千二百三話 激突
「下れ」
「お前らは他に当たってくれ~~」
主に木竜たちが戦う戦場に、一人の騎士と冒険者が現れた。
(ほぅ……)
その騎士と冒険者を見て、木竜は感嘆の息を零す。
本日、ロックオンしたことにより派遣された冒険者や騎士たちも一定以上の戦闘力を有しており、実力者と呼ぶに相応しかった。
だが……現れた二人は、その実力者を優に上回る戦力を秘めていた。
「お主ら二人が、儂の相手をしてくれるのか?」
「あぁ。私たちが相手をしなければ、更に大きな被害を生む……私の名はガウスだ」
「おぃおぃ、別に戦争中なんだし…………まぁ良いか。俺はジャルディって冒険者だ」
ガウスは騎士だからこそ、既に強者として認識している木竜に名を名乗った。
そんなガウスと知人……ではなく、幼馴染とも言える冒険者、ジャルディは呆れた表情を浮かべながらも、自身の名を名乗った。
「ガウスにジャルディ、か……儂の名はドラスじゃ」
木竜としても、自身に挑む真の強者の名は知っておきたかったため、名乗ってくれたのは有難かった。
「ドラス………………戦争という場で一方的に求めるのは、身勝手だと解ってる。ただ……私たちが勝利した際には、本当の名を教えてほしい」
微かに聞こえた者たちは、ガウスが何を言っているのか解らなかった。
ただ、求められた木竜は、彼が何を言っているのか……解る。
(ほぅ、気付いていたか……という事は、既にバレているか……過去に他のものと戦り合ったことがあるか)
木竜は両方あり得ると判断。
特に、後者は間違いないと確信を持てる。
(じゃからこそ、二人ともあぁいうのを持ってるんじゃろうな)
ガウスは槍を、ジャルディは双剣を有している。
彼らが持つ武器には……竜殺しの効果が付与されていた。
「っ!!!」
「もう始めちゃっても、良いでしょ!!!!!」
冒険者であり、ここが戦場だということで……二人の会話など知ったことかと言わんばかりに動きだし、雷を纏った双剣を叩きつけようとしたジャルガ。
戦争で戦う者として、本気で倒したい、殺したいと思っている者のムーブとしては完璧も完璧。
それが解らない木竜ではなく、ただ表情を引き締めるだけで、淡々と見極めて回避。
「そうだな」
幼馴染の行動を咎めることはなく、槍に轟炎を纏わせ連続で突き繰り出すガウス。
片方の剣で槍を弾く瞬間、木竜は周囲にいたアルバース王国側の冒険者や兵士、騎士たちを地面から生やした木で押し飛ばした。
「なっ!!?? ッッッっ!!!! …………なるほど、な」
何故急に自分たちを押し飛ばしたのか。
目の前で起こった衝撃、突風によって本能的に気付かされる。
ここから先の戦闘は、自分たちが割って入れるものではないと。
「他の連中を仕留めるぞッ!!!!!!!!!」
「っ!! 切り替えるのだっ!!!!!!」
アルバース王国の戦闘者たちにとって、自分たちでは割って入れない……初老の男を助けられないというのは、悔しさを感じる場面ではあるが、それでもこれまでの流れを振り返ると、自分たちが優勢であるのは間違いない。
その士気の高さから、即座に自分たちが何をすべきかを把握。
対してゴリディア帝国は頭が切れる騎士がワンテンポ遅れながらも指示を飛ばすが、結果として一手遅れる形となった。
(やはり、この熟達した強者を倒すしか、ない!!!!!)
圧倒的な強者を打ち取れば、それだけえ士気の高さが逆転する。
その可能性は十分にあり、ガウスは騎士として……己の指名を果たそうと、闘志を燃え滾らせる。
(ちゃちゃっと、殺して、ユニコーンの方にも向かわねぇと、なッ!!!!!!!)
雷を操る双剣使い。
戦闘スタイルはスティームと似ているものの、その練度や身体の力は数段違う。
加えて、炎槍使いであるガウスとの連携も優れている。
そんなジャルディはまだ自分が働き、倒さなければならない敵がいるため、最初からアクセルを踏み込んでいた。
「ふふ……はっはっは!!! 高鳴らせて、くれるのう」
双剣使いと槍使いを同時に相手にする。
手数では負けており、武器の中でも超接近戦タイプの双剣と嫌な距離から攻めることが出来る槍の猛撃。
ジャルディと同じAランクの接近戦タイプの冒険者であっても、笑ってる余裕などない。
(この爺さん、イカれてんの、か!!! もしくは、穏やかそうに見えて、そういうタイプ、なのか!!!!)
戦闘狂は、バトルジャンキーは幾つになっても……皮を被れるようになったとしても、根っ子の部分が変わることはない。
まだ三十代には突入していないが、冒険者としてそれなりに多くの人間と関わってきたジャルディは、多少なりとも相手の深淵を感じ取れる。
実際のところ、木竜にとって炎槍使いのガウスと雷双剣使いのジャルディのタッグは……相当キツイ。
人間態で行動しているからという理由もあるが、ただ……ただただ単純に、Aランク冒険者のジャルディと、本来なら大部隊の指揮官を任せられるほど高位騎士であるガウスの二人が強い。
戦闘が始まって、まだ数十秒。
これまで挑んできた戦闘者たちでは、埃一つ被らせることが出来なかった木竜の体に複数の掠り傷が刻まれていた。
並みではない竜殺しの効果が付与されているため、掠り傷でも木竜にとっては侮れない痛みが襲う。
それでも尚……竜は笑った。




