↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/17

第6話 後始末

 下から響いていた騒音が止んだ。サクラはそれに気付き、呑気に欠伸をする。


『相変わらずの怠け者じゃのう。こっちは終わったから降りてこい』

「おー、ノアお疲れさん。ところでギルド長はーー」

「サクラ、テメェー!!」


 サクラがノアにギルド長の所在について尋ねようとするが、遅かった。ドスドスと大きな足音がしたと思った瞬間、顔を真っ赤に染めたギルド長が部屋に飛び込んできた。

 尻尾は威嚇するように立っており、怒りの度合いがわかった。


 まぁ、ギルドの1階もきっと無事じゃないだろうなと壁の銃痕を見ながらサクラは現実逃避する。しかし、ドスドスと近づいてきたギルド長がサクラの両肩を逃さないというように掴む。


「しまった」

「おい、何逃げようとしてる。便利屋だろ? テメェが運んできた案件だろ? もちろん無償で手伝ってくれるんだろ? 後、始、末!」

「はぁー、そうなるよなぁ。タダ働きかぁ」

「テメェがここでのんびりしてる時も他の奴らは必死に動いてたんだよ。率先して動くべきだろう、なぁ?」


 ギルド長の目は怒りで血走っている。ノアを派遣しただろと言っても火に油を注ぐだけだと目に見えたため、サクラは心の中で白旗を全力で振った。


「はい、働かせていただきます!」

「キィ」


 1階から飛んできたマスコットサイズまで最小化したノアが飛んできて、サクラの頭上に止まる。ノアから少し甘い香りがした。

 これは1階で餌付けされてるなとサクラは考えた。するも頭の中に声が響く。


『すまんな、やりすぎてしまった。しかし、妾の手では後始末の手伝いは出来ないのじゃ。代わりにブラックローズのクッキーでも食べながら応援しておろう』


 クッキーで買収されたかとサクラはがっくりと肩を落とす。食いしん坊めと思いながら、ギルド長に引きずられるようにして1階へと連れて行かれた。


「うわぁ、こりゃ思ったよりも酷いな」


 1階に降りるとロビーに置いてある机や椅子はひっくり返り一部は壊れている。カウンターには銃痕が刻まれている。

 そして部屋の隅には縛られている男達が6人ほどいた。全員気絶しているところを見るとノアの幻覚でトドメを刺されたのだと察する。


『妾は大活躍だったんじゃぞ?』


 サクラが察したことに気づいたノアが頭上で「キィ」と鳴きながら念話で誇らしげに話す。

 よくやったなと頭上のノアの頭を撫でるとゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らす。それに癒されながらもそろそろ現実に戻らないとなとサクラは直視を避けていた入口の扉を見る。


 そこは無惨にも壊れ、扉があった場所には何もなく、外からの壁が直接入ってきている。


「あー、これはノアが?」

「そうだ。狙撃手を投げ込んだ時に壊していった。直らないなら、もちろん弁償してくれるんだよなぁ? 飼い主さんよ」

「いやぁ、うちも子供達やドラゴンを食わせていかないといけないからなぁ」

「ふざけんな! テメェがここに来なかったら、ギルドはこんなことにはならなかったんだよ!!」


 サクラは思わず遠い目をして再び現実逃避をしたくなった。しかし脳裏に笑顔のルルとロイの笑顔が浮かぶ。肩身の狭い思いはさせたくない。仕方がないかとサクラはノアを頭から下ろして、カウンターに座らせる。


「……ん?」


 不意に背中に視線を感じた。サクラは振り返る。しかし、無惨に壊れた扉の向こうに見えたのはいつも通りの街並みや行き交う人々だった。何人かは立ち止まりこちらをみているが、サクラをというよりも、ギルドの惨状を見ている。

 気のせいかと顔を戻そうとした時、どこからか風が桜の花の匂いを運んできた。その匂いが何故かサクラの頭の中に残った。


 それからギルドメンバーに混ざってひたすらギルドの復旧や机や椅子の修理をしていく。

 めんどくさいとは思うものの便利屋という職業を営んでいるからか、慣れた手つきでサクラは進めていく。

 ある程度、復旧の目処が立つ。そして全員が目を逸らしていた入口の扉を見た。


「これは、新しい扉に変えたほうが早そうだな」

「だろうな。俺は襲撃者(あいつら)を自警団に引き渡さないといけないから、お前が依頼に行ってこい」

「あー、やっぱりそうなるのね」


 ギルド長の命にサクラは面倒そうに髪をかき乱す。


『ほぉ、お使いか。妾もいくぞ』


 無事なカウンターに腰をかけてブラックローズのクッキーを食べながら、復旧作業を眺めていたノアが楽しそうにサクラの頭の上に飛んでくる。


「ノアも行くの? まあいいけど」


 ノアを頭に乗せた状態でサクラは一度ギルドを出た。そして、馴染みの建具屋に向かう。


「あっ、サクラさんだ」

「んー?」


 建具屋に向かっている途中に聞き覚えのある声が耳を打つ。振り返ると尻尾をブンブン振っているルルと買い物袋を持ったロイがいた。

 普段なら癒されて喜ぶのだが、今回は謎の襲撃もあった為、つい先に周りを警戒してしまう。


「何かあったの?」


 ロイがその様子に気づき、不思議そうに聞く。サクラは周りに危ない気配がないかだけ確認するといつも通り脱力したように笑う。


「ちょっと、ギルドの大立ち回りに巻き込まれてさ。今は建具屋に修理依頼に行くところだ」

「キィゥ」


 サクラの言葉に同意するようにノアが鳴く。そしてサクラの脳内にだけ語りかけてきた。


『ものは言いようじゃなぁ』

『そもそもノアが扉に向かってぶん投げたから、今向かってるのわかってる?』

『ほぉ、妾のせいにするのか。一切役に立ってない若造が』

『……すみませんでした』


 頭上でルル達に聞こえないようにグルグルと唸り出したのでサクラはすぐに白旗を上げた。街中でノアが暴れると考えるだけで、お金がいくら飛んでいくか。


「私達も買い物終わったから一緒に行ってもいい?」

「うん、終わったら一緒に帰ろう? サクラさん」


 ルルとロイに上目遣いで見つめられ、サクラは即答したくなった。しかし、先程の襲撃者の件もある。もう一度周りを警戒する。


『今のところ、オウカ国の刺客はいなさそうじゃぞ? 奴らみんな桜の花の匂いがしたが、この街に捕まってる奴ら以外の匂いはせん』

『そうか』


 サクラの考えを見抜いたノアが鼻をふんと鳴らして教えてくれた。サクラは心の中でお礼を言うと2人に向き直る。


「ありがと。なら一緒に行くか」

「うん!」


 2人は嬉しそうに笑うとそれぞれサクラの左右に移動する。定位置に2人の子供がいる。それだけでサクラの心が温かくなった。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、金曜日20時更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。