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同僚教師の思い出

 正直、来るまでは気が重くて仕方が無かった。

 一昨年は東京、去年はスキー旅行。なのに、何故今年は初夏の信州なのか。


 私ですらえっ……て言葉を失ったくらい。

 せっかく2年の担任になったのに、こんな渋い旅行なんて……。


 去年いろいろトラブルがあったし、スキーで怪我もさせられないともっともらしい事を言うが、結局教頭は言いづらい事をわれわれ担任教師に押し付けてくる。

 当然、先輩たちの行先を知っている生徒達の落胆ぶりはひどかった。



 岡山から名古屋まで新幹線で移動し、そこからバスで向かった先が大王わさび農場。

 みんな、広大なわさび園に困惑していた。


 わさびソフトを食べているのを生徒に見つかって、「先生が買い食いしている」と指を差された。


「今日はいいの、あなた達もお小遣い持ってるんだから食べたらいいじゃない」


 フランクに答えたつもりだったが、生徒たちからはものすごい勢いで質問攻め。


「おいしいんですか?」

「罰ゲームじゃないですか!」


 いや、そこまで酷くないのよ。

 普通に、甘くておいしい。ちょっとわさびの匂いがして、トッピングされたわさびがツンとくる。

 ただ、お子様向きではないかな。


「辛い歯磨き粉が大丈夫なら、美味しいと思う」


 たとえが悪かったのか、誰も買わなかった。

 売り場のお姉さん、ごめん。



 そして、黒部ダムから立山アルペンルート。

 これも、地味。

 歩きと知った男子生徒達から「なんで遠足が始まったんですか」とブーブー文句を言われた。


 確かに景色は綺麗なんだけど、普段から田舎暮らしをしている子たちにとって、何の刺激も無い。

 気持ちは分かるんだけど、「芥子山(けしごやま)を歩いているのと大して変わらない」とまで言われると、心苦しい。

 確かに、地元の芥子山をふもとから見るのと、スケール感が近いかも。



 宿は和倉温泉。

 本当はいい温泉地らしいけれど、ホテルに閉じ込められて温泉街を回れないのでは魅力半減。

 お酒も無いのに温泉宿でご飯食べてお風呂入るだけなんて、大人でもつまらないのに。


 見回りをしてたら、消灯時刻以降にうろうろしている生徒が多数。

 面倒なので、女子フロアに侵入しようとしている男子だけ集中的に捕まえた。

 噂だけど、ベランダをよじ登って女子の階に侵入しようとした学生や、地下のゲームセンターでゲームに興じていた子がいたとか。


 西脇先生はちゃんとチェックしてくれたのだろうか。

 道中のバスでは「夜に備えます」と、ずっと寝ていたけれど。



 2日目は各バスツアーに参加するか、金沢に連れていかれて終日自由行動。


 私は女子生徒中心の輪島塗体験コースに同行。

 西脇先生は金沢へ。大丈夫?


 輪島は意外に楽しかった。

 そして、金沢組も無事に全員帰ってきた。


 無事引率できるのかという不安は杞憂に終わったけれど、生徒たちは時間を持て余していたらしい。

 兼六園以外、何処に行ったらいいのか、わからなかったと。

 確かに金沢は中途半端に町が広いから、行き場に迷ったことだろう。

 こんなことなら、バスで連れて回ったほうが良かったのでは?


 西脇先生に聞くと、「パチンコで負けました」と言っていた。

 この人は一体何を見てたの……?



 翌朝、西脇先生が朝食後、学年主任から怒られていた。

 聞くと、昨夜子供たちと一緒にゲームコーナーで遊んでいたのだとか。

 テレビの成人向け番組は全部止めていたのに、なんと地下に脱衣麻雀があったらしく、子供たちと挑戦していたらしい。


 どうしてそういうことになったのか、経緯理由を教えて欲しい……。



 帰り、京都で舞妓さんと、大きなカメラで執拗に撮影するギバ先生を見た。

 え、ギバ先生、ついてきてたんだ。

 存在感が無かったから、まったく気付かなかった。

 舞妓さんを見たがったの、ギバ先生?



 帰りのバスも、西脇先生は最後まで寝ていた。

 もう、見回りなんて必要ないのに……。



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