EP7 封印の解錠
塔の深部、その門前へと続く回廊には、異様な静寂が満ちていた。
カイエンはハイルの鎧の残骸から剥ぎ取った、蒼く発光する幾何学的な結晶――『アクセス・クリスタル』を手に、巨大な門の制御盤へと歩み寄る。
巨大な門には、帝国の紋章が刻まれていた。
かつてはこの門の向こうで、帝国のエリートたちが優雅な茶会を催し、あるいは世界を統べるための謀議を巡らせていたのだろう。だが今、その場所は「使徒」という汚染の巣窟と化している。
「……ユウナ、後退しろ」
カイエンは門の制御盤にクリスタルを突き刺す。
結晶が深くスロットに沈み込むと、門の周囲に張り巡らされていた防壁が、まるでガラスが砕けるような音を立てて霧散した。
「あんた、本当に何でもこなすのね……。監査員って、そんなことまで習うの?」
ユウナが少し呆れたように、しかしどこか尊敬の眼差しで尋ねる。
カイエンは無表情のまま、門のノブに手をかけた。
「監査員は、世界を正しく回すための『鍵』だ。扉を開けるのは、俺たちの基本業務だよ」
重厚な轟音と共に、門がゆっくりと開いていく。
その向こう側に広がっていたのは、塔の内部だというのに、夜空が浮かぶ広大な空間だった。眼下には雲海が渦巻き、数多の浮遊するプラットフォームが、巨大な歯車のように噛み合って回転している。
そこはまさに、この世界の心臓部。
「これが……塔の心臓部」
ユウナが息を呑む。小柄な彼女の肩越しに、無数の機械と魔法が複雑に混ざり合う光景が映し出された。
カイエンは足元の段差を確かめると、短く告げた。
「ここからは先は、これまでとは密度が違う。使徒の汚染が濃く、敵の個体数も増える。……ユウナ、新調した短銃剣の感触はどうだ?」
ユウナは一度、短銃剣を抜き、その重心を確かめるように空中で円を描いた。
先ほどまであった迷いは消え、彼女の瞳には、これから待ち受ける未知の脅威を「解体」する準備が整っていた。
「バッチリよ。これなら、どんなノイズだって一撃で吹き飛ばせるわ」
「よろしい。……行くぞ。塔を完全に再起動させるまで、俺たちの仕事は終わらない」
二人の影が、光あふれる門の向こう側へと溶け込んでいく。
その背中は、もはや「管理者と駒」というよりも、荒れ狂う嵐に共に立ち向かう「対等な対抗者」のように見えた。
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