EP78 露出する核と、絶望の二次感染
カイエンの渾身の一撃がわずかに届かなかったものの、その刃は確実に怪物の防衛線を抉り取っていた。
――ガァァァァッ……! と、これまでとは異なる、より一層おぞましい悲鳴が「忘れられた神」の幻影から響き渡る。
「……っ! 核の装甲が剥がれた……!」
カイエンが鋭く息を呑む。激しい衝撃によって怪物の胸部を覆っていた外殻が完全に砕け散り、禍々しく脈打つ深紫色の「核」がむき出しになったのだ。
だが、それは勝利を意味していなかった。核が完全に露出した瞬間、怪物は自らの躯体を自壊させるかのようにドロドロの瘴気へと溶解し、周囲一帯へ爆発的にそれを拡散させた。
「なっ……!? これは――ッ!」
アイフェリスが目を見張り、風の障壁を広げようとするが、拡散した瘴気は気流を無視して目に見えない粒子となり、エルフの里の空気を一瞬で汚染し尽くしていく。
直後、前線で奮闘していたエルフの兵士たちが、次々と喉を押さえてその場に崩れ落ちた。
「ぐっ……おぇっ……! 体が……魔力が急速に腐蝕していく……っ!」
「嘘だろ……息が、できない……っ!」
それはかつて王都を襲った、呪いの疫病の再来だった。
そして、その脅威は戦う仲間たちをも容赦なく蝕み始める。
「っ……! くそっ、なんだこれ……体が急に重く……っ!」
ヒナが持っていたナイフを杖代わりに地面に突き立て、膝をついて激しく咳き込む。皮膚の端から禍々しい紫色の斑点が這い上がり、確実に毒素が侵食していた。
「分析中の私のシールドすら透過してくるでありますか……! 魔力回路が……オーバーヒートを起こすであります……っ!」
マキマもまた、強化外骨格の警告音と共にシステムエラーを引き起こし、片膝をついて苦悶の表情を浮かべる。
さらに、アイフェリスさえも聖域の維持が揺らぎ、鮮血のような冷や汗を流しながらよろめいた。
「皆……っ! 疫病が……この街全体に……っ!」
刻一刻と仲間たちの生命力が削られていく。
むき出しになった核が放つ超高濃度の呪詛は容赦なくカイエンの皮膚をも突き抜け、首筋や腕に生々しい「青痣の斑点」を浮かび上がらせていた。それほどまでに今回の感染力は尋常ではなく強烈だった。
「ちっ……!」
カイエンは魔眼を血走らせ、全身を這い回る激痛と腐蝕の毒を気力でねじ伏せながら、剥き出しの核を睨み据えた。
仲間たちが完全に飲み込まれるまでのタイムリミットは、もうわずかしか残されていなかった――。
次回、使徒の幻影解決編です!
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