バスガイドの思い出
誰も聞いちゃいない。
バスガイドにとって一番悲しいのが、話しかけても反応がまるで無い時。
それにしても、本当に元気の有り余った高校生達。
彼らは修学旅行で私たちのバスを利用している。
話好きな学生によると、暴力を振るったりする一般的な不良ではないが、この学校は一般的な進学校には見られない「おおらかな校風」に育まれた、「自由な精神」が特徴とのこと。
物は言いようかもしれない。
そうそう、先輩が言っていた。
バスガイドを続けてると、先生を見るだけで学校の程度が分かるようになると。
エッジの効いた角刈り、紫の半袖Tシャツから伸びる、日に焼けた太い腕。
ぱっと見にはイケメンだけど、背が低いから女性が第一候補には選びそうにない感じ。
そんな、明らかに体育教師という感じの先生が、ガラの悪そうな子供たちと親しそうに話をしている。
一言で言うと「アニキ」ね。
きっと……一番の不良はこの人だわ。
何も問題を起こさなければいいけど。
私がしゃべっている間、気の利いた先生だと「話を聞きなさい」なんて注意してくれる。
でも、この先生は寝てるの。
びっくりした。
隣に座っている、大仏パーマに黒縁眼鏡のいかにも堅物なおばさん先生の横で、ずっと寝ている。
生徒達は気付いてないかもしれないけれど、一番前で仏頂面のおばさん教師と眠りこけているアニキが並んで座っているのをずっと見させられるこちらの身にもなってほしい。
笑いをこらえるのが大変だった。




