第3話 野菜の収穫!
臨時収入にホクホクしていたサクラは扉をノックする音で現実に意識が戻される。
「ほーい」
気の抜けた声を出しながら扉を開けて、目の前にいる人物を見て思考も現実に戻された。
「よぉ、サクラ。農業手伝い忘れてねぇよな?」
筋肉質の男に声をかけられ、サクラは「臨時収入に気を取られて忘れてました」という言葉をごくりと固唾と共に飲み込む。
「あっ、オレガンさん」
鶏肉を冷蔵庫に入れに行っていたルルがサクラの隣まで小走りで来た。
「よお、ルルちゃん今日も元気だね」
「うん! 今日は何を収穫予定? 私楽しみで」
オレガンに嬉しそうに話しかけながらルルはやる気で腕まくりをする。サクラは今日はもう一仕事したから、農作業という名の労働はしたくない。どうやって逃げようかと考えているとルルがいる反対側にロイが立った。
サクラは嫌な予感がした。
「ほら、サクラさん! 行くよ! 労働の後のご飯はきっと美味しいんだ!」
食いしん坊のロイは尻尾をパタパタと高速で振っている。右にはやる気のルル、左には食欲のロイ。サクラはこの労働から逃げられない事を悟った。
一度バレないようにため息をつくと、オレガンを見た。
「とりあえず、とっとと行ってとっとと終わらせるぞ」
「一番やる気がないのはお前だけどな」
オレガンは呆れたように言う。出かける気配に気づいたノアが「キィ」と光りながら鳴く。するとぬいぐるみサイズだったノアが手乗りサイズになる。
「キィ、キィ」
置いてかないでと言うようにサクラの頭の上に乗った。
「家族全員で仕事しますかぁ」
どこかやる気のない声を出しながら、サクラは片手ずつルルとロイと手を繋いで家を出て、オレガンの農場に向かった。
オレガンからの本日の依頼は野菜の収穫だった。オレガンは広大な土地を持っており、さまざまな野菜を作り、市場に卸している。そのための収穫作業が今日のサクラ達の仕事だ。
家庭菜園に興味があると以前言っていたルルはオレガンの隣に陣取り、野菜作りの極意を聞きながら手際よく収穫していく。
その様子をよくやるなーと見ながら、サクラは振り分けられたキャベツの収穫を行う。丹精込めて育てられてるのがわかる。オレガンは流石だなーとのんびりと思いながらサクラはロイとのんびりと収穫する。
早く正確に収穫するオレガンとルルを見ながら丁寧が一番だよねとサクラは言い訳する。
そして、予定の収穫がすべて終わった。
「いつもありがとな、便利屋一家!」
オレガンはそう笑いながら規格外の野菜をくれる。ルルとロイは目を輝かせながらその野菜達を見る。
その様子を見て、だからめんどくさいけどこの仕事は毎回受けていたんだったとサクラは思い出す。
捨て子の2人に幸せになってほしい。だから旅を辞めて定住した。そして何か職に就かないといけないから、自由のきく便利屋にサクラはなった。
全てはルルとロイの幸せのために。ぐーたらと自堕落に過ごしたいがそれを我慢する価値はあるとサクラは考えている。
「キィ!!」
サクラの考えがわかったのか、自分は! と言うようにノアが鳴く。頭の上から手のひらに下ろして、ノアの頭を人差し指で撫でる。
「もちろんお前もだよ」
「キィゥ」
ノアは嬉しそうに鳴くとサクラの指に頬擦りをする。一人旅も気ままで良かったけど、こうして家族で暮らすのも楽しくて幸せだ。
「サクラさん!」
考え事をしているとルル達に呼ばれる。ノアを頭の上に乗せ直して、サクラは2人の方に行く。そして3人共両手いっぱいの野菜をもらいオレガンにお礼を言う。
そして仲良く家路に就いた。
「そういえば今日は満月だね」
「そうだな、早めに風呂入んねーとなぁ」
「あっ、そっかサクラさん今日は月に一度の日だ!」
「うん、ロイ間違いではないけどその言い方はなんか嫌だな」
思い出したようにルルが満月だと伝えるとサクラは嫌そうな顔をする。サクラは生まれつき呪われており、その呪いは満月の夜に起きる。何が起きるかはわかっているが、いまだに慣れない。そっか、今日が満月なら外出できないなとポーチの中の矢を思い浮かべる。明日早めにギルドに報告に行こう。そんな事をサクラは考えていると、家に着いた。
サクラは今日貰った鶏肉と野菜を使ってカレーを作る。一人旅をしていたから料理はお手のものだ。
「わぁい、サクラさんのカレー美味しくて好き!」
ロイが嬉しそうに尻尾を振りながら作っている様子を眺める。サクラの隣ではルルが収穫したキャベツなどでサラダを作っている。
料理が完成する。カレーのいい匂いが鼻から脳に入り、無意識に腹が鳴る。
ぬいぐるみサイズに戻ったノアの分もちゃんとカレーとサラダを出すと嬉しそうに「キィ」と鳴く。
「いただきます」
そしてカレーを食べ終えるとサクラは先に風呂に向かう。もうすぐ日が沈む。それまでに風呂に入りたかった。風呂から出て、水を飲んでると、窓の外が暗くなっていることに気づく。今、日が沈んだ。そう思った瞬間、サクラに変化が起きた。
身長が少し縮み、体が全体的に丸みを持つ。
そう、サクラは呪いで満月の夜だけ女になってしまうのだ。
「はぁ、慣れたけどやっぱり慣れねぇなぁ」
変わり果てた自分の姿を見てサクラはため息をついた。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、金曜日20時更新予定です。
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