千二百六話 たられば
「ッ、破ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ガウスは渾身の……全力、全身全霊の一撃を放った。
彼が使用する槍には竜殺しの効果が付与されていることもあり、放たれた刺突は正真正銘……竜を貫く為の一閃。
「っ!!!」
(無駄だっ!!!!!)
木竜は分厚い分厚い木々で壁を造った。
全身を覆う様な壁を一瞬にして生み出した。
その早業には見事一言しかない。
それでも……ガウスの自信、信念通り……それは、全て無駄な行為であり、
確かに、木竜の体を貫いた。
間違いなく……幼馴染の、友の体ごと。
「「「「「「「「「「っ!!!!!?????」」」」」」」」」」
渾身の刺突は木々の籠を貫くだけではなく、後方のアルバース王国の戦闘者たちも同時に貫いた。
数名……十名ほど貫いただけで止まることはなく、最後尾まで貫き続けた。
幸いにも最後尾には、ルメスたちはいなかったが、そんな彼らに対し……決して小さくない衝撃を与えるほどの結果をもたらした。
(……すまない、ジャルディ)
籠の中で、命が消えるのを感じ取った。
そんな中、ガウスが抱くのは……己の弱さに対する怒り。
自身がもっと強ければ、ジャルディを犠牲にしてドラスという人間? を倒すという選択肢を取らずに済んだかもしれない。
(それか、お前と同じ道に進んでいれば……結果は別だったのかもしれないな)
もし同じ冒険者の道に進んでいればと考えるも、過ぎた話というもの。
この場で悲しみを零すことは許されず、別の戦場に向かわなければならない。
(さて、ユニコーンはあそこか………………っ!!!!????)
驚きの、驚愕の表情を隠せず、ガウスは木々の籠の方へ顔を向ける。
「どういう、ことだッ!!!!!!」
ガウスは、確かに貫いた。
貫いたからこそ……二つの命が、存在が消えてなければならない。
だが、籠の中を何度確認しても、消えた存在は一つ。
普通に考えて、あり得ない。木々の籠は貫通している。
後方の……後方の後方まで、確かに貫通している。
しかし、籠の中で消えた攻め威力は……一つだけ。
驚きと怒りを零す彼の謎を明かすように、木々の籠が崩れていった。
「……ガウス、だったか。本当に恐ろしかったぞ。久方ぶりに、儂の命に刃が届きかけた……死という現象に対し、間違いなく恐怖を抱いた」
「ッ、ッ……何故だ……何故、お前が……お前は、生きているのだッ!!!!!!!」
怒りが、体中の隅々まで駆け巡る。
だが……それでも、即座に襲い掛かることはなかった。
その判断が出来たのは、間違いなく彼が騎士として活動していたから。
「ふむ…………そうだな。敢えて語るのであれば……まず、ガウス。君が放った天閃穿が素晴らしかった」
槍技スキルの技の一つ、天閃穿。
一流の槍使いの中で更に鍛錬と実戦を重ね続けた者だけが会得出来る技。
木竜のこれまでの長い竜生の中でも、数えるほどしか見たことがない。
「従来の天閃穿よりも威力が、範囲が纏まっていた。私以上の堅さを持つ存在であっても、まず貫いていただろう」
私以上の堅さ、というのはAランクドラゴンである木竜よりも頑強な防御力を持つAランクドラゴンであっても貫けるということ。
リップサービスが過ぎる、訳ではない。
木竜が語った通り、それこそアラッドの実家の領地に居る鋼竜、オーアルドラゴンであっても貫くことが可能。
「だが、素晴らし過ぎたというべきか」
「ッ、ッ……ッ!!!!!!」
語る木竜の後ろに、一つの体が見える。
その光景に、ガウスは歯をカチカチと鳴らしながらも、愛槍を強く握りしめ、堪え続ける。
「ある体勢を取れば、儂には当たらない。そして……主らは、儂の力を嘗めていた。それが、今回の失策の要因と言えよう」
木竜が天閃穿が放たれた瞬間、木々でドーム展開をしたのは自身の身を護る為ではない。
過去の戦闘経験から、どれだけ防御に特化した木の盾を展開したとしても、天閃穿を対処出来ないことは身に染みて解っていた。
籠を用意したのは、体の一部を竜化し、本来の身体能力の一部開放する場面を隠すため
ジャルディは細身であるが、それなりの腕力を有している。
ただ、それなりであることは自覚している為、万が一の状況になっても対抗できるように、そっち方面を強化するマジックアイテムも発動していた。
それでも……一部を竜化させた木竜の動きを止めることは出来ず、木竜は前傾姿勢に。
「最も、天閃穿の範囲が広ければ……或いはほかの技であれば、結果は変っていたかもしれんのぅ」
ガウスの攻撃が木竜に通用するというのは、既に証明済み。
通常攻撃が通じているため、それ以上の攻撃力や切れ味を有する技を使用すれば、通るのが道理。
それ故、一転集中ではなく直線状の相手だけではあれど、広範囲で吹き飛ばす技を放っていれば……結果は変っていたかもしれない。
天閃穿を放っていなければ…………自身の技で、親友だけを貫くことはなかった。
全て……たらればの話。
「~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!!! …………であれば、私は!!!! ……その結果を、業を背負い!!!! 今度こそ、あなたを貫くまでだッ!!!!!!!!!!!!」
「騎士、ガウス。その意気や良し」
友を、親友を失っても尚、騎士に止まる……停滞という選択肢はあり得なかった。




