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第16話 自己紹介、そして夜の密会へ

 扉を開けると予想通りにノア達3人がそこにいた。ノア達の後ろにはホテルの従業員と思われる半透明の使い魔がカートを引きながら後ろに控えている。


「とりあえず、ノラがおなかが空いたと騒ぎそうだったから、ルームサービス頼んだわ。……中にセッティングお願いしても?」


 まずはノアとルルが室内に入る。それを確認したレイチェルが後ろに控えていた使い魔へと声をかけた。

 使い魔はスーッと宙を浮きながら室内に入ると、テーブルにサンドウィッチや焼き菓子、ケーキなどを並べていく。

 サクラはチラリと室内に入って早々にソファに腰掛けたノアを見る。

 目を輝かせながら置かれていく食べ物達を食い入るように見ている様子に、食い意地ドラゴンめと内心で悪態をつく。


 使い魔はカートの中段から、ティーカップを取り出して、それぞれに紅茶を注ぐと、ティーポットを机の端に置く。

 そして、頭を下げると煙をまき散らし、カートと一緒に一瞬で消えた。


「えっ……?」

「うそ、ありがとうって言いそびれちゃった」


 ルルとロイが突然消えた使い魔のいた場所を残念そうに見ている。いい子に育っているなとサクラは少し目頭が熱くなるのを感じた。


「とりあえず、座って食べながら話そうか。2人は紅茶大丈夫? 苦手なら今からでもジュース用意するけど?」


 レイチェルはロイとその隣に座ったルルをじっと見る。


「紅茶飲めるよ!」

「砂糖とミルク入れたら大丈夫!」

「そう、よかった」


 ルルとロイに笑いかけてから、レイチェルも一人がけのソファに座る。


「とりあえず、これは仲間に入れてくれたお礼だから、遠慮しないで」

「レイ、ありがとな」


 ノアはすぐにサンドウィッチに手を伸ばす。少し躊躇しながらロイも目の前に置かれていた焼き菓子を持っていた。


「で、まだ自己紹介をしていなかったな」

「そういえば、そうだったね。私ももう一回しようかな。レイチェル・レイシー、異世界の旅人。レイって呼んで」

「……」


 レイチェルは紅茶を飲みながら優雅に話す。


「ノアは分かるよ。それで、面白い呪いを受けてるみたいな君と、子供達のことを教えて欲しいな」


 サクラは一瞬レイチェルが言った言葉の意味が分からなかった。


『おい、ノア。俺の呪いについて何か話したのか?』


 しかし、すぐに気を取り直してノアに念話で語りかける。ノアは食べる手を止めずにチラリとサクラを見た。


『妾が言うわけなかろう。どうせ呪いの残滓でも見えているんじゃろうな。妾もそなたの呪いの残滓は匂いで分かるしのう』

『えっ、そうなの?』

『そうじゃな。まぁ、分かっても妾もレイも解呪は専門外だから無理じゃがな』

『まぁ、そう簡単に解けたら呪いの意味ないもんなー……』


 サクラは息を吐く。


「はい、レイさん。私はさっきも名乗ったけど、ルルです! 家事や料理が得意です」

「そうじゃ、ルルの料理は美味だぞ」

「へぇ、それはいつかご相伴にあずかりたいね」

「うん! 私も食べて欲しい」


 既にルルはレイチェルに懐いているようで笑顔で自己紹介をしていた。


「えっと、僕はロイです。食べるのが好き……。えっと、よろしくお願いします」


 少し人見知りの気のあるロイがクッキーを片手におずおずと自己紹介をする。


「ルルにロイね。改めてよろしく」

「はい」

「うん」


 笑顔のレイチェルに子供達は嬉しそうに、どこか照れくさそうに返事をした。サクラも自己紹介をしないとなと、息を吐く。


「サクラだ。……呪いについて知ってるならそれについてもついでに話しといたほうがいいよな」

「そうだね。予想はついてるけど、きちんと知っといたほうが動きようはあるからね」

「……満月の夜に女になる」

「そう」


 サクラの覚悟を決めた告白はレイチェルの冷めた一言に一蹴される。


「は?」


 思わず声が漏れた。前に座っているノアが盛大に吹き出した。ヒーヒーと腹を抱えて笑っている。


「あっ、ごめん。別に軽く扱おうって気はないよ。ただ、予想の範囲内だったから」

「……そこまで分かるのか?」

「まぁね、私の時間が止まっている理由も呪いに関係するものだから比較的調べてはいる。まぁ、解呪出来るものじゃないから、そっちは探ってないんだけどね」


 レイチェルはまた紅茶を口に運ぶ。サクラも何も言えなくなり、この話は流れた。

 その後、軽食はロイとノアがほとんど食べ尽くした。

 そして夕食後。

 ルルが寝たのを確認後に、ノアとレイチェルがサクラの部屋を訪れた。

 すでにロイも寝室で休んでおり、サクラは夕食時に従業員が持ってきたワインとつまみを机の上に用意した状態で2人を迎え入れる。


「ルルは?」

「疲れたようでぐっすりじゃ。一応、寝室にレイが結界も張っているし問題もなかろう」

「とりあえず、込み入った話になりそうだから、この部屋にも防音結界張っておこうか」


 レイチェルは指をパチンと鳴らす。うっすらと部屋全体が一瞬だけ光ったが、変化はわからない。

 これが結界かとサクラはボーッと見つめてしまう。


「それで、オウカ国の刺客に狙われているんだって? また、あの国はほぼ鎖国状態なのにすごいね」


 レイチェルはソファに座り、自分でグラスにワインを注ぎながら前置きもなく本題へと入った。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、金曜日20時更新予定です。


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