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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
アクアマリン編

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EP49 地下からの呼び声

神殿の瓦礫が取り除かれ、かつての静寂が少しずつ「祈りの場」としてのそれを取り戻し始めていた。ディーヴァが消滅してから数日。リリアは箒を手に、神殿の床にこびりついた真珠の破片を丁寧に掃き集めていた。

 その傍らで、カイエンは壁に寄りかかり、神殿の構造を観察していた。

(……ディーヴァは、間違いなく恐ろしい強さだった。だが、あの程度の質量で収まっていたのは、この世界への転移による弱体化が理由か)

 魔剣の柄に指をかけ、カイエンは思考を巡らせる。

(だとしても、人ならざる存在を真っ向から撃ち破れるとはな。……このメンバー、あるいはリリアという個体そのものに、俺がまだ読み切れていない因子があるのか?)

 カイエンが深く溜息をつき、自身の魔眼の疲労を拭おうとしたその時、神殿の入り口から弾むような足音が聞こえてきた。

「カイエン様! ……少し休憩にしましょう。お昼ご飯を用意しましたわ!」

 リリアが明るい声で呼びかける。彼女の背後には、ジンが運んできた食料と、ガザムが準備した簡素な机がある。少しずつ、この場所が「日常」の空間へと戻りつつあった。

 カイエンが歩み寄ろうと足を動かした――その瞬間だった。

 ゴォォォォォッ……!!

 重低音が、足元の石畳を突き上げてきた。

 神殿全体が揺れ、掃き集めた真珠の破片が跳ねる。地震とは明らかに違う、意思を持ったような「胎動」が、深層から伝わってくる。

「……ッ!? 地響き……?」

 リリアがバランスを崩し、カイエンが反射的に彼女の肩を支える。

 揺れは一瞬で収まったが、代わりに神殿の空気の中に、形容しがたい「腐敗した怨嗟の気配」が混じり込んだ。

 一方、神殿の真下――『血の処刑場』。

 壁面に施された禁忌の術式が、深紅の光を放って脈動している。

 大司教ヴォルクハルトは、足元を伝う震動を感じ取り、ひび割れた唇を歪な笑みへと変えた。

「来たか……。私の復讐を奪った『無礼者』たちよ」

 彼の周囲では、禁術で無理やり縫い合わされた肉の塊たちが、カタカタと音を立てて覚醒している。

 ヴォルクハルトの手には、リリアたちが浄化したはずの場所から吸い上げた「残滓の塊」が握られていた。

「ディーヴァを殺したならば、その分厚い命を代わりにもらう。……お前たちの絶望こそが、私の新たな復讐のえさだ」

 ヴォルクハルトが祭壇に血を滴らせると、神殿の床が薄く光り、一行の足元に黒い魔法陣が浮かび上がる。

 それは、彼らを地獄の底へと引きずり下ろすための、悪意ある招待状だった。

「リリア、離れろ……!」

 カイエンが魔剣を抜き放つより早く、神殿の床が口を開き、2人を深淵へと飲み込んでいく。平和な午後の休息は、絶望の序曲によってかき消された。

束の間の平和なランチタイムを切り裂くように、復讐に狂う大司教ヴォルクハルトの奇襲が幕を開けました!

ディーヴァの死に絶望していたはずの彼が、リリアたちの足元を突いてまさかの地下深層への強制拉致――。禁術によって生み出された「肉の塊」や、歪んだ執念の牙が、再びパーティの前に立ち塞がります。

不意打ちを受けたカイエンたちは、この悪意に満ちた地下の処刑場でどう立ち回るのでしょうか?

そして、狂気の復讐鬼と化したヴォルクハルトの猛攻を前に、リリアが手にしたハープは何か奇跡を起こすことができるのか……?



ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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また次話でお会いしましょう!

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