくれていた……にもかかわらず、私は負けた。その時は、色々と絶望したよ。頼み込んだ内容が内容だから、私が復讐の対象を諦めなければならないと思ってね……でも、彼はそれを強制しなかった」


「随分と優しい、というか……余裕があるんですね、その人」


ディーナの話を聞き、オルフェンはディーナにタイマン勝負で勝った人物は強いことに間違いはないが、様々な部分で余裕を持っている人物なのだと感じ取った。


「そうだな。その後、私は復讐のモンスターと対峙することが出来た。しかしその時、どうやらAランクのモンスターが乱入しようとしていたようでな」


「え、Aランク、ですか」


彼女の口から出た単語に、クラートやオルフェンに同業者たちだけではなく、商隊のメンバーたちも驚きを隠せなかった。


「驚く気持ちも解る。どうやら、私が復讐の相手にそのAランクモンスターも恨みを持っていたようでな。名前は……牛飢鬼、だったか」


「牛飢鬼……って、ミノタウロスの上位種じゃないか!!!」


年配冒険者はその名に聞き覚えがあり、衝撃のあまり護衛という立場を無視して大きな声を上げてしまったが、今……この場にはそれにツッコむ者は一人もいなかった。


「みたいですね。ただ、その……当時は知人の方たちが乱入しにきた牛飢鬼の対応をしてくれていたお陰で、私はなんとか倒すことが出来ました」


良かったね、本当に良かった……という言葉が心のの中で零れる中、彼らの中に疑問が浮かび上がる。


牛飢鬼というAランクモンスターから恨みを買う様なモンスターは、同じくAランクのモンスターなのではないかと。


(えっと……つ、つまり、そういう事……なのかな?)


(どうやら、予想以上の方だったみたいだ)


Bランク……それだけでも、クラートとオルフェンにとっては十分凄い人、同じ戦場に立つ味方としては頼もしい限りの存在である。


だが、Bランクでも、Aランクモンスターをソロで討伐出来るBランク冒険者となると、色々と話が変わってくる。


「……その、す……凄いですね」


「ありがとう。ただ……運が良かっただけなんだ。わざわざ私の頼みを受け入れてくれた知人たちが、自分の欲を優先することなく気を利かせて邪魔者を対応してくれた。そして……運良く、持っていたスキルが一つ上のスキルへ進化してくれた。本当に、偶然が重なった結果、復讐を果たせたんだ」


謙遜に謙遜を重ねるディーナ。


しかし、話を聞いていた全員が……とにかく凄いという感想を持ち、素直にディーナの偉業を賞賛するのだった。

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