第13話 旅の仲間?
レイチェルと名乗った女性の話は、にわかに信じられない話のオンパレードだった。
まず、不老不死という話から信じられなかったが、サクラと同い年ぐらいの女性にしてはノアと親しげなのが気になる。ノアとは10年来の付き合いだが、サクラはレイチェルを初めて見た。
その時点で、サクラは混乱した。しかし、次に告げられた言葉に思考を放棄した。
「私は、簡単に言うと異世界の旅人かな。この世界以外にも複数の世界があってそれは様々な時間軸で独立している。そんな世界を旅してるんだ。面白いよ、魔法がある世界もあれば、魔法がなく、科学が発達してる世界とか、ずっと戦争をしている世界とかいろいろあるの」
「……ちょっと、待ってくれ。レイチェルさん? のあの知り合いなのは分かったが、情報量が多い」
「あっ、ごめんね。ついこんな話普通はできないからノアがいて少し気が緩んじゃったわ」
レイチェルは少し申し訳なさそうに眉をひそめた。
ルルとロイはすでに話についていけないようで、頭から煙が見える気がした。
サクラも自分がもう少し若ければ、そっちに仲間入りができたのにと思いながらも、保護者である以上、状況は把握しないといけない。
サクラは自分を鼓舞した。しかし、すぐにその決意も粉々に砕けることとなる。
「それよりも、ノアはいつまでドラゴンの姿でいるの?」
「は……?」
『……』
「えっ、もしかして話してなかったの? ごめん」
「待ってくれ、ドラゴンの姿以外に何かあるのか!?」
思わずサクラは叫ぶ。ノアは気まずそうにサクラから視線をそらす。
サクラの後ろから歓声が聞こえた。
「ノア、大きさ以外も変えられるの? すごい!」
「えっ、見てみたい! 何になれるの?」
ノアが大きなドラゴンだと今日知った2人は他の姿があることに目を輝かせている。
2人が味方ではないことにサクラは泣きたくなった。
『……うむ、隠しているつもりはなかったのじゃが、必要を感じなかったのでな』
2人が味方だと分かったノアはあからさまに調子に乗った。そして、咳払いの代わりに「きぃ」と1度鳴くと淡く光を発する。そして、その形は徐々に縦に伸びていき、ひときわ淡く輝いたと思うと、そこには長い赤髪を持った、妖艶な女性がいた。
「は?」
「なんじゃ、さっきから。は、としか言ってないではないか」
「いやいやいや、お前、人型になれたのか?」
「うむ、でも久々じゃぞ? 50年ぶりぐらいじゃ」
「すごい! ノア綺麗!」
大人の女性が大好きだと最近自覚したと笑っていたルルが嬉しそうにノアに抱きつく。
ノアはルルを受け入れて頭をよしよしと撫でていた。
「ルルは嬉しいことを言ってくれるのう」
「……おい、ノア。後で話がある」
「……まぁ、そうなるわな」
真剣な表情のサクラに、ノアは肩を落とす。
「なんか、ごめんね?」
その様子を見ていたレイチェルが少し申し訳なさそうに謝った。
「いや、昔はよく人型になって一緒に飲み歩いていたから、そなたのその疑問は最もじゃからのう」
「ならよかった。それより、みんなも今からマグノリアに入るつもり?」
「そうだけど、何?」
レイチェルは、立ち直ったサクラと国境を交互に見ながら少し考える。
「一緒に入ってもいい? この世界に来るの久しぶりで作法が変わっていないか不安だったの。知り合いのノアもいるし」
「……別にいいが、俺達も旅するからずっとは留まらないけど」
「それなら、しばらくご一緒させて欲しいかも」
「え……」
レイチェルの勢いにサクラは戸惑う。その様子を見てノアが笑う。
『いいんじゃないかの。レイチェルは戦力になるしのう』
ノアの声が直接脳に届く。子供達に戦闘という単語を聞かせないためだろう。サクラは表情には出さずに疑問を返す。
『そうはいっても、巻き込めないだろ』
『問題ない。妾達以上に訳ありじゃからのう。詳しい話は子供達が寝てから本人も交えて話そう』
『ま、お前が大丈夫というならいいか』
2人での脳内会議を終えるとサクラはレイチェルに向き直った。
「こちらからも、お願いしたい。正直ノアが人型になれるとしても、ルルを1人で任せるのは心配だったんだ」
レイチェルを信用できるかというとまだ分からないのが正直な話だ。それでも年頃の少女であるルルをいつ終わるとも分からない旅でずっとサクラやロイと同じ部屋にしていいのかと引っかかっていた。
ノアとレイチェルの2人に見てもらえれば、幾分ましなような気がした。
「ありがとう。たまに、他の世界の常識を使っちゃうことがあるから助かるわ」
「いや、それはこっちとしては不安材料が増したんだが……」
「それより、そろそろ行こうよ、サクラさん。おなかすいた」
また話し合いが始まりそうなタイミングでロイの腹の音が鳴った。
「それもそうだな、話し合いは夜でいいか」
「私は問題ないよ」
「妾もないぞ。それよりどうする? 妾はドラゴンに戻った方がよいか?」
「あー、宿の部屋を2つ取るのは確定したから、お前が辛くないならそのままでいい。ルルの保護者でいてくれ」
サクラはそう伝えると、ルルとロイを見た。
「じゃ、マグノリアに入るか。宿の調達もしないといけないしな」
サクラの合図をもとに、国境に向かって歩き出した。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、金曜日20時更新予定です。
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