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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
使徒の残滓戦争編

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EP82 城の祝宴と、ドレス姿の騒動

女王の厚意により、里を救った英雄たちを祝う盛大なパーティが城内で開かれることになった。

 普段の戦闘服を脱ぎ捨て、仕立ての良い上品なパーティスーツに身を包んだカイエンが会場に足を踏み入れると、背後からヒナの軽口が飛んでくる。

「へぇ、たまにはそんな格好もするんだ? ……ま、馬子にも衣装ってやつ?」

 からかうようにフッと笑ったヒナだったが、ふと彼女自身の姿に目を向けたカイエンは言葉を失った。シックで上品な黒のパーティドレスが、ヒナの引き締まった体躯とクールな魅力を驚くほど引き立てている。

「……なんだ。お前こそ、その黒のドレス……すごく似合ってるぞ」

 カイエンがまっすぐにそう告げると、ヒナは意表を突かれたのか、一瞬で耳たぶまで真っ赤に染め上げた。

「っ……! な、なに急に真面目な顔して褒めてるのよっ……! ばっかみたい、お腹すいたから料理取ってくる!」

 耐えきれなくなったように、ヒナはバタバタと慌ててビュッフェのテーブルへと逃げていった。

 そんなやり取りを微笑ましく見送りつつ、カイエンが会場の喧騒へと視線を戻すと、広間の一角に妙な人だかりができているのに気づいた。

 何事かと覗き込んでみると、群がる男たちに囲まれて「ぜひ我が領土の嫁に……!」「うちの息子の伴侶にどうだ!」と猛烈に言い寄られている小柄な人物の姿があった。

(なんだあいつは? どっかの貴族の令嬢か……?)

 目を凝らしてよく見れば、鮮やかな緑のパーティドレスを纏い、小柄ながらも豊かな胸元とサラサラの髪が目を引く、見事な美少女だった。確かにどこかの国の高貴なお姫様と言われても納得のルックスだ。

「え!? わ、わたすでありますか……? ちょっと、そんなに囲まれても困るであります……!」

 聞こえてきた聞き覚えのある焦った口調に、カイエンは口に含んだワインを盛大に吹き出した。

「――ぶっ……! ま、マキマ!? あれが……!?」

 驚愕に目を見開くカイエンの視線の先で、ドレス姿のマキマが男たちの包囲網から必死に逃れようと、こちらへまっしぐらに駆け寄ってきた。

「カイエンーーっ! そこにいるのはカイエンでありますよね!? 助けて欲しいであります!」

 しかし、不慣れなヒールとロングドレスの裾に足を取られ、マキマは盛大にバランスを崩して前のめりに倒れそうになる。

「っと……危ねぇ!」

 すかさず駆け寄ったカイエンは、崩れ落ちる彼女を受け止めるようにすっと足を開いて低く身を沈め、そのまま見事にマキマをひょいと抱き上げた。

 それはまるで、――片膝をついて上半身を預からせる、鮮やかな「しゃがみ込み型のお姫様抱っこ」の姿勢そのものだった。

「ひゃっ……!? す、すみませんであります……この服、歩きにくすぎるであります……!」

 至近距離で顔を真っ赤にしながら胸元にしがみつくマキマを抱え、カイエンは盛大なため息をつきつつも、どこかやれやれと苦笑を浮かべるのだった。


 お姫様抱っこされたマキマをそっと下ろし、ようやくパーティーの喧騒が落ち着き始めた頃――。

 会場の視線を一身に集めるように、大階段の上から凛とした足音が響き渡った。

 振り返ると、そこに立っていたのはアイフェリスだった。普段の戦闘用具ではなく、エルフの伝統的な高位礼装を纏った彼女の姿は、周囲の息を呑ませるほどの気品を放っている。

「皆さま、静粛に。どうか私の声を聞きなさい!」

 アイフェリスの澄んだ声が、広間全体に響きわたる。会場のざわめきがピタリと止まり、すべての貴族や兵士たちが彼女に注目した。

「この度のエルフの里を襲った厄災……その危機は、見事に打ち払われました。過去の因縁や様々な誤解、そして複雑な思惑はありましたが、彼らは命を賭して私たちの民草を守ってくれたのです」

 アイフェリスはまっすぐに前を見据え、その場にいる者たちへ力強く告げる。

「今回の一件を解決へと導いたのは、他でもない――一組の冒険者たちです。人間と、半エルフ、そして最先端の科学を纏う者たちでした」

 その言葉の瞬間、会場のあちこちで「人間と……?」「科学者だと……?」と、どよめきが広がる。戸惑いの声が大きくなる中、前線で実際に戦いを見ていた兵士や若者たちから次々と声が上がった。

「おい、待て……! 確かに俺たちは見たぞ! 帝都から来た連中や彼らが、命を張って俺たちの仲間や里を守っているところをよ……!」

「そうだ……あいつらがいなければ、今頃この里は跡形もなかったはずだ……!」

 肯定的な声が波及し、ざわめきが徐々に納得の色へと変わっていく。その反応を確認したアイフェリスは、さらに声を強めた。

「今回のこの一件で、私たちが抱いていた差別や偏見がいかに愚かで、視野の狭いものだったか……私自身、痛感させられました。我が国の閉鎖的な環境は、ここで終わりです!」

 アイフェリスは胸に手を当て、力強く宣言する。

「これからは、人間との確執を越えた国交を通じて、お互いに手を取り合い、歩み寄っていきましょう……! 新たな未来のために!」

 その言葉の重みと真摯な響きに、わずかな沈黙の後、誰からともなく大きな拍手が巻き起こった。

 はじめはまばらだった拍手は瞬く間に広がり、やがて会場全体を揺るがすほどの温かな喝采と歓声へと変わっていく。

 種族の壁を越え、未来へと繋がる新たな扉が開かれた瞬間だった。

例のごとく、ほのぼの会でございます!次回、戦争編ラストでございます!!お楽しみに!!


ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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また次話でお会いしましょう!

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