お断り
「んーー!今日も良い天気だわ。」
休みの朝よく晴れた空を見ながら伸びをする。とくに予定があるわけでもなく、いつも通り家で本でも読もうかと思っていた。しかしこの天気の良さは勿体無い気がする。たまには外で本を読んで、昼から実家にでも顔を出しに帰ろうかな。うちの掃除をし支度を終わらせ本を選ぶ。公園かな?どこで読もうかな?ってわくわくしながら家を出る。
外で食べようと軽食を購入し、街を歩いていく。私は本の虫過ぎて休日も引きこもり本を読んでいるため街中は久しぶりだ。とても賑やかで久しぶりのお出かけが楽しくなる。
公園に着くと芝生にシートを広げ、早速持ってきた本を読み出す。軽食を食べるのも忘れ没頭していたら周りがざわざわと騒がしくなる。何だろう?本から目を離し騒がしい方に目を向ける。
「あの人が聖女様?」
「なんて可愛らしい方だ。」
「聖女様ー!」
聖女様?教会預かりになっている聖女様が居ると聞いたが見るのは初めてだな。ん?あれが聖女様?ルイ様に見える…あ、教会から来ていると言っていた。え?ん?ルイ様は聖女様なの?気づかす失礼していたかも!ふとルイ様の側に絶世の男前がいる。リュート様だ。
ルイ様とリュート様は魔術師団でも仲良さそうだった。なるほど…聖女様なら魔術師団長でもあるリュート様なら親しくもなるはずだ。見た目だけでなく肩書もお似合いだ。遠くから見るお2人は本当にお似合いで、周りの人達も同じ感想を抱いているようだ。
私は2人を見たくなく本を片付けその場を去る。仲良くしてもらっていたなどという考え自体、思い上がりも甚だしい。恥ずかしい。実家に帰る気もなくし家へと戻る。やはり外に出るものではない。本の世界が全て。
ーーーーー
はぁぁぁ…昨日帰ってから本を読もうと思ったが、全く読めなかった。2人が気になり集中出来ず、読もう読もうとしている自分に気が付きやめた。自然と読むもので読まないと何て思った事が無かった。
「おはよう。セシリア嬢。」
「…おはようございます。すいません。仕事が忙しくて。失礼します。」
「…っ!セシリア嬢」
リュート様が挨拶してくれたが仕事のせいにして、すいませんと逃げる。急ぎ中に入り雑用をこなす。何か話ができない。したくない。はぁ惨めだ。
私は昔から本当に自身が無い。家族は可愛い可愛いと可愛がってくれた。しかしパーティやお茶会で出会う令嬢達には地味だと揶揄われ、男の子達には平凡だと見向きもされなかった。本の世界だけが素敵な魔法でいつも助けてくれた。お姫様だって勇者にだってなれた。
はぁ頭が痛い。まぁしばらく話さないと飽きるだろう。もう話せないのは寂しい…とは思う。もう居ないだろとカウンターに出ると、すぐに声をかけられる。リュート様だ…。
「セシリア嬢っ!落ち着いた?!」
「すいません。今から配達と回収に行かないと。失礼します。」
まさかまだ居るなんて思わなかった。すぐ図書館を出た私は、リュート様がどんな顔をしていたなんて知らなかった。各所の配達と回収が終わり図書館へと戻る。
「セシリアおかえり。魔術師団長と何かあったの?あれから何回も来てたよ?」
「何もないです。何かあるはずが無いですよ。」
「セシリアが出て行った後、世界の終わりくらい落ち込んでいたよ。魔術師団長泣きそうな顔して帰って行ったんだから。」
…そんな訳ない。勘違いしたらダメなんだから。お昼休憩行ってきますと図書館から出る。
「…セシリア嬢!」
急に腕を引かれ見るとリュート様だ。酷く焦った顔をしている。どうしたのだろう?ジッと見つめると、目を逸らされた。顔も見たくない相手を何故引き止めるのだろう?
「何でしょう?」
「今から休憩?一緒にどうかな?」
「いえ、すいません。急ぎで戻らないといけないので。他の方をお誘いください。では。」
私は手を振り払い走って逃げる。もうこれだけ避ければ話しかけてこないだろう…まさかこの考えが甘いなんて思わなかった。
「セシリア嬢?私何かした?」
「してないです。」
諦めない…何故だろう。勤務時間終了後すぐ裏口から図書館を出ると、扉の前でリュート様が腕を組み立っていた。通る人皆がチラチラ見るくらい見目麗しい方がまさかこんな所にいるなんて。存在が浮いている。
「では、何故避けるの?」
「忙しいだけです。」
「今からは?もう勤務時間終了したよね?一緒にご飯でも食べに行かない?避けてないなら行けるよね?」
何故私がこんなに責められているのか。納得がいかない。リュート様は何がしたいのだろう。疑う目でジッと見る。
「…。」
ジッと見ないでよってまた目を逸らされた。手で顔を覆い隠している。なんだろう。
「ご飯行く?」
「行かないです。」
何故そんなにご飯に行きたいのか…魔術師団長って暇なのか?よくわからない。ふと見ると絶望の顔をしている。セシリア嬢は…私が嫌い?声が震えている気がする。そんな訳ないか。
「嫌いじゃないですけど。リュート様には大事な方が居るじゃないですか。その方とどうぞ。」
「…は?」
リュート様から重低音の声が聞こえた気がする。いつも爽やかで優しい声以外聞いた事が無い。周りがピキピキ凍っている。なんだか寒い。
「それに婚約者でもないのに、2人でお出かけなんてしないです!からかわないでください!」
「婚約者ならいいの?」
そうですね!婚約者の方とどうぞ!と走って逃げる。リュート様が悪い顔で笑っていたなど気づくはずが無かった。




