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俺を振った幼馴染が、転校先で「初めまして」と笑っていた  作者: 楽五郎


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41話 今の日和が好きだ

放課後、最上階の階段で日和を待った。


手には、二羽の折り紙の鳥を持っている。

古い不格好な鳥と、昨夜自分で折った青い鳥。


階下から、駆け上がってくる足音がした。


「ごめん、待った?」


日和が息を弾ませて現れる。


「今来たところ」


「そういうの、本当に言う人いるんだ」


「じゃあ、三分待った」


「細かい」


日和が笑う。

すぐに俺の手にある鳥へ気づき、表情を変えた。


「それ」


「古いほうは、琴葉と折った鳥だ」


日和へ差し出す。


「新しいほうは、昨日折った。琴葉に渡してほしい」


青い翼の文字を読み、日和が両手で受け取った。


「お母さんに頼んで、お姉ちゃんのところへ置くね」


「ありがとう」


日和は二羽を潰さないよう、鞄の内側へしまった。


「その前に、もう一つ話しておく」


「まだあるの?」


「白石先輩に告白された」


日和は固まらなかった。


「やっぱり、言ったんだ」


「うん」


「何て答えたの?」


日和が一段下り、顔を近づけてくる。


「今の日和が好きだから、応えられないって言った」


「……ちゃんと、断ったんだ」


日和は明らかに安心したあと、慌てて表情を引き締めた。


「白石先輩、大丈夫だった?」


「大丈夫ではないと思う。一人で帰るって言われた」


「そうなんだ」


日和は目を伏せた。


「安心した。でも、先輩が傷ついたことまで喜ばない」


「もう顔に出てる」


「今のは見なかったことにして」


「今の日和を見ろって言ったのは、日和だろ」


「こういうときだけ使わないでよ」


日和が俺の腕を軽く叩く。

重かった空気が少しだけほどけた。


「先に、私が話す」


一段上へ立ち、俺と同じ高さになる。


「最初に告白された日、直哉が目の手術の話をしたでしょ」


「ああ」


「折り紙を教えてもらったことも、あの言葉も、直哉が覚えてた通りだった。でも相手の名前だけが違った」


日和の声が震える。


「私、直哉のことが好きだった。告白されて、すごく嬉しかった」


「だった?」


「今も好き。そこは過去形じゃない」


涙を浮かべながら、日和が少しだけ怒る。


「でも、直哉が好きになった始まりを聞いたら、受け入れられなかった。私が返事をしたら、お姉ちゃんに向けられた気持ちまで、自分のものにするみたいで」


「日和は悪くない」


「それだけじゃないよ」


日和は首を横へ振った。


「私はずっと、お姉ちゃんみたいに振る舞ってた。直哉が私を好きなのか、私の中に残ってるお姉ちゃんを好きなのか、自分でも分からなくなった」


「だから、振ったのか」


「うん。理由を言ったら、直哉はきっと『それでも日和が好きだ』って答えたと思う」


否定できなかった。


「あのときの私は、それを信じられなかった。だから一度離れて、今の私と会ってほしかった」


「初めましてから」


「そう」


日和は涙を袖で拭う。


「これが、告白を断った理由。隠してて、ごめん」


「謝るのは俺のほうだ」


一段上の日和を見上げる。


「最初に恋をしたのは琴葉だった。俺は助けてもらった相手の名前を間違えて、その記憶を日和へ押しつけた」


日和は何も言わず、続きを待った。


「でも、今好きなのは日和だ」


日和の目が大きくなる。


「教室の真ん中で、みんなを笑わせながら話をまとめるところが好きだ。誰かが困ってたら、自分が経験したことのない放送にも手を挙げるところが好きだ」


言葉にするたび、再会してからの日和が浮かぶ。


「美緒に嫉妬してすぐ顔に出るところも、炭酸でむせるところも、傘を持って迎えに来てくれたところも好きだ」


「むせたところまで入れる?」


「今の日和だから」


「格好よくまとめてよ」


日和が泣きながら笑った。


「琴葉に似ているからじゃない。十年一緒にいたから、断れないと思ってるわけでもない」


一度息を吸う。


「再会してから知った篠宮日和を、もっと近くで見たい」


今度は、目を逸らさず言えた。


日和へ手を伸ばしかけ、触れる前に指を握り込んだ。


「日和が好きだ。俺と付き合ってほしい」


日和は唇を引き結んだ。

すぐに答えず、階段を一段下りる。


同じ高さで、俺の制服の袖をつかんだ。


「返事、明日まで待って」


「分かった」


「理由、聞かないの?」


「日和が自分で決めるんだろ」


日和は驚いたあと、強くうなずいた。


「今度は、私の言葉で直哉に告白したい」


「明日は、私から会いに行く」


袖をつかんだ手は、階段を下りるまで離れなかった。


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