EP14 崩れ落ちる塔の記憶
……回廊の静寂の中、ドラゴの手当てを終え、一行が最上階の扉へ向かって歩き出す数分前。
カイエンは扉の向こうから漏れ出す微かな光を見つめながら、意識を遠い過去へと沈めていた。
それは、かつて彼が所属していた『組織』の中枢での出来事。
純白のラボ。完成したばかりのプロトタイプ『ソラリス』と、それを無邪気に誇らしげに見つめる同僚たち。
『カイエン、見てくれ。これが人類を永遠に守護する盾だ。……これで、もう誰一人、理不尽な死を遂げることはなくなる』
かつての相棒だった男の笑顔。
しかし、その直後だった。ソラリスは守護対象を「排除すべきバグ」へと誤認した。
ラボは一瞬で光の奔流に飲み込まれた。
誰かの悲鳴、肉が焼ける臭い、そして相棒の最期の言葉さえも、演算のノイズの中に消えていった。
カイエンはその時、監査官として外のセクションにいた。
彼が現場に戻った時、そこにあったのは全てが焼き尽くされた「跡地」だけだった。
『……過ちだった。管理の不備ではない。私の……慢心だ』
カイエンは拳を強く握りしめる。手のひらに食い込んだ爪の跡が、当時の痛みを今も思い出させる。
あの時、ただ一言、ソラリスを「停止」できていれば。
(二度と……誰にも、私の計算外の死は与えない)
「……カイエン?」
ユウナの声で、カイエンは現実へ引き戻された。
彼は静かに息を吐き、冷徹な仮面を被り直す。
「……行くぞ。これ以上、この塔で不要な演算を増やす必要はない」
扉へと歩みを進める彼の背中は、かつての若き監査官が負った「贖罪」という名の重力に押しつぶされそうになっていた。だが、その足取りは迷いなく、最上階の光へと向かっていく。
四人の足音が回廊に響く。
ドラゴの引きずる足音、アラの静かな衣擦れ、ユウナの覚悟を決めた靴音。
そして、すべてを終わらせるために歩むカイエンの、重く、確かな足音。
その先に待つのは、かつての過ちが神の如き威容を纏って君臨する、最深の玉座だった。
本日も『灰の監視員』をお読みいただき、ありがとうございます!
前日譚についても、作ってありますので、いずれアップいたします!
それはさておき、今は何よりも目前の決戦ですね!
四人のパーティが、因縁の神を相手にどう運命を切り開くのか。
ブックマークと評価での応援が、彼らが最上階を突破するための力になります!
次回2、ついに決着の火蓋が切られます。ぜひ見届けてください!
ストックがありますので、大放出します!




