第三章 14 リズカード・オーウェン
「──それが俺とエレカの至った結論だ」
エレカの去ってしまった事務所の中、リズカードはこの街で現在、進行していることについて全てを話した。社長椅子に座ったフーロは真っ赤な目でじっとリズカードを睨みつける。
「……そんなヤバいことを、全部あの子に背負わせてたわけ?」
「俺が必ず止めると約束した。しかし……この時代がエレカに与えていた重圧が、あれほどのものだとは思わなかった」
「リズ様は人の機微に鈍感なのをちゃんと自覚した方が良い」
「……言葉もない」
「もう……絶対にエレカちゃんは帰ってくるって信じて、今はその、アホみたいな計画を止めることだけ考えよ。その前にみんな死んじゃったら何の意味もないんだから」
リズカードの沈んだ顔色を見てか、フーロは切り替えるようにそう言い、壁にかかった大きなモニターに目を向ける。そこにはヤグのイヤリングから抜いてきた地図が表示されていた。
「コントラ・ディアノメアス。この何語かわからんやつをぶっ壊せば一件落着って感じ?」
「そうなる。恐らく、ネナがルイモンド島から移動させて、ヴィスを吸引するように改造したんだ。機能が逆転しているから、逆ディアノメアス、なんだろう」
「逆転って、そんな簡単にできんの? 加湿器を除湿機にするようなもんじゃん」
「水や他の物質と違ってヴィスならできる。電流の向きを変えるのに、電池の向きを変えるのと同じくらい簡単だ。魔法作りに精通したネナなら造作もない」
「ふーん、なら起動されないうちに、とっとと突入せにゃいかんわけだけど……」
フーロの言葉が途方に暮れたように窄んでいく。
ネナのいる場所ははっきりしたが、その座標を示すピンはトロポス・ストラト境壁近くの地中、奥深くに突き刺さっていた。
「これ、どっから入んの……」
「わからない。どこかから地下道に入るんだろうがそれを調査する時間はないし、探知するにも地下は電波も魔法波も届きにくくて把握が難しいし、ヴィス・スティックは残り二本……魔法が使えない今、それで発見できなかったら詰みだ」
今回のトロポス大侵入によって事態は逼迫している。ヤグに怪我はなかったが、ミクシアンに襲われたショックから精神的なダメージを受け、まともに受け答えができない状態になっていた。いつ錯乱した彼女の口から決行が指示されてもおかしくない。
「ふーん……でも、賢迅様にはちゃんと考えがあるんでしょ」
フーロが挑戦的に言うのに、リズカードは首を横に振った。
「いや、ここまで来たら考えなどない……入り口が見つからないのなら作るまでだ」




