千二百五話 覚悟
SIDE 木竜
「ッッッッッッ!!!!!!!!!!」
木竜は、目の前の二人の人間だけに集中していた。
既に、ユニコーン親子とラディアたち三人に、アッシュとシルフィーのことは任せると念を送っていた。
先程まで迫りくる敵を相手にしつつ、仲間……同士たちのサポートまで行っていた木竜。
だが……ジャルディとガウスの二人を同時に相手をするとなると、他のことを気にしている余裕はない。
Aランクの冒険者と、それに匹敵する実力を有する高位騎士。
Aランクのドラゴンは……人間たちからすれば、文字通り災害に等しい存在。
ただ、Aランクドラゴンたちにとっても、彼らは本来であれば自分たちが気に留める必要もない人間という存在の中でも……自分たちの喉元に、心臓に……魔石に、刃を届かせるほどの変異体。
加えて、その変異体はドラゴンたちにとって、呪いとも感じる存在……竜殺し効果が付与された武器を持つ。
彼らは、互いに自身の命を脅かす災害と認識している。
(ッ、よく、届かせられる、もんだ!!!!!)
(ぬッ!!! なんの、これしきッ!!!!!!!)
手数で勝っており、数も二人……どちらかに意識を捉われれば、片方の攻撃が迫る。
木竜からすれば、意識の分配を間違えてはならない。
その絶対を……木竜は当たり前の様に実行する。
躱し、捌き、魔法で牽制し、また躱す……その中で、振るう剣でジャルディ、ガウスの二人に傷を負わせる。
木竜、ジャルディ、ガウス。
三人とも目の前の敵を早急に殺さなければならないことを理解している。
だからこそ、強化スキルやマジックアイテムの発動を惜しんではいなかった。
木竜はバレない程度ではあるが、根を繋ぎ……離れた場所にある木々から生命力を少々貰い、魔力の回復と傷の治癒を行っていた。
それでも、その回復によって二人より優位に立てているとは言えない。
(喉元に、心の臓に刃を突き立てられるのは、いつぶりじゃろうかっ!!!!!!!!!)
竜殺しの効果……これが、本当に木竜にとって洒落にならない。
双剣の刃が、槍の刃が身を掠る度に、身を焦がす様な痛みが走り抜ける。
何もかもが人間と比べて規格外なドラゴン。
そんな人間が造り出した、竜殺兵器。
そして……ただ単純に二人の技量、身体能力が優れている。
戦闘者として、全てが揃っている……これまで木竜が対峙してきた人間の中でも、トップクラスに入る。
元の姿に戻れば解決出来る?
確かにその可能性は高まる。
だが、二人ほどの実力者であれば、元の姿に戻るという行動の隙を突ける。
そのため、人間態のまま倒すしかない。
(ク、ッソ!!! あと一歩が、届くかねぇ!!!!)
一進一退……とも思える激闘を繰り広げている三人。
しかし、ジャルディは分の悪さを感じていた。
侮っていたつもりはない。
準備は万端であり、実際にダメージは通っている。
装備しているマジックアイテムの中には、使い捨てではあるが持続的に傷を癒す物もある。
それでも、ジャルディは目の前の人間? の首を断ち、心臓を貫けるイメージが湧かない。
(このままだらだら続ける、流れになったら、不味い!!)
上の人間たちが、何かしらの策を用意しているのは解っている。
だが、猪突猛進タイプではないジャルディはアルバース王国がそれに対抗する策を用意してないとは思えなかった。
(……………………チッ、しゃあねぇ、か)
目の前の人間は、討伐しなければならない……のではない。
殺さなければ、ならない。
だからこそ……ジャルディは、最悪のパターンを防ぐために動くことにした。
「ゥオオオオアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」
雄叫びを上げ、振るわれる剣を、放たれる牽制とは思えない攻撃魔法を文字通り全力で掻い潜る。
回避は最低限。
目的は命を懸けて接近し、首元に双剣を叩き込む……ことではない。
「シっ!!!!」
「ぬっ!!??」
ダメージ覚悟で接近するジャルディ。
当然、木竜は割けるギリギリの意識をジャルディに向ける。
警戒すべきは雷を纏う双剣。
その双剣を……ジャルディは投げた。
投擲のスキルを利用し、おおよそ投擲に相応しい体勢からではないとはいえ、投げることに成功。
竜殺しの効果が付与されていることもあり、全力ではない投擲であっても、当たってはならない。
その行動が……戦況を動かす一手へと繋がった。
「ガウスッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ジャルディが取った行動は、木竜の行動を封じる為の、羽交い絞め。
その場から動けないように体を抑える。
この行動は……あまり賢い選択とは言えない。
アラッドの前世であればともかく、この世界では身動きを封じられようとも、魔力やスキルによって動けない状態からでも攻撃を仕掛けることが出来る。
ただ、そんなことはジャルディも解っている。
(ちっとは、痺れるだろ!!!!!!!)
残っている魔力を使い尽くす勢いで、厚く……激しく、雷を纏う。
その厚さが攻撃から身を守り、激しさが木竜の動きを鈍らせる。
「ッ、破ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
友人は、親友は……幼馴染は、意を決した。
悩む時間すら無駄だと本能が理解し、全力の一突きを放った。




