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灰の監視員(レギュレーター・アイ)  作者: シャロン=ミ


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19/24

EP18 死の沈黙と、残された変数

帝国第9特殊部隊――通称『黒鵺くろぬえ』。

全身を漆黒のタクティカルギアと防毒マスクで覆い、素顔はおろか、その瞳の奥にある人間味すら一切の光を遮断する部隊だ。

彼らは戦場に現れるのではない。死の事後処理を完了させるために「配置」されるのだ。

崩れ落ちた塔の残骸の前で、小隊長ハヌスは無機質なゴーグルの奥から、瓦礫の山を冷静にスキャンしていた。

「……停止を確認。塔の全機能が消失している」

ハヌスの低い、電子変調された声が響く。周囲を固める隊員たちは、一言も発することなく、それぞれの担当範囲へ散開し、瓦礫の隙間に埋もれたソラリスの残骸を探り当てていく。

「小隊長、異常事態です。……塔の守護者、ソラリスのバイタルサインが完全消去されました」

隊員の一人が、端末に表示された真っ赤な警告ログを見せながら報告する。

「……何だと? あのソラリスが、一方的に処理されたというのか」

ハヌスは、かつて神聖な威容を誇ったはずの塔の頂を見上げた。そこにはもう、眩い光の奔流など存在しない。ただ虚しい残骸の山が、夜の帳の中で崩れ去るのを待っているだけだった。

「これほどの規模だ。帝国軍の別働隊が動いたわけでもない。……いったい、誰が止めたんだ?」

「調査データによれば、塔の内部から急激な魔力の異常上昇が……それも、一人ではなく、数名の微弱な個体反応から、一瞬で莫大なエネルギーが放射された痕跡があります」

「……まさか。例の『監査官』の裏切り者か? だが、あれを倒すには、一介の監査員には荷が重すぎるはずだ」

ハヌスは手にしていたコンバットナイフを鞘に戻すと、崩れた瓦礫の中から、折れ曲がった小さな黄金の破片を拾い上げた。かつて『光の城主』の核であった、哀れな欠片だ。

「……調査員、何か見落としは?」

「いえ、戦闘の痕跡は極めて特殊です。……まるで、神の領域の演算を、人間の泥臭い『意志』だけでねじ伏せたような……そんな、非効率極まりない爪痕が残っています」

ハヌスはふっと、マスク越しに冷笑を漏らした。

「泥臭い、か。……不確定要素だな。帝国が最も嫌う、排除すべき『バグ』が動き出したということだ」

彼は拾い上げた破片を乱暴に握りつぶし、闇夜へ投げ捨てる。

「黒鵺、撤収する。……今回の事案、全て『塔の自壊』として記録しろ。ただし、裏切り者たちの追跡リストは最優先プライオリティ・ワンに引き上げろ」

漆黒の影たちが、音もなく夜の帳へと消えていく。彼らが去った後には、ドラゴが遺した最後の戦いの熱量も、カイエンたちが流した涙も、すべて冷酷なデータの海に飲み込まれていった。

だが、帝国はまだ気づいていない。

この日、彼らが軽んじた「不確定要素」たちが、いずれこの巨大な牙城そのものを食い破る存在になるということを。

本日も『灰の監視員』をお読みいただき、本当にありがとうございました!


塔の崩壊後、事後処理のために現れた帝国第9特殊部隊『黒鵺』。彼らの冷徹な視線を通じて、カイエンたちが残した爪痕と、これからの過酷な戦いを予感させるエピローグとしました。


実は今回登場した部隊やハヌスには、ある大好きなゲームシリーズのキャラクターをイメージした隠し要素を込めていました。気づいた方は、ぜひコメント欄でこっそり教えていただけると嬉しいです!


これにて、第一部「天の塔編」は完結となります。

カイエンたちの旅は、ここから「反逆」という名の新たなステージへ突入します。塔という閉鎖空間から解き放たれた彼らが、広大な世界でどう動き、どう抗っていくのか。ぜひ引き続き見守っていただけると嬉しいです!


更新スケジュールは引き続き以下の通りです!

平日:毎日20時更新

土日:20時・21時の2話連続更新

です!次回は空の柱過去編となります!

ややボリュームがある3遍となります!お楽しみに!

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