千二百一話 雷撃健在
水系統の遠距離攻撃で足場を完全に崩してから攻撃を叩き込む。
殆どの味方を巻き込むことなく実行したゴリディア帝国の戦闘者たち……その手際は、多くの者たちが見事と称えるだろう。
そして、アルバース王国の者たちは、してやられたと舌打ちを鳴らす。
これまで戦況を優位に進めてきた要因の一つは、甘い甘い蜜を零しながらも、ずば抜けた実力を有しながら迫りくる戦闘者たちの対応を行っていたユニコーン親子。
そのユニコーン親子が殺られたとなれば、それだけでアルバース王国側の士気が下がってもおかしくない。
仕留める為に放たれた遠距離攻撃の中には、Bランクモンスターを打ち取れるだけの攻撃力を有している攻撃がいくつもあった。
ゴリディア帝国が仕掛けた策略により……本当にユニコーン親子が仕留められる可能性は十分にある。
「殺っただろ!!!!! …………はっ!!!!!?????」
「木、木……だと?」
だが、土煙が晴れた中から見えたのはユニコーン親子の死体ではなかった。
放たれた攻撃の数、威力を考えれば討伐したユニコーンの死体が消し飛んでいるという可能性は考えられる。
しかし……ユニコーン親子が居たであろう場所には、毛や内臓……血痕すらなかった。
代わりに何故か、砕かれた木々が散らばっていた。
解らない、解らないがプロと呼べるほどの腕前を持つ戦闘者たちは、即座に上を見た。
誰かが生み出したであろう気が身代わりとなり、二体のユニコーンは上に飛んで回避した……それが、一番あり得そうな流れではあった。
(くそっ!!! 奴らはいったいどこに)
喧騒が聞こえるだけで、全く姿が見当たらない。
「おい、地面を見ろ!!!」
誰かが叫んだ言葉に多くの者たちが反論する。
地面に視線を向けると、攻撃がくる……わけではなかった。
魔術感知、気配感知が得意な者たちは地面から現れる攻撃が準備されているわけではないと解り、ほっと一安心……とはならなかった。
「なっ!!!!!!」
何故なら、彼らが濡らした筈の地面が元に戻っていた。
正確に言うと……乾いていた。
「「「「「「「「「「っっっっっっ!!!!!!??????」」」」」」」」」
何故、どうして、誰が、どういう理屈で……考えが纏まる前に、雷撃が彼らに降り注ぐ。
二体のユニコーンと戦うからこそ、雷耐性を持つマジックアイテムを装備していた。
だから大丈夫だと……一撃で死ぬことはないと思っていた。
そんな彼らの考えは、間違っていなかった。
事実として、何人もの戦闘者たちがダメージを受けながらもなんとか耐え、必死でユニコーン討伐という目的に取り組んでいた。
だが……そんな彼らの行動を理解していたからか、降り注ぐ雷撃はどれもマジックアイテムの耐性をぶち抜くものだった。
(後ろから、戻ってきやがった……誰が、水を……ようやく、殺せそう、だったの、に………………)
倒せると思った。
考えて来た策略がハマった思った。
ある種の快感が彼らを満たした筈だった。
しかし、現実は非常。
誰かが二体のユニコーンを助け、策を砕かれ……十名以上の者が黒炭にされ、命を落とした。
「あ、あ…………か、かいぶ、つ」
震える冒険者が、ぽつりと呟いた。
その言葉で、多くの者たちはハッとさせられた。
今、自分たちが戦っている存在は……確かに聖獣と呼ばれてはいる。
それでも、ユニコーンというのは、推定Bランクのモンスター……そう、モンスターなのである。
「っっっ、諦めるな!!!!!! 奴らは多くの魔力を消費している筈だ!!! 削れているこの機を逃すな!!!!!」
「っ、うぉおおおああああああああ!!!!!!!」
「まだだああああああああ!!!!!!」
「無駄にして、たまるかッ!!!!!!!!!」
Bランクモンスターの中ではトップと言っても過言ではない魔力量を持つユニコーン。
そんなモンスターであっても、スキルを使えば魔力は削れる。
諦めずに闘志を燃やし、叫んだ騎士の言う通り、ユニコーン親子は確かに削れていた。
「…………」
「っ、っっ!!!」
削れている筈、にもかかわらず雷撃を落し、斬撃波を放ち、強化された肉体で踏みつける。
(あ、あり得ない……まだ、あれ程の動きが、出来るなんて)
一部の者たちが聖獣と呼ぶ通り、ユニコーンは高い知性を持つ。
だからこそ、人間たちが扱う物たちの中で……どういった道具を使えば、魔力が回復するのか知っていた。
マジックポーション……その液体を飲めば、魔力が回復する。
ユニコーン親子は降り注ぐ遠距離攻撃を後方に跳んで避けた後、一瞬にして仲間である木竜の元まで向かった。
木竜は木竜で、彼らが何用で自分の元に来るのか理解しており、マジックポーションを……液体を瓶から空中に放出していた。
体力こそ少なからず削れてはいるが、魔力さえ途切れなければまだまだ猛者たちと戦える、対処出来る……殺すことが出来る。
当たり前だが……今更過ぎる話ではあるが、二体のユニコーンはゴリディア帝国の人間たちを殺すことに、一切の躊躇はない。
「あ、悪魔、だろ」
誰かが呟いた。
一部の者が聞けば反発しそうな内容ではあるが、反論する余裕がなかったのか否か……誰一人として、その言葉を否定する者はいなかった。




