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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
アクアマリン編

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EP29 肉の祭壇

神殿に、湿った肉が叩きつけられるような音が響き渡る。

カイエンは襲い来る狂信者の一人の懐に飛び込むと、魔剣を一閃させた。銀光が走り、信者の腕が肩口から鮮やかに切断される。だが、腕を失った男は苦悶の声を上げるどころか、断面から溢れ出す真珠色の粘液を撒き散らしながら、折れた骨を突き出してなおも噛み付こうとしてきた。

「化け物め!」

ガザムが渾身の力で大盾を振るう。鈍い音が神殿にこだまし、正面から殴打された狂信者の上半身はありえない角度にひしゃげた。肋骨が砕け、内臓が押し潰されたのが明らかに見て取れる。だが、それでも奴は首を不自然にねじり、ガザムの足元を這いずって食らいつこうとしていた。

「――っ、嘘だろ!? あれで動くのかよ!」

ジルが背後からボウガンのトリガーを引き続け、奴らの眉間を正確に撃ち抜く。しかし、弾丸を脳に食らっても、奴らは糸に操られる人形のように、痙攣しながら再び起き上がろうとする。

ジルは苛立ちと恐怖の混じった声を上げた。

「おい、どうなってるのよ!? 心臓も頭も潰したんだぞ! なんでまだ動いてんだよ、こいつら!」

カイエンは冷徹に剣を構え直す。その瞳が、敵の動きの「淀み」をスキャンするように鋭く光った。彼は信者たちの背後に見える、壁面から伸びる無数の粘液質の触手に目を向ける。

「……なるほど。分析完了だ」

カイエンは周囲を見渡し、狂信者たちの動きを整理するように呟いた。

「『肉体を動かすための神経系が、既に肉体から切り離されている』。こいつらは個体として動いているんじゃない。壁から伸びるあの触手が、脊髄に直接入り込んで『外側』から操っているんだ。……だから脳を破壊しても、心臓を止めても意味がない」

カイエンは不敵に唇の端を歪め、いつもの口癖を吐き出した。

「さて、不要なパーツは『整理』しようか。……まずは、その動力を繋いでいる神経ケーブルからだ」

カイエンは信者の腹部を剣の柄で打ち据え、隙を作ると、そのまま背後の壁から伸びる粘液質の触手を袈裟懸けに両断した。

触手が切り落とされた瞬間、狂信者の体から急速に熱が消え、まるで命を抜かれた操り人形のように、その場に崩れ落ちた。

「ガザム、ジル! 肉体を壊すな、壁から伸びる触手を狙え! 奴らはあくまで『端末』だ!」

「合点承知!」

ガザムが大盾を叩きつけ、ジルが冷徹な一射で壁に這う触手の根本を射抜く。

ようやく、神殿を埋め尽くしていた「狂気の軍勢」が沈黙を始めた。

朗読ありがとあございます。

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