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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
使徒の残滓戦争編

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EP83 祝宴の舞踏と、それぞれの温もり

 アイフェリスの力強い宣言が終わり、会場が温かな祝福ムードに包まれると、楽団が生演奏する優雅なダンス曲のメロディーがホール全体に流れ始めた。

 歴史的な和解の夜を祝し、貴族や兵士たちが次々とフロアへ歩み出てペアを組んでいく。そんな中、カイエンは逃げ場を失ったように苦笑いを浮かべていた。


「ほら、突っ立ってないで手を出しなさいよ……って、足踏んだらただじゃ置かないからね!」

 先ほどビュッフェから戻ってきたヒナが、黒のパーティドレスの裾を少し持ち上げながら、照れ隠しのようにツンとした顔でカイエンの手を取った。

 いざステップを踏み始めると、戦闘ではあれほど俊敏だった彼女も、社交ダンスの慣れないリズムには少し戸惑っている様子だ。ふとした拍子にバランスを崩しそうになり、カイエンがスッと腰を支えてエスコートする。

「っ……! な、なんか調子狂うんだけど……!」

 至近距離で目が合った瞬間、ヒナは耳の先まで真っ赤に染め上げ、悔しそうにぷいと顔をそむけた。だが、その口元には隠しきれない小さな笑みがこぼれていた。

 少し呼吸を整えたカイエンは、照れる彼女を真っ直ぐに見据えて静かに口を開く。

「なあ、ヒナ。……さっきは助かった。お前がいなかったらあの核を露出させる隙なんて作れなかったし、今回は間違いなくお前のおかげで全滅を免れた。……本当に、ありがとう」

 不意を突かれたストレートな謝辞に、ヒナは心底動揺したように目を見開き、みるみるうちに耳たぶから首筋までを茹だるような赤さに染め上げた。

「っ……! な、なに急に改まって言ってのよ……! ばっかじゃないの、当然のことしたまでだし……! あ、あもう恥ずかしいから私ちょっと風にあたってくるからね!」

 照れ隠しを全開にしながら、ヒナは足早にその場から逃げ出すように走り去っていった。その背中を見送りながら、カイエンは小さく苦笑を零すのだった。


「わ、わわ……! か、カイエン殿! 足、足が絡まるんであります! これでは物理的アルゴリズムが破綻するでありますよ!」

 続いて声をかけてきたマキマは、緑のドレスの裾をバタつかせながら、まるでロボットのようなガチガチのぎこちなさでカイエンにしがみついていた。

 普段は理路整然と科学や技術を語る彼女が、この不慣れなワルツの前には完全にタジタジだ。

「力を抜けよ。俺がリードしてやるから、転ばないようにしっかり捕まってろ」

「は、はいであります……! ふぅ、しかしこのドレスの構造、機動性が皆無であります……が、カイエン殿のエスコート機能はなかなか優秀でありますね!」

 緊張しながらも、マキマは安心したようにふっと柔らかく微笑み、嬉しそうにカイエンの胸元へと身を預けた。

 優雅な旋律に身を委ねながら、カイエンはふと彼女の頭にそっと手を置き、かつて亡き親友が言っていた言葉を重ねるように静かに告げる。

「……お前なら、本当に科学と魔法の架け橋になれるかもな」

 その言葉と優しい声音に、マキマはハッと息を呑んだ。脳裏によぎるのは、かつて同じように自分を認めてくれた、もう一人の技術者の面影。

 胸の奥が熱く疼くのを隠すように、マキマはぐっと頬を膨らませ、誇らしげに胸を張る。

「も、もちろんであると誇るでありますよ! マヤ様の技術を継ぐこの私を甘く見てもらっては困るであります! ……ふふ、でも……ありがとうであります、カイエン ……」


 そして最後――。役目を終えたアイフェリスが、少しだけ肩の力を抜いた柔らかな笑みを浮かべてカイエンの前に歩み寄ってきた。

「ふふ、二人とも楽しそうだったわね。……ねえ、カイエン。私とも一曲、踊ってくれるかしら?」

 高位礼装を纏った彼女が差し出した手に導かれるまま、カイエンは彼女をフロアへとエスコートする。

 周囲の視線が集まる中、二人は完璧なステップで優雅にターンを重ねた。少し静かなフロアの端へと差し掛かった時、アイフェリスはふと遠くの夜空を見つめ、静かに呟く。

「本当に……ありがとう、カイエン。あなたが来てくれなかったら、この里も、私の選んだ道も、すべて間違ったままだったかもしれないわ」

「俺一人じゃなくて、あいつらも一緒だからな。……それに、お前が最後にちゃんと自分の足で立ち上がったからだろ」

 カイエンの言葉に、アイフェリスはまるで雪解けのような、これ以上ないほど美しい笑顔を咲かせた。

 激闘の果てに訪れた静かで温かな夜。

 音楽の調べに合わせながら、それぞれの想いが胸を満たす、忘れられない祝宴のひとときだった。

(使徒の残滓戦争編完)

戦争編完結です!みなさんはどのヒロインが好きでしょうか?ぜひコメントなどで教えてください!

次回、王墓編お楽しみに!

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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皆さまの応援が、執筆を続ける大きな力になります。

また次話でお会いしましょう!

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