EP55 焚き火の温もりと、遠い日の残影
夜のとばりが降り、砂漠の荒野に冷たい風が吹き抜ける中、俺たちは焚き火を囲んで野宿の準備を整えていた。
パチパチと燃え盛る炎の傍らで、マキマは先ほどから頭を抱えていた。目の前には、火花を散らしたまま動かなくなった自作のファンネルが転がっている。
「くっ……! ここをこう繋ぐと回路がショートするであります……どうして思い通りに動かないでありますか!」
イライラとボサボサの髪を掻きむしるマキマを見かねて、俺は腰を上げると彼女の隣にしゃがみ込んだ。
「貸してみろ」
「え? いや、でもこれ、わたすの特製の……って、わわっ!」
俺が手際よく電子砲のカバーを外し、内部の配線と魔力回路の干渉部分を魔眼で見極めながら微調整していくと、マキマは驚いたように目を丸くした。ほんの一分も経たないうちに、火花が散っていたファンネルはピタリと静まり、再び軽快な駆動音を立てて浮遊し始めた。
マキマは感嘆のため息を漏らし、まじまじと俺の顔を見た。
「……すごい手際でありますね。わたすほどではないですが、なかなかのいい腕であります!」
「あぁ。少し調整は得意なんだよ。友人がお前みたいなメカニックだったしな」
俺の言葉に、マキマはふっと表情を和らげ、どこか懐かしむような、しかし誇らしげな笑みを浮かべた。
「そうなんでありますね〜。実はわたすも、ずっと尊敬していたメカニックがいたであります!」
彼女は両手を膝に置き、熱を帯びた声で語り始めた。
「帝国では一番と言われていたのでありますよ! 『マヤ』様っていうんですが、彼の方は100年前の有名な伝説のメカニックに匹敵する技術者といわれてたのでありますよ!」
「…………」
その名を聞いた瞬間、俺の胸の奥で微かに波紋が広がった。
(――マヤ、か)
懐かしい記憶の断片が脳裏をかすめる。俺は表情に出さないよう意識しながら、わずかに口元を緩めて微笑んだ。
「そうか。そんなに凄い奴なんだな」
「すごいなんてもんじゃないであります! わたすみたいな魔力適性がない者の希望であります!」
マキマは興奮のあまり鼻息を荒くし、両こぶしを握りしめた。
「でも、あの方は優しいでありますからね。帝国を出ていった今頃は、きっとどこかで誰かのためになるものを作ってるであります!」
彼女の瞳には、かつての上司であり恩人であるマヤへの純粋な敬愛と信頼が満ちていた。帝国軍という冷酷な組織にありながら、マキマにとってマヤの背中は確かな光だったのだろう。
カイエンは焚き火の炎に視線を落とし、静かに呟いた。
「……そうだな」
夜は更けていく…
ほのぼの会です。
マヤとの思い出いずれ明らかとなります!
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