↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/17

第17話 旅の目的

 サクラは、優雅に足を組んでソファに座りながら、ワイングラスを傾けるレイチェルをただ呆然と見る。

 そして、レイチェルの隣でおつまみを頬張っているノアを見る。


「ノアから聞いたのか?」

「まぁ、そうだね。ある程度は聞いてるからそこは省いて大丈夫よ」

「ルルが部屋に1人だからな、簡潔に終わらせた方がいいと思ったんじゃ」

「ノアが気を使ってる……だと?」

「お主は妾をなんだと思っておるのじゃ」


 思わず、驚きがそのまま口から出たサクラを、ノアがギロリと睨む。


「ただの食い意地を張ったドラゴン?」

「ほぉ、おぬしが妾をどう思っているのかが、よーく分かったのう」

「あははっ、仲が良いんだね」


 サクラとノアが軽くにらみ合っているのを見て、レイチェルが声を出して笑う。


「付き合いは、長いからな。……いや、もしかしたらあんたとノアの方が長いかもしれないが」

「まぁ、そればかりは寿命的な問題もあるから気にしなくて良いと思うよ? 誇り高く一匹ドラゴンを気取っていたノアが、子供の世話をしたり、低レベルの喧嘩をしたりしていて興味深いし」


 レイチェルは目を細めてノアを見ている。なんだかんだと付き合いは長いんだろうなとサクラは思った。


「それより今は、今後の方針だ。あんたはどこまで旅に同行してくれるんだ?」

「うーん、気の向くままかな? 最後まで一緒に行けたら良いんだけど、1つの世界に留まれる時間も決まってるからね。時間になったら伝えるよ」

「最初に時間の提示は出来ないのか?」

「こればかりは、世界樹の定めるままだからね。1時間前ぐらいに、そろそろだって分かる感じ」


 ワインを飲みながら当たり前のことのように答えるレイチェルに、サクラはさらに混乱する。


「世界樹?」

「あぁ、普通に生活していたら知らないか。この世の全てを選定している世界が創設されたときからあるとされる、大樹。理を定めるとともに、理を犯そうとした者に罰を与える世界の果てにある物だよ。私はそこを目指している」


 レイチェルは真剣な表情に変わり、持っていたワイングラスを机の上に置く。


「といっても、ほとんどの人間には関わりがないから忘れて良いよ。ただ、1つだけ問題があるの」

「問題?」

「そう、ある程度ならいいんだけど、私はこの世界にとっては異物でしかない。だから、世界樹が定めた本筋――ある人物の成長や歴史の転換点とかには関われない。無理に関わろうとすると」


 レイチェルはそこで言葉を切ると、サクラとノアを順番に見る。


「関わろうとすると……?」


 ゴクリと唾を飲み込みながらサクラはオウム返しのように言葉を紡ぐ。


「気を失う。その出来事が終わるまで絶対に起きない。ただ、感覚的にわかるから、ルルちゃんとロイ君を危険から守ることは出来ると思うよ。だけど、場合によっては敵は倒せない。それだけは知っていて欲しい」

「……ふむ、前にも聞いていたが面倒じゃな。そして、人という物は制約が多いのか? サクラの呪いといい」

「いや、俺の呪いとレイチェルさんの話を一緒にするのはスケール感が違いすぎないか?」


 戦力になるのか、ならないのか微妙な話を聞かされたサクラはどうしたものかなと、ソファに体を沈める。

 レイチェルの話はそれほどまでに非現実的で、一度で脳に受け入れるには難しい。

 そもそも、ノアやレイチェルは当たり前のように話しているが、この世界とは違う別の世界、異世界があるという認識ですらサクラは納得できていない。

 受け入れられないものは、流したい。でも、それにより子供達へと迷惑がかからないか。サクラの心にある天秤が傾く。


「まぁ、よっぽどのことがなければ大丈夫。オウカ国の刺客は聞いている話だと、君が狙いみたいだから、2人を守る分には理に違反することはないだろうしね」

「……やっぱり、俺狙いだと思うか? 変な鏃を見つけたがために……」


 サクラは分かっていたことだが、ため息をつく。


「? それは違うと思うよ?」

「へ?」


 レイチェルが不思議そうに首をかしげる。サクラは思わず沈めていた体を起こして、レイチェルを見た。


「君、オウカ国の関係者でしょ? 呪いがオウカ国特有の呪術の残滓が見える」

「いやいやいや、俺は生まれてから1度もオウカ国に行ったことがないぞ?」

「それは物心が付いてからの話でしょ? 出生がオウカ国、その後に出国した可能性も」

「親は、生まれたときからの呪いだって!」

「……嘘をついているか、生まれてすぐに呪われたから気付かなかったの2択じゃない?」

「ふざけるな!」


 思わず、机を叩き、立ち上がる。

 サクラの体は怒りで震えていた。早くに事故で亡くした両親はいつもサクラに誠実だった。嘘をつくはずがない。

 サクラはレイチェルを睨み付ける。視界の端でノアが気にせずにおつまみを食べている様子でさえ、癇にさわる。


「落ち着け、サクラ。事情があるにせよ、おぬしがオウカ国に1度行ったことがあるのは呪いの強さからいって事実のはずじゃ。おぬしを守るために嘘をついていた可能性もあるじゃろう」


 頭に血が上っているサクラに、ノアがワイングラスを傾けながら諭すように言う。


「それにじゃ、目的の場所がこれで定まったではないか」

「……どういうことだ?」

「刺客も呪いもどちらもオウカ国のもの。ならば、行くしかないじゃろう、オウカ国へ」


 ノアは笑いながらワイングラスに口をつける。徐々に冷静になってきたサクラはノアの言葉を頭の中で反芻した。

 確かに、旅の目的である2つが繋がるのならば、最終目的地はオウカ国になる。あとはどのように行くか、それを決める必要があるな。

 深呼吸をして、冷静になった頭でそう考えながら、サクラはソファに座り直した。

今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

次回は、金曜日20時更新予定です。


続きが気になりましたら、ブックマークで応援していただけると非常に励みになります! ぜひ、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。