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第2話 暴走鳥を落ち着かせよ!

 サクラは養鶏場に来ていた。ルルとロイは危険の為、家で留守番だ。番犬ならぬ番竜がいるから2人は安全だ。

 少年が言っていたドードー鳥とはこの王国最大の鳥だ。小さな卵を大量に産むが、大きさはサクラの身の丈と変わらないぐらいにはデカい。


「おー、盛大に暴れてるな」


 養鶏場の放牧場に設置されている柵の中で1匹のドードー鳥が走り回っている。すでに他のドードー鳥は避難させているようだ。ドードー鳥は飛べない穏やかな鳥だ。しかし、目の前にいるドードー鳥は暴れている。サクラは何があったんだと首を傾げる。何年かいろんな国を旅してきたが、こんなに暴れているドードー鳥を見たのは初めてだ。


「いつもは大人しいんだけど、今日は何故か気付いたら暴れだして」


 養鶏場の主人がサクラに気づいて走って向かって来る。見るからに顔がくたびれており、この状況が長時間続いているんだろうとサクラは推測できた。


「大丈夫か?」

「なんとか……でも、あいつが」


 養鶏場の主人は心配するように暴れているドードー鳥を見ている。それだけでどれだけ愛情を注いで育てているかが伝わってくる。


「うーん……ん?」


 サクラはドードー鳥を観察した。すると羽根の裏側に何かが刺さっているように見えた。


「なるほど、羽根に矢が刺さっている。痛みで暴れているんだろう。しかしどこから矢が飛んできたんだ?」


 サクラは考えそうになり、思考にストップをかけた。今はドードー鳥を助けてやるのが先だ。傷ついているものがいるのならと気合を入れる。


「旦那、包帯はあるか?」

「包帯? ……わかった、持って来る」


 サクラの問いに養鶏場の主人は頷いて、家に向かって走りだした。サクラの隣で心配そうにドードー鳥を見つめている少年の視線に合わせるようにしゃがみ、サクラは安心させるように笑った。


「大丈夫だ、すぐに助けてやるから安心して待ってろ」


 そう言って、少年の頭を撫でる。


「うん、ありがとう。サクラさん」

「サクラ、待たせたな」


 少年の表情が少し明るくなったタイミングで、養鶏場の主人が包帯を片手に駆けてくる。サクラは包帯を受け取ると、腰に巻いたポシェットの中に入れる。


「一応、危ないかもしれないから離れてろ」


 そう言って、ひらりと柵を乗り越えて放牧場に入る。興奮した状態のドードー鳥はテリトリーに入ってきたサクラに突進してくる。サクラはひらりと右に飛び、避ける。

 そして背後が見えた瞬間に背中に飛び乗った。


「うおっーー」


 突然胴体に乗られてさらに驚いたのかドードー鳥は暴れる。


「よしよし、どうどう。びっくりしたな」


 サクラは羽根の付け根あたりを優しくトントンと叩く。そして、バランスをとりながら、左の羽根に突き刺さっている10cmほどの小さな矢を抜いた。そして、ポシェットから包帯を取り出すと器用に巻いていく。


「痛かったな、もう大丈夫だからな」


 サクラはドードー鳥を撫でながら出来るだけ優しい声をかける。振り落とされないように、両足は器用にドードー鳥の胴体に回して固定している。かなりのスピードで走り回っている為、振り落とされたら怪我じゃ済まない。サクラは気合を入れる。

 突然、矢を抜かれた痛みでドードー鳥は先程よりも暴れたが、サクラは余裕の表情で優しく話しかけた。


「そんなに血も出てない。痛みも時期にひく。いい子だな、頑張った」


 徐々に違和感がなくなった事に気付いたのかドードー鳥の動きがゆっくりになり、そして止まる。サクラは落ち着いたのを確認してから、ドードー鳥から降りる。


「いい子だ、ありがとな」


 そして、立派に手入れされている羽根を撫でる。


「クエッ」


 ドードー鳥がお礼をするように首を下に向ける。もう大丈夫だとサクラは体の力を抜いた。自分が思っていたよりも緊張していたようで、どっと疲れが出てきた。じんわりと掌に汗をかいている。

 しかし、それを表には出さずに養鶏場の親子のもとに行く。


「これで大丈夫だ。久々の荒事だったから料金上乗せでいいか?」

「全然問題ない! あいつを助けてくれてありがとう」

「サクラさん! ありがと!」


 サクラの言葉に親子は頭を下げる。しかし、話はここでは終われない。サクラはドードー鳥から抜いた矢を養鶏場の主人に見せる。


「これに見覚えは?」

「? なんですか、これは? もしかして、これがあいつに刺さってたんですか!?」

「ああ、自警団とギルドに報告に行くか」


 主人がわからない事を確認するとサクラは暗い顔をする。ただの遊びで偶然矢がドードー鳥に当たってしまっただけならいいんだがとサクラは考える。しかし、この独特なダイヤ型の#鏃__やじり__#には見覚えがあった。

 全く面倒な事に巻き込まれそうだと、しばらく平穏なスローライフが送れない事をサクラは悟った。


 主人から報酬と大量の卵と鶏肉を貰ったサクラはとりあえず一度食材を置きに行こうと家路に向かう。ルル達子供に見つからないように、小さい事が幸いした矢をポシェットにしまう。

 養鶏場からサクラの家までは徒歩10分ほどだ。食材を抱えてのんびりと歩く。

 しばらく歩くと自宅である大樹が見えてくる。口元を緩めてサクラは自然と早歩きになる。


 予想外の臨時収入に食材達。今日の農業手伝いをすればしばらくは便利屋を休業しても問題ないだろう。

 自堕落な生活が送れると駄目人間まっしぐらな事を考えながら玄関の扉を開ける。


「あっ、サクラさんおかえり」

「早かったね!」

「キュゥ」


 玄関を開けるとルルとロイ、ノアが声をかけてくれる。この温かな日常を噛み締めながら、サクラは無意識に矢の入っているポシェットに左手を当てる。


「臨時収入と食材だ!」

「本当だ! 農業手伝いも野菜くれるって言ってたから今夜はご馳走だね」


 戦利品を見せるとロイが嬉しそうに跳ねる。しっかり者のルルは収入と食材の物色をする。

 我が家のマスコットの赤い小さなドラゴンは、肉を前に目を輝かせていた。家族っていいなとサクラは胸が温かくなった。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


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