EP74 療養中のベッド、そして侵略者たち
地下最奥での死闘と竜退治から数日後。
エルフの里にあるアイフェリスの自宅の寝室では、激しい戦闘でのダメージを引きずったカイエンが、ベッドの上で大人しく横になっていた。
「失礼するわよ、カイエン。お薬を持ってきたけれど……」
トレイを手に持って静かにドアを開け、アイフェリスが室内に足を踏み入れる。しかし、次の瞬間、彼女は持っていたトレイを落としそうになり、我が目を疑って絶叫した。
「――っ、何をやっているのよ、貴方たちーっ!?」
なんと、ベッドの上のカイエンを挟むように、マキマとヒナのふたりがすっかりリラックスした様子で両サイドにぴったりと陣取り、気持ちよさそうにスヤスヤと眠っていたのだ。
「ん……ぁ……うるさいなぁ……」
アイフェリスの怒声で目を覚ましたヒナが、面倒くさそうにボサボサの頭を掻きながら、ふあぁと大きな欠伸をする。
「何って、寝てるんだけど。私たち、あの地下で死に物狂いで働いたんだからね! 疲労困憊なのよ、これでも。怪我人には人肌の温もりが一番必要なの、人間もエルフも同じでしょ? 私たちはね、今すごく甘えたい時期なのよ」
「そうだ、そうだであります!」
ヒナの言葉に続くように、マキマがむくりと起き上がり、得意げに胸を張る。
「何がって、こうして人肌でカイエンを温めてるでありますよ! ふふん、冷えは万病の元でありますからね。……どうしたのよ、アイフェリス、そんなに顔を真っ赤にして。そんなに羨ましいなら羨ましいって素直に言うべきであります! さあ、空いてる隙間に一緒に混ざるでありますか?」
「なっ……! 何言ってるのよ貴方たち――っ!!」
アイフェリスは顔をトマトのように真っ赤に染め上げ、信じられないものを見る目で二人を指差した。病人であるはずのカイエンを両側から陣取り、あまつさえベッドの主である自分を挑発してくる厚顔無恥さに、頭から湯気が出そうになる。
「なんだ……外がやけに騒がしいと思ったら……。何をしてるんだ、お前たち……」
ガチャリ、と重苦しい空気の中、両サイドを挟まれて身動きが取れなくなっていたカイエンが、だるそうに起き上がりながら額を押さえた。
自分の両脇でけろりとしている問題児二人を一瞥し、心底うんざりしたような深い溜息を吐くのだった。
「なんだ……外がやけに騒がしいと思ったら……。何をしてるんだ、お前たち……」
両サイドを挟まれて身動きが取れなくなっていたカイエンが、だるそうに上半身を起こしながら額を押さえた。自分の両脇でけろりとしている問題児二人を一瞥し、心底うんざりしたような深い溜息を吐く。
「なによカイエン、その冷たい目は! せっかく慈悲深い私たちが添い寝をしてあげてるっていうのに!」
「そうであります! ベッドの上で動けない病人への配慮、優しさの極みでありますよ!」
「うるさい、どけ。重い」
カイエンに冷たく払いのけられ、マキマとヒナは「つれないでありますねぇ」「せっかくの好意が台無しね」と軽口を叩きながらも、ようやくのっそりとベッドから這い出した。
「もう……! 病人のカイエンに何てことするのよ、全く……!」
アイフェリスは赤らめた顔を誤魔化すように慌ててトレイをサイドテーブルに置き、カイエンの体温や包帯の状態をテキパキと確認し始める。その手つきはどこか優しく、先ほどの騒動が嘘のように部屋の空気が少しだけ甘く落ち着いた。
――だが、その平穏は、あまりにも唐突に、そして暴力的に破り捨てられることになる。
ドンッ……! と、里全体を揺るがすような重苦しい地響きが遠くから響いた。
直後、エルフの里を、そして海を隔てた帝都の方角までもが――。
――ゴォン……ゴォン……ッ!!
すべてを切り裂くような、聞いたこともない不吉な非常事態を知らせる警報の鐘が、休む間もなく鳴り響き始めたのだ。
「っ……!? この鐘は……!」
アイフェリスが表情を凍りつかせ、窓の外へと視線を走らせる。
帝都の方向の空が、あり得ないほどの禍々しい紫色のノイズと異常な黒煙に染まり始めていた。元老院の残党たちが仕掛けた、王都での疫病の再爆発――それは、最悪の形で牙を
こういう合間のほのぼの会よだれが出るほど好きですわ・・・
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