千二百十話 それだけで伝わる
一人……また一人。
木竜がガウスとジェルディといった真の強敵を相手に戦っている中、アッシュとシルフィーの元に敵が訪れる。
「「ちぇりゃッ!!!」」
基本的にユニコーン親子、木竜、ラディアたちが調整し、一人だけ二人の元へ向かうように調整しているが、絶対にそうならない場合もある。
(双子の、冒険者、か)
ほぼ似た様な顔。
違うのは、髪型だけ。
そんな双子の冒険者が二人に襲い掛かる。
彼らはまだDランクではあるが、双子らしくそのコンビネーションは一級品。
二人で挑むのであれば、その実力はCランクの冒険者に届く実力を有している。
「シルフィー」
「了、解ッ!!!!」
だが、こちらも双子。
幼い頃から……それでも主に戦闘訓練に対して真面目に取り組んでいたのはシルフィー。
しかし、途中からアッシュも仕方なく巻き込まれ……学生となった現在、それが日常茶飯事となっている。
そんな経緯もあり、二人のコンビネーションも負けてはおらず、言葉一つで向こうが何を伝えたいのか即座に把握可能。
シルフィーはアッシュの前に出て大剣に炎を纏い、前衛として戦う。
二人より確実にDランク冒険者の方が上ではあるが、実戦の経験数で言えばどっこいどっこい。
そのため、シルフィーが彼らに身体能力で大きく負けるということはない。
(前に、出過ぎだぜっ!!!)
だが、どっこいどっこいであれば……勝敗を決めるのは、数の力。
「なっ!? くっ!!!」
しかし、アッシュがただ引く訳がなく、自由に動き回るシルフィーに合わせる為に後方へ下がったのである。
まだリミットオーバーした反動は消えていないものの、使用時間を調整し……更に、アッシュの本日の調子が良さげということもあり、Cランク冒険者のタッグであればまだしも、Dランク冒険者のタッグであれば焦ることなく対応が出来る。
隙間から風刺を何度も繰り返す。
ただそれだけでDランク冒険者にとっては無視出来ない攻撃であり、放たれた箇所次第では、そのまま彼らのコンビネーションを分断することも可能。
「フンッ!!!!」
「ぐっ!!!!!」
加えて、シルフィーは自分本位に暴れはするものの、敵対する相手を全て一刀両断する必要はないと……まずは削ることも大事であると理解している。
片足も、片腕を……そこまで削ることが出来れば、後はもう攻め落とせる。
「こうなった、ら、ぁ」
「させるわけないでしょ」
アイテムポーチの中から、何かを取り出そうとした男。
だが、男が何かを取り出すよりも先にアッシュの風突がその首を貫いた。
(特別な丸薬か、それとも使い捨てのマジックアイテムか……貰っておこうか)
基本的に、戦場で殺した相手に道具は自分の物に出来る。
アッシュは素早く動き、男が手を突っ込もうとしたアイテムポーチを即座に回収。
そしていくつかの風槍を放ちながら後方に下がり、マジックポーションを一気に飲み干す。
「っ、ふッ!!! 勘の良い、ガキだなッ!!!」
「戦場で生き残るには、大事な事かと」
「間違い、ねぇなッ!!!!!」
双子冒険者の次に現れたのは、二振りの戦斧をも持ったおっさん冒険者。
そのおっさん冒険者の眼は……見る者が見れば解るほど、ガン決まっていた。
(うわぁ~~~、なんか飲んでる、よね)
特殊なスキルを発動しているということも考えられるが、厄介な丸薬を服用している可能性も考えられる。
「シルフィー」
「ふぅーーーー、解った」
ただの呼びかけ。
それだけで、アッシュが自分に何を頼んだか即座に理解するシルフィー。
「何も、させねぇよッ!!!!!」
二振りの戦斧という手数に加え、アッシュの予想通り……おっさんはハイになり、ついでに身体能力を向上させる丸薬を服用していた。
一応麻薬と呼ばれるほどの効果は持っておらず、おっさん冒険者も常日頃から服用してはいない。
ただ……今回戦う場所が場所ということもあって、彼は勝つ為に……生き残るために丸薬を服用した。
(雑な一撃は、多分意味がなさそうだ)
ウィンドランスは避けたものの、風刺に関して避ける素振りを見せない。
どの程度の攻撃ならおっさんにとって危機と感じるのかを把握後、アッシュは圧縮したウィンドランスをおっさんの足元へと放つ。
「っ!!!!!!」
アッシュの勘を褒めるだけではなく、おっさん自身も中々の勘を有しており、跳躍して回避。
「破ッッッッ!!!!!!!!!」
「ぐっ!!!!!!!」
だが、跳躍した先には同じく跳躍し……全力で最大火力を大剣に纏うシルフィーがいた。
おっさんはなんとかガードには間に合うものの、宙にいれば踏ん張りがきかない。
数秒後には両足が地面に着地するも、頑丈な大地と性別など関係無く、まさしく大剣士が放った大斬の重さに挟まれ、全身が揺れるのを感じる。
「なっ!!!??? ぎっ!!!!!!」
大剣と地面に挟まれた。
であれば、腹などに蹴りをいれて脱出することも出来た。
なんなら、おっさんはそれを思い付きはした。
だが、実行する前に二振りの戦斧が溶け、そのまま切り裂かれ……決して鈍らではない戦斧を燃え裂くほどの刃が顔に激突。
刃は即座に頭の中に到達し、戦いを終わらせた。
「はぁ、はぁ」
「シルフィー」
「うん、解って、るっっっっ!!!!!!?????」
アイテムバッグからマジックポーションを取ろうとした瞬間、シルフィーは戦争が始まってから一番の寒感を感じ、本能的にマジックポーションではなく切り札である大剣を取り出した。




