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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
王墓編

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EP85 栄光の残滓、朽ちた回廊

女王の謁見から数日後、カイエンたちの出発準備は整った。アイフェリスは、女王の命を受け、彼らの案内役として同行することになっていた。彼女の表情には、エルフの里の未来を背負う者としての覚悟と、未知の領域への不安が入り混じっていた。


「準備はよろしいですか、カイエン」 アイフェリスは、地下深くへと続く、古びた石造りの階段の前で振り返った。その先は、どこまでも続く暗闇で、冷たい空気が彼らの肌を刺した。 「ああ、いつでも行ける」 カイエンは、腰に差した魔剣の柄にそっと触れ、静かに応じた。マキマは背負った大型のバックパックを調整し、ヒナは愛用の短剣を肩に担ぐ。


エルフの里の地下深く、かつては聖域への入り口であった場所から、彼らは「沈んだ王国」へと続く道を辿った。道中、地下水脈の轟音だけが響き渡り、時折、天井から滴り落ちる水の音が、不気味なほどに大きく聞こえた。数時間にも及ぶ下降の末、彼らはついに目的地へと辿り着いた。


「……ここが、数百年前に沈んだ王国の遺構……」


アイフェリスの呟きは、重く淀んだ空気に吸い込まれていった。そこはもう瑞々しい森の聖域ではない。冷え切った石畳の壁にはおびただしい亀裂が走り、天井からは絶えず黒ずんだ不気味な液体が滴り落ちていた。空気そのものが毒されているかのように重く、肺を焼くような悪臭が立ち込めている。


「これは……ひどいでありますね。空気中に高濃度の腐敗物質と、未知の魔力反応を検知。通常の生物が長時間滞在すれば、生命維持システムに深刻な影響を与えるでしょう」 マキマは、手首の端末を操作しながら眉をひそめた。その顔には、科学者としての純粋な探究心と、目の前の異常な状況への警戒が混じり合っていた。 「吐き気がするな。まるで、生き物の内臓にでも潜り込んだような悪臭だぜ」 ヒナは口元を覆いながら、周囲を鋭く見渡す。彼女の嗅覚と視覚は、この淀んだ空間の中でも、わずかな異変を捉えようとしていた。


カイエンは、ゆっくりと魔眼を起動させた。彼の右眼に宿る翠玉の輝きが、暗闇を切り裂くように光を放つ。視界に映るのは、壁や床にへばりつくように蠢く、微細な魔力の残滓。それは、かつて使徒が撒き散らした「バグ」の痕跡と酷似していた。


「この場所全体が、何かに侵食されている……。使徒の残滓、あるいはそれ以上のものが、この王国を内部から蝕んでいる」 カイエンは、静かに結論を述べた。彼の声は、この死んだような空間に、どこか冷たい響きを帯びていた。


「使徒の残滓……やはり、疫病の根源はここにあると?」 アイフェリスは、顔を青ざめさせながら尋ねた。彼女の心臓は、不安と恐怖で激しく脈打っていた。 「可能性は高い。しかし、それだけじゃない。この淀んだ空気、そしてこの魔力の残滓……。まるで、巨大な何かが、この王国そのものを『喰らい尽くそう』としているようだ」 カイエンは、視線を天井から壁、そして足元の石畳へと巡らせた。彼の魔眼は、この沈んだ王国の深層に潜む、さらなる「歪み」を捉えようとしていた。


「警戒を怠るな。ここから先は、何が潜んでいるか分からない」 カイエンの言葉に、マキマとヒナ、そしてアイフェリスは、それぞれ武器を構え、気を引き締めた。彼らの足元から、黒ずんだ液体が滴り落ちる音が、不気味なほどに大きく響く。


古の呼び声に導かれ、カイエンたちは「沈んだ王国」の深淵へと足を踏み入れた。そこは、数百年の時を経て、世界から忘れ去られたはずの場所。しかし、その奥底には、今なお蠢く「バグ」と、王国が自ら沈んだという、恐るべき真実が隠されているに違いなかった。


王の遺跡突入です!

明日はお盆特集ということで一挙公開をします!


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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また次話でお会いしましょう!

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