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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
工都ギアフォージ・レース編

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EP130話 新たなる目的地と、それぞれの旅立ち

やかな宴の余韻が残る謁見の間。 一通りの褒美の話が落ち着いたところで、マキマがポンと自分の手のひらを叩き、目を輝かせてカイエンに向き直った。


「そういえばカイエン、ドワーフの工都ギアフォージって知ってるでありますか?」


「ギアフォージ……? ドワーフの技師が集まる、あの鉱山都市か」


「そうであります! メカニックなら一度は行く聖地中の聖地でありますよ!」


マキマは腕を組み、鼻を高くして熱弁を振るい始めた。


「あそこには、今回いただいたオリハルコンの超高度加工技術はもちろん、未知の古代機械、さらには旧帝国時代の秘蔵設計図まで眠っていると言われているであります! 世界最高峰の鍛冶師や技術屋がしのぎを削る、ロマンの塊みたいな街なのであります!」


マキマの興奮気味な説明に、カイエンは小さく頷き、腰の魔剣の柄にそっと手を触れた。


「なるほどな……。世界最高峰の技術と古代資料があるなら、この魔剣の構造や、俺の体に起きている『侵食』について何かわかるかもしれないな」


「でありますろ? 行く価値は大ありであります!」


カイエンにとって、それは次の目的地を決める十分な理由だった。あくまで技術屋の聖地への“旅行”という名目ではあったが、手掛かりを求める旅路としては申し分ない。


だが――。


「……ふむ」


それまで静かに話を聞いていたエルフの女王が、ふっと表情を引き締めた。


工都ギアフォージか。……実はカイエンよ、ちょうどその街から、我が国へ一枚の極秘援助要請が届いておるのだ」


女王は傍らの従者から受け取った一書の羊皮紙を、カイエンへと差し出した。 空気が一変する。カイエンが手紙を受け取り、目を通すと、そこには不穏な報告が書き連ねられていた。


「最近、工都の地下にある魔導機関が相次いで原因不明の暴走を起こしておる。街中でレース事故が多発し、技師や住民の行方不明者も後を絶たん。さらに……厳重に保管されていた『帝国製アーティファクト』の盗難事件まで起きておるそうだ」


「帝国のアーティファクト、だと……?」


カイエンの瞳の奥で、鋭い光が宿る。使徒や世界のバグに関わる何者かが、裏で糸を引いている気配が濃厚だった。


「その要請書によれば」と、女王は続ける。


「現在、工都では一年に一度開催される『魔導機関レース』の準備が進められておる。そして、そのレースの優勝者には――公認工房への無制限の立ち入り権、国家級ライセンス、さらには地下深くに眠る『古代資料の閲覧権』が与えられるのだ」


「なるほど……」


カイエンは手紙を折りたたみ、静かに胸に収めた。


「事件の真相を探るにも、俺たちが求める古代資料にアクセスするにも、そのレースに参加して勝ち取るのが一番手っ取り早いということか」


「そういうことでありますな! 情報収集のためには、参加するしかないであります!」


目的地と目的が完全に一致した。工都ギアフォージ――それが、カイエンの次なる目的地に決まった。



決意を新たにしたカイエンたちだったが、ここへ来て旅の同行者たちに、それぞれの「役割」と「選択」の時が訪れていた。


「……せっかく行くのでありますが」


マキマが少しだけ寂しそうに、だが晴れやかな笑顔でカイエンを見上げた。


「わたすは一度、自分の国に帰らなければならないであります。今回もらったオリハルコンやドワーフ鋼を使って、研究を進めなきゃならないでありますからね。工都のレースの感想は、次に会った時に聞かせてほしいであります!」


「そうか。お前には何度も助けられた。感謝している」


「ふふん、任せるであります! ……それとカイエン。わたすはあまり迷信的なことは信じないのでありますが……カイエンとは、また絶対に会えると思うでありますよ。いずれ……『そらの国』で」


「……天の国?」


聞き慣れない言葉にカイエンが首を傾げると、マキマは慌てて両手を振り、顔を赤くしてごまかした。


「な、なんでもないでありますよ! わたすの独り言であります!」


「寂しいけど、一生の別れじゃないもんね!」


次に声を上げたのはヒナだった。彼女はエルフの国の「隠密部隊隊長」としての重責を引き受けることを決めていた。半エルフとエルフの架け橋となるため、この地に残るのだ。


「また私が必要になったら呼んでよ! どこにいたって、すぐ駆けつけるからさ!」


「あぁ」


カイエンはヒナの頭にそっと手を置き、優しく撫でた。


「この過酷な旅路で、お前が一番成長したよ。……元気にやるんだぞ、ヒナ」


「カイエン……うん!」


ヒナは嬉しそうに目を細めると、カイエンの衣の袖をくいっと引っ張った。 そして背伸びをすると、周りの誰も見ていない一瞬の隙を突いて――カイエンの頬に、ちゅっと小さく唇を重ねた。


「っ……」


「えへへ……秘密ね」


真っ赤になった顔で悪戯っぽく笑うヒナ。


それを見ていたアイフェリスが、少し離れた場所からコンコンと杖の突き棒を鳴らし、澄ました顔で歩み寄ってきた。


「……まったく。女王様の冗談を真に受けないでくださいね、カイエン。私とあなたの婚約だなんて、政治的な戯言に過ぎないのですから」


アイフェリスはそう強がりながらも、その耳の先端はほんのりと赤く染まっていた。


カイエンはくすりと笑い、彼女に向かって右手を差し出した。


「あぁ、分かっている。だがアイフェリス……お前なら必ず、エルフと人間の本当の架け橋になれるさ」


「……フン、当然です。私はエルフの守護者ですから」


アイフェリスは少し誇らしげに顎を上げると、差し出されたカイエンの手をしっかりと握り返した。


その光景を見たヒナが、ニヤニヤしながら横から口を挟む。


「なーんだ、アイフェリス! チューくらいしちゃえばいいのに〜!」


「今日くらいは許すでありますよ〜! 正妻の余裕を見せるチャンスであります!」


マキマまで乗っかって茶化すと、アイフェリスの顔は一瞬でリンゴのように真っ赤に跳ね上がった。


「なっ……!? な、なにを言っているのですか、あなたたちはーっ!? 変な茶々を入れないでくださいっ!」


慌てふためいて杖を振り回すアイフェリスの怒声と、ヒナとマキマのキャッキャと弾ける笑い声が、謁見の間に賑やかに響き渡る。


別れは寂しい。だが、そこに悲壮感はなかった。 仲間たちはそれぞれの道で自らの未来を切り拓き、カイエンは世界の歪みを正すために再び歩み出す。


絆は断ち切られない。 それぞれの想いを胸に、カイエンは一人、工都ギアフォージを目指して、清々しい風の中へと旅立っていった。

新たな旅立ちですね!次は趣を変えたEPでございます!

私の傾向として、やっているゲームと見ているアニメに影響を受けやすいというのはあります。


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