第11話 旅立ち
サクラが外に出ると、ノアがマスコットの大きさから本来の大きさに戻っていた。
ルルとロイは巨大化するノアを驚いて見ていた。
サクラは少し離れた位置で口を挟まずに見守ることにした。
ノアは驚く子供たちの方をどこか緊張した面持ちで見る。
『その、あの姿は仮の姿で……妾の本来の姿はこれなのじゃ。隠していたわけではないのだが、黙っていて悪かった』
「えっ……ノア、喋れたの?」
ノアの念話にルルが驚いたように声を上げる。
そうだよなとノアが罰が悪そうに視線を逸らす。
「ノアの真の姿! かっこいい!」
「本当だよ。なんで、黙ってたの。話せるならもっとたくさんお話したよ!」
ロイは目を輝かせながらノアを見ている。ルルも少し呆れたような声を出すも起こっている様子はない。
サクラはその様子を見て、2人の成長に心の中で涙した。
心地よい風が草原を吹き抜ける。
『……怒らないのか?』
「なんで、怒らないといけないの?」
ロイの返答にルルも大きく頷く。ノアが安堵の息を吐く。それだけで先ほどの風よりも強く生温かい風が吹き抜けた。
子供達はそれを見て楽しそうに笑う。
「自由に大きさが変わるのは知ってたけど、本来の大きさがこんなに大きいなんてすごいね!」
「だね。僕たちを乗せて飛べたりする?」
『ふふ。そんなのは朝飯前じゃ』
「すごい!!」
楽しそうに話す3人を見てサクラも嬉しくなる。しかし、旅に出るなら早い方がいい。すでに自宅が割れているのだから。
サクラは3人に近付く。
「よし、ならみんなに挨拶して行くか」
「うん」
『そうじゃな』
顔を見合わせて笑い合う。そして、一度家に戻るとそれぞれ鞄を持ち、家を出る。
そして、街の人々にしばらく旅に出るから、留守にすること、便利屋も一時休業することを伝える。
急な話で街の人々はみんな驚いた。そりゃそうだよなとサクラは微かな罪悪感を覚える。しかし、正体不明の何者かに狙われてるとは言えない。
ギルドに挨拶に行った時は、ギルド長が少し勘づいた反応をしていたが、ルルとロイがいた手前、何も言われなかった。
ルルとロイも別れを惜しみながらも、選別として果物やパンをもらっていた。
あらかた、街で仲良くしている人々への挨拶を終えると、養鶏場に赴く。
昨日のドードー鳥の暴走以降変わりがないことを確かめ、しばらくこの地を離れることを伝えて、別れる。
最後はオレガンの農場だ。農場に行くと、オレガンは野菜の世話をしていた。
「おう、サクラどうした。金がなくて手伝いでも申し出に来たか?」
「ちげぇよ。ちょっと諸事情でしばらくみんなで旅をすることになったから、挨拶と家の管理を任せたくてさ」
サクラはそう言いながら、オレガンに家の鍵を渡す。
「旅に出るだぁ? そりゃ、随分と急な話だな。ルル達は納得しているのか?」
心配そうにオレガンがルル達を見る。ルルもロイもオレガンの言葉に大きく縦に首を振る。
「納得してるよ。だって、家族は一緒にいるものだからさ!」
「うん。初めての家族旅行だと思うと少し、ワクワクしてきたし」
楽しそうに笑う2人を見て、サクラは目頭が熱くなるのを感じた。サクラの頭上ではノアが嬉しそうに「キィ」と鳴いている。
「そうか。ガキどもが納得してるなら何も言わない。気をつけて行ってこいよ」
オレガンは納得したように頷くと、サクラから鍵を預かった。
サクラも大きく頷く。
「ああ。子供達もいるし、無理はさせれないからな。留守の間は頼んだ」
「ふっ、任せておけ」
2人は拳を突き合わせて笑う。そしてしばしばの別れを惜しむ。
「さて、行くか」
サクラの言葉にルルとロイも頷く。無事を祈るオレガンに手を振り、農場を後にする。
「サクラさん、移動は歩きなの? バスの時間は調べてないよ?」
「いや、人気がない場所まで移動したらノアに乗っての移動だ。長旅になるだろうし、削れる金は削りたい」
『まったく、妾を乗り物扱いとは言ってくれるな』
「えっ!? ノアに乗れるの?」
「3人乗って、ノアは大変じゃない?」
3人に聞こえるように念話で話していたノアは普段とは違う心配の声に嬉しそうに鳴く。
『問題ないぞ。妾は強いドラゴンじゃ。3人ぐらい乗せて飛ぶのは朝飯前じゃ』
サクラの頭上では、右前脚を胸に当てる。ルルとロイが期待に満ちた笑顔でノアを見上げており、鼻を鳴らす。
満更でもなさげなノアの声にサクラは思わず笑う。
そして、しばらく草原を歩く。農場も小さくなり、周りには誰もいないのを確認すると、ノアがサクラの頭から飛び立つ。
地面に向かいながら、ノアの身体はどんどん大きくなり、地面に着地する頃には元の大きさへと戻っていた。
そして、お座りをするかのように背中を地面に近付け、3人が乗りやすいように調節する。
『サクラよ、鞍もあった方が良いか?』
「えっ、あるなら、お願いしたい」
『わかった』
ノアは確認すると、目を瞑る。微かな風がノアの周りに吹き荒れる。サクラはルルとロイの体を守りながら、数歩後ろに引いた。
そして風がおさまると、ノアの背中には座りやすいように鞍が現れており、乗りやすいようにか梯子までかかっている。
「ノア、すごい!」
ロイが感動したような声を出す。隣で、ルルも目を輝かせていた。
ドラゴンってそんなこともできるのねと思いながら、サクラは2人に梯子を登るように促す。
2人はゆっくりと梯子を登る。サクラも後に続く。鞍には頑丈な椅子とベルトがついており、安全面にも考慮されていた。
『子供達が危険な目に遭わないように、思考を凝らして見たのじゃ』
『流石、ノア様! お見それした』
ノアがサクラにだけに聞こえるように念話で語りかける。すぐにサクラもお礼をすると、後方の2人席へ子供達に座ってもらい、ベルトの確認をする。前方の椅子の隣には荷物を入れれるボックスがあり、2人の荷物も預かって中に入れた。
子供達の安全確認をすると、サクラも椅子に座り、ノアに合図する。
『用意できたから。それなら、行くぞ』
ノアはそう告げると、羽根を羽ばたかせた。
今日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
次回は、金曜日20時更新予定です。
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