第4話 ケモ耳と矢
サクラは、部屋に戻り女用の少し小さな服に着替える。
「はぁ、着替えるのめんどいけど、ルルは怒るしロイの教育に悪いからなぁ」
普段は平らな胸が膨らんでいる事を確認して、仕方ねぇかと呟く。思春期のロイには目に毒だろう。声も普段より高くなっており、自分が今話しているのか一瞬わからなくなる。
サクラは満月の夜に女になる。旅をしている時は満月の周期を見て、その日はホテルに籠っていた。
だから人に見られると言う事をサクラはルルとロイを拾った時に忘れていた。そして、初めての子育てに追われておりその日はうっかり満月の夜の日にちを1日間違えていた。
結果、ロイと2人で風呂に入っていた際に、突然女になったサクラにロイは混乱した。そして、足を滑らせて床に頭をぶつけて気絶した。タオルで体を拭いて、ロイだけに服を着せて自分は腰だけにタオルを巻いた状態でリビングに戻るとルルがサクラを見て「変態!」と叫んだことはいまだにサクラの心に古傷として残っている。
そんなわけでルル達は満月の夜にサクラが女になる事を知っている。ルルはサクラの心が男だと言うことはわかっているが、お姉さんができたといつも喜んで甘えてくる。
それは可愛くて嬉しいが、心が男なもので周りから見ると犯罪じゃないかと心配になってしまう。そんなとを考えていると部屋の扉が勢いよく開いた。
「サクラさーん!」
ルルが部屋に突撃してきた。そしてサクラの腰に抱きつく。
「待ちに待った女性サクラさん! 会いたかった!」
悲しいことにルルはサクラの女の姿が好きなのだ。なんなら男の姿のサクラより好きなんじゃないだろうか? と思ってしまう。
ルルは尻尾を振りながら頭を撫でてーとサクラの体に頭をぐりぐりと押し付ける。サクラは仕方ないなぁと思いながらルルの頭を撫でる。フサフサの耳が手に触れて気持ちいい。
ルルの勢いにいつも負けてしまうが、サクラもルルやロイの頭を撫でるのが好きだ。フサフサの耳の手触りが良くて永遠に撫でていられる自信はある。
しかし、オッサンがそれをやるのは犯罪臭がする気がしてしまう。だから、サクラはいつも欲望を堪えていた。だが、この姿なら迷わずに撫で回せる。
「えっ、なにやってんのサクラさん、ルル」
扉の隙間から引いたような顔をしたロイが見ていた。
サクラは慌ててルルの頭から手を離した。
「おう、ロイ、風呂終わったか」
「うん。ルルもあんまりサクラさんを困らせないでよ」
状況を把握したロイは呆れたようにルルを見る。
「ロイも頭なでてもらえば? 気持ちいいよ。サクラさんの撫でるスキルは高いと常々私は思っていたんだよ」
「いや、それはわかるけど……」
おお、俺は撫でるスキルが高いのかと2人のじゃれ合いを見ながらサクラは思った。まぁ2人が嬉しいならたまには女の姿じゃなくても撫でても良いかもなと思った。
「ふわぁ」
言い合いをしていたロイが欠伸をする。
「2人とももう休め。俺も寝るからさ。あっ、あと……」
サクラはそこで言葉を切って2人を見る。
「明日は朝ちょっとギルドに行ってくるから、朝食は3人で食べててくれ」
「わかった」
「なら、寝坊しないためには早く寝ないとだね、サクラさん」
サクラの言葉に2人は笑う。そしておやすみの挨拶をして2人はサクラの部屋から出ていった。
♢♢♢♢
サクラは朝起きて、自分がちゃんと男に戻っている事を確認する。そして簡単に身だしなみを整えて、まずは自警団に向かう。
「おー、サクラじゃねぇーか。朝早くから珍しいな」
自警団の本部に行くと顔馴染みの団長が、窓の近くで煙管を吹かせている。
「よぉ、ちょっと見て欲しいもんがあってよ」
サクラはそう言いながら、団長に昨日ドードー鳥の羽根に刺さっていた矢を見せた。
「この鏃なんだが、昔どこかで見たことがある気がするんだが、わかるか?」
「……これ、東洋にある謎多きオウカ国の紋様に使われているものに似てる気がするな」
「オウカ国、極東の国か」
「ああ、まぁそれがオウカ国で使われてるかまではわからねぇ。どうしたんだ?」
サクラは団長に昨日のドードー鳥の出来事を伝える。団長は真剣に話を聞き、サクラが話し終えると怒鳴った。
「それを何で昨日のうちに言いに来ない!!」
「忘れてた」
「なんで、忘れんだよ」
団長は目の前の机をバンっと叩く。サクラはどこ吹く風のように気にしない。
「最近、犯罪組織の話は聞いてないが……」
「また何かあったら伝える」
「ああ、頼んだ」
そしてサクラと団長は軽く意見交換をして、自警団の本部をサクラは後にした。矢はポーチにしまってサクラは次はギルドへと向かう。自警団に行く前に見られているとは感じていたが、その視線が増えてる気がした。
サクラは気づいている事を感じさせないように気配だけで探る。このままギルドに入っても良いかと考えたが、腕に覚えがある奴らの集まりだから良いかとそのままギルドの扉を開く。
カウンターの受付嬢にギルド長に繋いでもらうように頼み、ギルドの貴賓室に案内される。
部屋のソファに腰をかけてサクラは矢を取り出す。視線の正体はこの矢の持ち主だと何故か直感的に思った。
サクラはこのルナディリア王国を去るのが近いのではないか、何故かそんな予感を覚えながらギルド長の到着を待った。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、金曜日20時更新予定です。
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