天上人達
「セシリア様一緒に食べましょう!」
あの日以降ルイ様はたまにお昼を誘いにきてくれるようになった。チラッと図書館を覗き声をかけてくれる姿はとても可愛らしい。黒猫に懐かれた気分になる。
「今の仕事相手が本当ネチネチ嫌味な人で!セシリア様とご一緒できるのだけが日々の楽しみなのです!」
「そうなんだ。私で良ければ、いつでも話を聞くからね。」
王宮内での仕事相手が合わないみたいで、ルイ様はかなり愚痴っている。魔術師団にそんな人いるんだねと軽く聞くともう止まらない。私はあまり魔術師団とは関わりがないのでリュート様以外詳しくは知らない。
「あのネチネチ!今日も笑いもせず無表情で、あれダメこれダメ役立たずって全否定!弱みでも握って脅してやりたい…」
お昼からも頑張ろうと励まして見送る。あんなに可愛らしいルイ様に嫌味を言う人がいるなんて…リュート様に今度聞いてみようかな。
「セシリア嬢おはよう。今日も良い天気だね。」
「おはようございます!あれ?何か体調悪いのですか?いつもと違います。」
次の日朝からリュート様が図書館に来ていて、朝から挨拶してくれたがどこかいつもて違う。
「あぁ…。大したことではないのですが…今魔術師団に見習いが来ていて大変で。全く出来なくて、問題児をどう扱ったら良いのか…」
珍しいリュート様が魔法以外の事で悩んでいる。魔術師団ってそんなに大変なんだ…嫌味な人や問題児が居たり、なかなか思い描いていた颯爽とした魔術師団とは少し違うようだわ。
「元気だしてください。あ!少し待っていて下さい。少しだけ。」
「少しと言わずセシリア嬢のためならいくらでも待つよ。」
ニッコリと微笑まれ赤くなる。違う!危ない。急ぎ荷物の所へ行き、カバンから小さな包を取り出す。リュート様の所へ戻り、甘い物好きですか?と問う。
「これ良かったら少しですが、食べてください。今日のおやつ用にと作ったので少しいびつですが、少しでも疲れが取れれば嬉しいです。」
「え?いいの?私にくれるの?ありがとう。とても嬉しいよ!」
小さな包み紙に入ったクッキーを渡すと、リュート様は思った以上に喜んでくれ受け取ってくれた。
「もしお口に合わなければ廃棄してください。」
「必ず全ていただくよ!」
本当にありがとうって微笑んでくれる。断られるかと思ったけど喜んでもらえて良かった。また来るねって嬉しそうに去って行った。そんなに甘い物が好きなんだな。
昼からは王宮内から依頼があった本を届けに各所をまわるのを任された。なかなか借りに来れない人にもありがたいサービスだと人気で、よく配達に行っている。私はカゴに何冊も本を入れメモを片手に行ってきます!と図書館を出発する。
大体いつも依頼をくれる人は同じで、常連さんが多いので慣れたものだ。皆さんお茶を出してくれたりお菓子をくれたり、なかなか約得な仕事だ。
つい各所で話し込んでしまい、気づくとこんな時間になっている。まだ配達が残っているので慌てて向かう。
次の配達先に向かっている途中で魔術師団の方々を見かけ遠くから見る。あ、リュート様だと思って見ていたら近くにルイ様がいる。魔術師団内で関わりがあるんだと見ていたら、リュート様がルイ様の背中に手を当て、2人で中へと一緒に歩いていく姿を見てしまった。
「あの2人仲良いんだ…」
嫌味な人から庇う内に仲良くなったのかも知れない…いや、逆にリュート様の悩みを聞き優しく癒されている時かも。私が親しくしていると思っている2人が、仲良いなんて良いことだ。気にする事じゃない…親しい友人を取られた感覚になって寂しいだくだと思う。急ぎ配達の目的地に向かい歩いていく。
美男美女でよく似合っていたな…あの2人の寄り添いはまるで絵画のようだった。数年前から蓋をしていた容姿へのコンプレックスがちらりと姿を出す。昔から地味だ平凡だと言われていたが、図書館で勤務する様になり抑えられていた。しかし2人を見ていると傷が刺激される。
「セシリアどうしたの?元気ないけど悩み事?」
「んーお腹すいちゃった。」
同僚のアイに聞かれ笑いながら答える。まだあの2人が気になっているなんて言えない。
「セシリア様いる?あ、居た。お昼過ぎに来たら出かけるって言われて、帰る前に会いに来たんだ。」
「そうなんだ…何か用事だった?」
「おやつ一緒に食べないかと思って来ただけなんだ。また明日来るからお昼一緒に食べてくれる?」
「あー…明日は休みなんだ。ゴメンね。また次来た時にでも誘ってよ。」
わかった!とルイ様は笑顔で手を振り帰って行った。何だか一緒に食べる気にはなれず、明日ちょうど休みで良かった。ルイ様には申し訳無いがしばらく一緒に食べるのをやめよう。




