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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
アクアマリン編

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EP28 静寂の食卓

船がテラ・ガラパゴスの浅瀬に接岸した。

一行は神殿の入り口へと足を踏み入れたが、そこには予想を裏切る光景が広がっていた。

かつて数千の信者で溢れていたはずの回廊は、奇妙なまでに静まり返っていた。壁面を這う蔦は異常な速度で成長し、石畳の隙間から溢れ出した緑が神殿を飲み込もうとしている。神聖なはずの石柱には、まるで心臓のようにドクン、ドクンと脈打つ真珠色の粘液が纏わりつき、そこから放たれる微かな発光が、薄暗い空間を死体のような色に染め上げていた。

カイエンは剣の柄に手をかけたまま、眉をひそめた。

「……静かすぎる。島の外まで響いていた歌声が、ここへ来て急に途絶えた」

「ええ……。まるで、何かに息を殺して見つめられているようです」

ジルがボウガンを構え、周囲を警戒する。ガザムもまた、盾を半身に構えて周囲の影を睨んだ。だが、その中でリリアだけが、どこか様子がおかしかった。

彼女は、神殿の中央に据えられた祭壇を見つめたまま、ふらりとその場所へ近づいていく。その足取りは、まるで見えない糸に操られているかのように真っ直ぐで、生気がない。

「リリア、待て!」

ガザムが呼び止めるが、彼女は振り返らない。

リリアの瞳は、祭壇から溢れ出す真珠色の光を反射して、空虚に濁り始めていた。彼女の手が、祭壇に置かれた「何か」に触れようとした、その時――。

「あぁ……神が……歌が……聞こえる……」

彼女がうわ言のように呟いた瞬間、カイエンが鋭く叫んだ。

「リリア、下がれ!」

カイエンが咄嗟にリリアの襟首を掴んで引き戻した。

途端に、神殿の奥から凄まじい叫び声が響き渡る。

「シンニュウシャァァァァァァッ!!」

影の中から飛び出してきたのは、かつての信者たちだった。しかし、彼らの面影は残っていない。顔面は真珠の結晶で覆われ、剥き出しの狂気を宿した瞳で、錆びついたナイフを振りかざして襲いかかってくる。

「くそっ、待ち伏せか!」

ジルが放ったボウガンの矢が、先頭の狂信者の肩を貫くが、奴は痛みも感じない様子で、そのまま肉薄してくる。

「皆、散開しろ! リリアを庇え!」

ガザムが盾を叩きつけ、聖なる波動で狂信者たちの動きを強制的に止める。

「神聖な場所を、このような愚かな凶刃で汚すか! ……カイエン、リリアを頼む!」

カイエンは引き戻したリリアを背に隠し、冷徹な殺意を宿した剣を抜く。

静寂は終わりを告げ、神殿は再び、狂気と鉄の交錯する戦場へと変貌し

朗読ありがとあございます。

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