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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
アクアマリン編

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EP36 聖典の裂け目

遺跡の深層へと続く通路には、異様な光景が広がっていた。

本来であれば祈りの場であるはずの遺跡を、教団の武装兵たちが徘徊している。彼らは教団の法衣を纏いつつ、手には冷酷な金属の楔鎌くさびがまや、魔力を練り込んだ無骨な銃器を握りしめていた。

「おいおい、冗談だろ……? 神に仕える連中が、なんでこんな殺傷能力全開の武器を持ってやがるんだ」

ジルが銃撃を遮蔽物でやり過ごしながら、悪態をつく。

先ほど倒した山姥の群れに加え、武装した教徒たちの連携攻撃が一行を追い詰める。

「祈りによって魂を救うのが、彼らの教義のはず……。なぜ、信徒を護るのではなく、これほどまでに『殺す』ための術を……」

ガザムが盾で楔鎌の連撃を受け止めながら、痛ましげに呻いた。

リリアは銃弾が飛び交う中、かつて学んだはずの教義と、目の前の惨状の乖離に言葉を失っている。

「……信じられない。聖典には、暴力は最も遠い場所にあると書かれていたわ。……こんなの、私が知っている教団じゃない」

カイエンは魔剣で銃弾を弾き飛ばし、最短距離で教徒の懐へ飛び込んだ。

教徒が銃口を突きつけるより早く、冷徹な一撃が彼らの武装を叩き折る。

「教義など、支配のための飾りだ。信徒を縛り、盲信させるためのな。……だが、こいつらは少し違う。魂が抜き取られ、純粋な『殺戮マシーン』として再構築されている」

カイエンは倒した教徒の装備を確認し、眉をひそめた。

「銃の機構に、教団の紋章が刻印されている。……どうやら、上の階層で『聖典』を素材に兵器を鋳造しているらしい」

「聖典を……素材に?」

リリアの震える声に、カイエンは振り返らずに告げた。

「ああ。聖なる言葉が刻まれた紙や布を、生贄の血で練り固めて金属にする。……救いの言葉が、人を殺す弾丸に変わるわけだ。皮肉なものだな」

彼らが辿り着いた最奥の間には、その狂気の結実が鎮座していた。

高さ5メートルはある巨大な天使の像。

しかし、その翼は紙幣のように重なった何千枚もの聖典の金属板で構成され、胸には巨大な懺悔の鏡が嵌め込まれている。

『断罪の守護者ジャッジメント・ゴーレム』。

兵器が起動し、聖典の板で構成された翼が重苦しい音を立てて広がる。

胸の鏡が不気味な鈍色に輝き、一行の姿を映し出した。

「リリア、後ろへ下がれ! ……来るぞ!」

鏡から溢れ出したのは光ではなく、リリアが隠してきた「教団への疑念」や「見捨てた人々への罪悪感」を具現化した黒い影だった。

鏡に映る自分たちの姿が、先ほど倒した教徒たちと同じ、狂気に染まった顔に歪んでいく。

リリアが鏡に映った自分の虚像を見て、悲鳴を上げる。

「これは……私? こんなの……こんな兵器なんて、記録のどこにも載っていないわ!」

カイエンは魔剣を構え、その禍々しい鏡を見据える。

「記録にあるわけがない。これは教団が隠蔽してきた『歴史の死体』だ。……リリア、自分の闇から目を逸らすな。その鏡を割れば、この兵器の『心臓』は露わになる」

かつての信仰が、最強の敵として立ちはだかる。

リリアは震えながらも、カイエンの背中を見て、小さく頷いた。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

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また次話でお会いしましょう!

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