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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
王墓編

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EP94 炎の騎士 レオナ

カイエン、マキマ、アイフェリス、そしてヒナの四人は、ガレウスが示した通路の奥へと進んでいった。通路は緩やかな下り坂になっており、やがて巨大な石造りの大扉の前にたどり着く。扉には、見慣れない複雑な紋様が刻まれており、その中央には、かつてこの王国を象徴したであろう、しかし今ではひび割れて判読しにくい王家の紋章が彫られていた。


「ここが、陛下の……」 アイフェリスが呟き、その紋章にそっと触れる。その手から微かな魔力が流れ込み、紋章が淡く光を放った。すると、重々しい音を立てて、巨大な大扉がゆっくりと内側へと開いていく。


扉の向こうに広がっていたのは、広大な広間だった。天井は高く、その中央には、今にも崩れ落ちそうな巨大な柱が何本もそびえ立っている。広間全体は薄暗く、しかし壁際には無数の燭台が並んでおり、そのほとんどは長い年月を経て朽ち果てているものの、いくつかはまだ微かに炎を宿しているかのように、揺らめく影を落としていた。


その広間の中央に、一人の騎士がいた。 彼女は、まるで数百年間、一歩も動いていないかのように、剣を地面へ突き立てて跪いている。その姿は、息をのむほどに静かで、同時に、計り知れない重みを背負っているかのようだった。


「あれが……」 マキマが息を呑む。 彼女の鎧は、かつては深紅であっただろうことが、わずかに残る色合いから想像できた。しかし、長い年月と、おそらくは激しい戦いの痕跡によって、そのほとんどが黒く焼け焦げ、ところどころに金色の装飾だけが、かろうじてその輝きを留めている。


カイエンは、その騎士の姿から目を離せない。魔眼が、その騎士の纏う魔力と、彼女の身体に残された「情報」を解析していく。 年齢は30代前半ほどに見える。身長はアイフェリスとさほど変わらない170cm前後だろうか。長く伸びた緋色の髪は、焼け焦げた鎧の色とは対照的に、鮮やかな赤を保っていた。瞳は琥珀色だが、その奥には、深い疲労の色が滲んでいる。


「女の人でありますね……」 マキマの呟きに、ヒナも不安げな表情でその騎士を見つめていた。 彼女の顔立ちは、確かに美しい。しかし、その美しさには、どこか疲れ切ったような陰が差している。左頬には、古く、しかしはっきりとわかる火傷の痕が残されていた。そして、首元には、不釣り合いなほど小さな、子供が作ったような粗末な木彫りのお守りが下げられている。


鎧は、王国近衛騎士団の礼装であることが見て取れた。胸には、かつての栄光を物語るかのように、王家の紋章が刻まれている。しかし、その胸当てには巨大な亀裂が走っており、まるで最後まで誰かを庇って受けた一撃のようだった。背中に流れるマントは、半分以上が焼け落ちてしまっている。


彼女の傍らには、一本の剣が地面に突き立てられていた。普段はただの黒い鉄の塊のように見えるその剣だが、カイエンの魔眼には、その刀身の奥底に、微かな熱が宿っているのが見えた。 「あれは……炎の剣でありますか?」 マキマが尋ねる。 カイエンは無言で首を振った。それは、炎ではない。魂そのものが燃えているかのような、異質な熱量だった。


静かに跪く女騎士。その姿は、まるで数百年間、この場所で誰かを待ち続けていたかのような、強烈な存在感を放っていた。次の瞬間、広間の奥から、微かな風が吹き抜けた。その風に、女騎士の緋色の髪が、ゆっくりと揺れる。そして、彼女の琥珀色の瞳が、ゆっくりと、カイエンたちの方へと向けられた。その瞳の奥に、燃えるような朱色の光が、一瞬だけ閃いた。

各章ブロックに一人ひとりスポットが当たるように作成してます!

各活躍をお楽しみに!

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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