EP12 閑話休題:休息と傷跡
重力が正常化した回廊の一角。四人は最低限の休息をとっていた。
ドラゴの右腕はアラの魔術的な応急処置でかろうじて止血されていたが、その火傷は深く、かつての帝国軍人としての逞しい身体に痛々しい爪痕を残していた。
「……悪いな。俺のせいで、お前たちまで足を止めることになった」
ドラゴが自嘲気味に笑う。それに対し、ユウナは持参した水筒を差し出しながら首を振った。
「……バカ言わないで。あんたがいなかったら、今頃私たちは全員、黄金の破片になってたわ。……今の『変数』は、あんたの勇気よ」
「はっ、小生意気なこと言うね」
アラは静かにドラゴの包帯を巻き直していた。彼女の豊満な肢体が、治療の際にドラゴの無骨な筋肉に触れる。その対照的な距離感に、張り詰めていた空気が少しだけ緩んだ。
「……あんた、自分を削って何を守りたかったの? 塔のシステムなんて、所詮は演算の産物よ」
アラの問いに、ドラゴは天井(かつての床)を仰いだ。
「守りたかったわけじゃないさ。ただ……軍にいた頃、俺の実験で傷ついた部下たちを、何一つ『直せなかった』んだ。……今回も同じ失敗をするのは、御免だっただけさ」
ドラゴの告白に、場が静まり返る。
カイエンは少し離れた場所で、魔剣の手入れをしながらそのやり取りを聞いていた。彼の背中は、四人の中で最も硬く、そして最も孤独に見えた。
ユウナはそっとカイエンに近づくと、小さく声をかける。
「……カイエン。あんたも何か、背負ってるの?」
カイエンは動きを止めた。剣を鞘に納める音が、回廊に冷たく響く。
「……休息は終わりだ。準備をしろ」
彼はユウナの問いには答えず、ただ最上階へと繋がる巨大な扉を見つめていた。その瞳には、これから対峙する『ホスト』への憤怒と、それ以上に深い哀切が混じり合っている。
本日もお読みいただきありがとうございます。
激戦の後の、少し穏やかな時間をお届けしました。四人の距離感が少しずつ変わっていく様子を、楽しんでいただけていれば幸いです。
次回からは、いよいよ塔の最上階へ至る最終局面へ突入します。
閑話で英気を養った彼らが、最後の大仕事にどう挑むのか……。ぜひお見逃しなく!ストックが溜まってるので一挙放出します!
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