千二百十九話 奪い合い?
騎士たちが学園に報告するという事を考えず、二人の功績……何故戦場に向かおうとしたのかという経緯を考えている中、冒険者たちも二人について考え込んでいた。
(この二人が、あのアラッドの弟と妹か。あれだよな、まだ学生ってやつなんだよな。なのにここに居るってことは……あれか、校則破りってやつだよな! いやぁ~~~、やっぱりルールは破ってなんぼだよな~~~。将来に超期待出来るな!!!)
(学園を抜け出し、勝手に戦場に参加するという点はいただけないが、それでもあの戦闘力には目を見張るものがある。そもそも、まだ……十四、だったか。その歳人を躊躇いなく殺せるという点も凄まじい……行く末が楽しみではあるな)
(あれよね、二人はあのアラッド君の妹と弟なのよね。だったら、二人とも将来はこっちの道に来るのかしら? それなら、是非うちのクランに来てほしいわね。二人とも前衛として現時点で十分戦えるけど、タイプが違う。それでもコンビネーションは双子だからか並じゃない……アラッド君はクランに勧誘するのが難しそうだけど、二人はどうかしら)
(なんとまぁ、無茶をしよる子たちじゃ。まぁ、私も昔を振り返れば人のことを言えんがのぅ。む~~~~~……二人共、うちの孫や娘と結ばれてくれんかの~~)
約一名、戦闘とはあまり関係のないことを考えていたものの、冒険者たちは特に学園に報告しようなどという事は一ミリも考えていなかった。
「……あれだ、嬢ちゃん坊ちゃん。少なくとも、俺らはお前らの味方だぜ!!」
「へ?」
「なっ!!」
「ふむ……そうだな。最も愚かなのは、ルールを冒してでも参加し、その結果悪い意味で戦場を搔き乱し、迷惑を掛けることだ。そんな最悪な結末と比べれば、しっかりと成果を出している二人を褒めるべきところはあるだろ」
「そうよね~~。だって、アッシュ君もシルフィーちゃんも……多分あれよね。だいたいDランクの冒険者とかそれぐらいの兵士にCランククラスの冒険者や騎士も倒してたでしょ。あと、私の記憶が正しかったら、途中でBランククラスの強敵も上手く倒してたわ」
「ほっほっほ。そう考えると、大金星も大金星じゃのう。最後には少なくとも三十人以上は纏めて蹴散らした……少なくとも、二人で合計したとしても、そこら辺の冒険者や騎士たちが叩き出せる成果ではないのう」
完全なる善意……という訳ではない。
ただ、色々と事情を察した上で二人の味方側に立つ!! となれば、二人から好印象を持たれてもおかしくない。
「むっ」
「ぬぬぬ」
「ちょっと待ちなさい。私たちも二人の戦果を蔑ろにしようという気はないぞ」
冒険者たち側の意図を察したのか、騎士や魔術師たちは二人と敵対する意志はないと示すも……冒険者たちはニヤニヤと笑みを浮かべる。
「けどよ~~、騎士さんたちはあれだろ。貴族側なんだし、今回のことを報告するんじゃねぇの?」
「……それが悪い事だとは、言わないがな」
ややヤンチャそうな雰囲気を持つ男性冒険者の流れに、クール系の男性冒険者が乗っかる。
騎士として、学園に報告することは何も悪いことではなく、寧ろ正しい事ではある。
ただし……報告してしまえば、彼らとの関係はどうなるのだろうな…………というのがクール系イケメン冒険者の言葉に隠せられた意図。
騎士たちは直ぐにその意図を察し、歯ぎしりを零す。
彼らとしても、二人から恨みを買ってしまう様な真似は、したくない。
なんなら、現在後方で万が一の事態に備えて待機している騎士や魔術師たちの中にも、若い頃に無茶をした者はそこそこいる。
ただ、彼らの立場上、自分たちのトップ・オブ・トップ、ルメス・エウレニスが最前線に出てしまっている以上、そこに関して自分たちの判断だけで「私たちも二人の参戦を学園に告げるつもりはない!!!!」と、断言してしまうことは出来ない。
「むむむっ!!!」
「えっと、あの」
賢くはないシルフィーだが、超強い大人たちが自分たちが要因のせいで争おうと? してるかもしれないというのは
解る。
(…………まぁ、騎士も冒険者たちも僕たちの味方をしてくれようとしている、と捉えて良いのかな)
アッシュは薄っす冒険者たちが先に自分たちの味方をすると口にした理由は解っていた。
解っていながらも、とりあえず即座に学園に報告されるようなことはないと解り、ホッと一安心するのだった。
「それはそうと……坊と呼ばせてもらうぞ」
「あ、はい」
「坊よ。お主が……目覚めたスキル、あれはなんじゃ」
年齢的に老人の域に達している男性冒険者。
知識はそこら辺の冒険者に負けないが、それでもアッシュが効果を発動した状態を見ても、何のスキルか解らなかった。
「……ディスペール・アウェイクニング、というスキルでした。正直、初めて聞くスキルです」
「ほっほっほ、儂もじゃよ。見ていた限り、身体能力の大幅な向上、扱える属性魔力の変化を得る代わりに、発動してる時間は精神的苦痛を味わい続ける、といったところかのう」
「……おおよそ、そういった能力かと」
まだ細かく把握していないものの、老人冒険者が語る通りの内容だとアッシュも認識している。
周囲の警戒は劣らず、軽く二人と話している間に……三日間目の終戦の音が鳴らされ、二人は再び木竜たちと合流した。




