EP96 燃え盛る魂の終着点
マキマの特殊な波長のエネルギーが、レオナの炎剣に撃ち込まれる。 「この炎は、私の魂そのもの! 解析など、不可能!」 レオナは叫び、炎剣を振り上げた。刀身から迸る紅蓮の炎は、マキマの解析エネルギーを焼き尽くすかのように、広間に熱風を巻き起こす。
「させるでありますか!」 マキマは、その小柄な体躯を素早く回転させ、迫りくる炎をかわした。激しい動きに合わせて、彼女の豊かな胸が大きく揺れる。 「科学の力は、魂の熱量にも届くでありますよ!」 マキマは、電子銃から連続で弾丸を放ちながら、もう片方の手で腰のポーチから円筒形のグレネードを取り出した。
「無駄な足掻きを!」 レオナは、炎剣を盾のように構え、マキマの弾丸を全て弾き飛ばす。その守りは、完璧だった。しかし、マキマは攻撃の手を緩めない。グレネードを地面に叩きつけると、それは小さな爆発を起こし、周囲の空間に目に見えない磁場を展開した。
「これは……!?」 レオナの動きが、わずかに鈍る。磁場の影響で、彼女の重い鎧が、鉛のように感じられるのだ。 「これは磁場グレネードであります! その重い鎧では、まともに動けないであります!」 マキマは、その隙を見逃さず、再び電子銃を連射する。今度は、レオナの動きが鈍った分、弾丸は鎧の隙間を縫うように、わずかに深くまで届いた。
キン、キン、と甲高い金属音が響き渡る。レオナは歯を食いしばり、磁場の抵抗に抗いながらも、炎剣を振るう。 「小賢しい……! だが、この信念は、揺るがぬ!」 彼女の琥珀色の瞳は、依然としてカイエンたちを「王の過ちを繰り返す者」と見なしているかのようだった。
その時、レオナの意識の深奥で、遠い過去の記憶が蘇る。
――王宮の一室。地下へと沈みゆく王国の、軋む音が響く。 レオナは、玉座に座る王の前に跪いていた。 「陛下。」 レオナの声は、切羽詰まっていた。 「まだ民は生きています。城を捨ててもいい。どうか逃げましょう。皆で生き延びましょう!」 レオナの言葉には、民を思う、熱い情熱が込められていた。彼女は、最後まで国民を救う道を模索していた。
しかし、王は静かに首を振る。 「……もう遅い。」 王の言葉は、レオナにとって絶望だった。 「遅くありません!!」 レオナは叫んだ。 「私は最後の一人まで守ります!!」 その叫びは、王宮の壁に虚しく響いた。
王は、静かにレオナを見つめ、そして、その言葉を告げた。 「だからこそ、お前には出来ない。」
――過去の記憶が、レオナの意識から弾け飛んだ。
「くっ……!」 磁場の影響と、過去の記憶の衝撃で、レオナの体勢が大きく崩れる。マキマは、その一瞬の隙を見逃さなかった。 「今であります!」 マキマは、電子銃の出力を最大まで高め、レオナの胸当ての亀裂目掛けて、渾身の一撃を放った。
紅蓮の炎が、青白い電子の光と激しく衝突する。広間には、爆音と閃光が満ち、カイエンたちは思わず目を細めた。 カイエンは、レオナの姿を見つめる。彼女の信念は、この王国を沈めるという王の決断に最後まで抗いながらも、騎士としての責務を全うしようとする、悲劇的なものだった。王の「だからこそ、お前には出来ない」という言葉は、一体何を意味していたのか。
煙が晴れると、そこには、膝を突き、炎剣を地面に突き立てたレオナの姿があった。彼女の胸当ての亀裂は、さらに深く、大きく広がっている。しかし、その琥珀色の瞳は、まだ燃えるような朱色を宿していた。 「……まだ、だ。まだ、終わらせるわけにはいかない……!」 レオナは、かろうじて立ち上がろうとする。その姿は、満身創痍でありながらも、決して折れない騎士の魂を示していた。
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