EP33 断ち切れぬ輪廻
カイエンの神速の抜刀は、アズールの仮面を正確に捉え、その顔を深々と切り裂いた。
傷口から溢れ出したのは鮮血ではなく、おぞましい真珠色の粘液だった。粘液は意思を持つかのように蠢き、裂けた皮膚と仮面を瞬時に縫い合わせ、再生させていく。
「無駄ですよ、監視員さん。私たち『調律者』は、聖域の泉と一つ。この肉体は、ディーバ様の御力によって何度でも再生する」
アズールが仮面の奥で嗤い、無数のナイフを放つ。カルネもまた、血のような粉末を撒き散らしながら嘲笑った。
「そう、何度でも蘇るわ。この島こそが、永遠の楽園なのよ」
絶望的な光景に、ジルがボウガンを握る手に力を込める。だが、カイエンはその冷徹な瞳を細め、双子の背後に伸びる「見えない繋がり」を視認していた。
「……なるほど。再生するたびに、お前たちの身体の『核』が、この神殿の触手からわずかに離れている」
カイエンの魔剣から、使徒の力を無効化する黒い波動が迸る。
「俺が斬りつけるのは肉体じゃない。『お前たちの魂がこの聖域に繋がれている、その細い糸』だ」
カイエンが一歩踏み出し、神速で空間を薙いだ。
アズールの背後から壁へと伸びる、無数の光る糸が断ち切られる。その瞬間、再生の理は崩壊した。アズールとカルネの身体は音を立てて萎み、仮面の下からは干からびたミイラのような素顔が露わになる。
「あ……あぁ……バカな……!? 私の……聖域が……力が……!」
断末魔と共に、二人の司祭は塵となって崩れ去った。神殿の不気味な胎動が止まり、静寂が訪れる。
ジルが荒い息を吐きながら銃を下ろしたとき、ガザムが一人、その灰の傍らに膝をついた。彼は深く目を閉じ、静かに手を合わせる。
「……主よ、迷える子羊に救いを。彼らの中にあったはずの、本来の人の心に安らぎを……」
ジルはその姿を見て、眉間に深い皺を寄せた。
「おい、ガザム! 正気か!? 今しがたまで俺たちを殺そうとしていた教団の連中だぞ! なんでそんな奴らに……!」
ガザムは祈りを止めることなく、静かに応じた。
「……彼らは道具として使い潰されただけの犠牲者です。死してなお、その魂まで汚れに縛られていては救いがありません。たとえ敵であっても、最期に安らぎを願うのが、私の……」
「偽善だ!」
ジルは激昂し、床を蹴った。
「そんな甘いことを言ってるから、俺たちはいつまでも戦いから抜け出せないんだ!」
二人の言い争いを遮るように、カイエンの冷たい声が響く。彼は崩れ落ちた司祭たちの残骸を冷ややかな目で見下ろし、淡々と言い放った。
「さて、第一階層の『整理』は完了だ。……だが、これはまだ序の口に過ぎない。この島に巣食う使徒のネットワークを根絶やしにするには、さらに深層へ潜る必要がある」
カイエンは神殿の出口、さらなる暗闇が広がる奥へと歩き出した。
「次の階層に行くぞ。――足手まといになるなよ」
お読みいただきありがとうございます! 作者のシャロンです。
いかがでしたでしょうか? 双子の司祭「カルネ」と「アズール」の絶望的な再生能力を、カイエンが「魂の糸」を断つことで鮮やかに攻略するバトル回となりました! 容赦ないカイエンの戦い方と、ガザムの騎士道精神、それに反発するジルのリアルな衝突というパーティ内の人間模様も熱いポイントですね。
そして、ついに明かされた「この島こそが、永遠の楽園なのよ」という不穏な真実……。第一階層を突破した彼らを待ち受ける、さらなる深層の闇とは――!?
「カイエンさんの『糸を断つ』戦い方スマートすぎて惚れる」「ガザムとジルの思想の衝突、これからの亀裂が心配……」「『足手まといになるなよ』の主人公感よ!」などなど、今回のバトルの感想や、今後の展開についての考察などをぜひコメント欄で教えていただけると、作者のモチベーションが限界突破します!
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それではまた、次回の更新でお会いしましょう!




