↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
王墓編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

125/145

EP125 最後の王国(ラスト・キングダム)

「ル……ガァァァァァァッ!!」


『終焉の咆哮』が遺跡の天井と封印陣を粉々に砕き割った直後。 終焉王の胸にある赤黒い結晶が、かつてない眩い光を放ち、周囲の理を暴力的に書き換え始めた。


王の頭上に、砕けた半分の王冠を遥かに上回る、漆黒の巨大な冠の紋章が浮上する。


絶望の必殺技――『ラスト・キングダム』。


ドバァッ!!


王の足元から、黒い結晶の津波が押し寄せた。 『王墓』の灰色の地面すらも黒い結晶へ変質し、その波及は破滅的な速度で周囲の壁、崩れ落ちる天井、さらには地底の空洞全体へと広がっていく。


この空間だけではない。 黒い結晶の侵食は、星の血脈(地脈)を通じて地上へ、世界中へと伝播しようとしていた。これが完全に展開されれば、この世界そのものが黒い結晶に覆われ、すべての生命が事象ごと消滅する。


真の意味での世界の崩壊システム・ログアウト


「世界全体が……呑み込まれていく……!?」


アイフェリスが蒼白な顔で絶叫する。 だが――世界の終わりを告げる結晶の波動がカイエンたちに到達しようとした、その刹那だった。


ピキィンッ……!


侵食の波動が、ほんの一瞬だけピタリと止まった。


見上げれば、右半身を黒い甲殻に呑み込まれた終焉王の、左目――澄み切った青い瞳だけに、人間としての最後の強い意志が奇跡的に舞い戻っていた。


王の口が、血管を浮き上がらせ、血を吐きながら激しく歪む。


「逃げ……ろ……っ!」


喉の奥から絞り出される王の声。 直後、右半身の黒い甲殻が波打ち、王の頭部から狂ったノイズが音波となって響き渡る。


『■■■■■■――滅ビヲ――受ケ入れロ――■■■■■』


「黙れぇぇぇッ!!」


王の左腕が、暴走する右腕の爪を血が噴き出すほど強く掴み折る。 二つの人格――世界の終焉を求めるバグの呪いと、民と世界を愛し続けた一人の人間の意志が、一筋の肉体の中で血を吐くような凄絶な鬩ぎ合いを繰り広げていた。


「私は……!」


王の左目から、血と一筋の涙が零れ落ちる。


「私は……まだ……『王』だぁぁぁぁぁぁっ!!」


世界を滅ぼさせまいと、己の全存在を賭して『ラスト・キングダム』の完全発動を必死に抑え込む男の姿。


それを見た瞬間、カイエンの胸の奥で、炎のような確信が燃え上がった。


(そうだ……間違えるな……! 目の前にいるのは、撃破すべき『敵』じゃない……!)


カイエンは削れた魔剣を強く、折れよとばかりに握り締めた。


(この人は……数百年間、たった一人で世界を守り続けてきた……! 倒すんじゃない……俺たちが……この人を『救う』んだ……!)


「みんな、聞け!」


カイエンの声が、崩壊する大空間に響き渡る。


「王を殺させはしない! あの呪いだけを叩き斬り、エドガルド王を救い出す!」


「……! 了解、であります!!」


「カイエン……ふふ、最初からそのつもりです!」


仲間たちの目が、絶望を振り払うように強い光を取り戻す。


アイフェリスが前へ踏み出た。スレンダーな身体から、残された全魔力が一滴残らず、青金の光柱となって爆発的に噴き出す。


「私の全魔力を……カイエンのバフと、道を切り拓くこの一撃に捧げます!」


アイフェリスは瞳を輝かせ、杖を天へ掲げた。 限界を超えた魔力がカイエンの全身へ流れ込むと同時に、終焉王を囲む黒い結晶の壁へ向けて、彼女の最強の極大破壊魔法が放たれた。


「燃やし尽くしなさい――『エクスプロージョン』!!」


ドガァァァァァァンッ!!


視界を埋め尽くす圧倒的な爆炎が黒い結晶の津波を焼き払い、侵食の波を真っ向から押し戻す。


「次はわたすの番であります!」


マキマが叫び、その身を躍動させた。 「マヤ様の科学の想い……こんな理不尽なバグなんかに、ここで終わらされてたまるかでありますかぁっ! トランスフォーム!!」


マキマの掛け声とともに、残された大型電子銃と、宙を舞う最後のリレーファンネル群がカチカチと高速で組み合わさっていく。 ファンネルが砲身の増幅器となり、電子銃が長大な試作型超高出力スナイパーライフルへと姿を変えた。


「私が先導して、相手のふところまで連れて行くよ!」


ヒナは腰から『竜のナイフ』を引き抜くと、それを逆手に構えて走り出した。 彼女は竜のナイフで目の前に立ちはだかる高密度の結晶の壁を力任せに切り裂き、超高出力スナイパーライフルを構えて引き金を引く。


ズドォォォォンッ!!


貫通力の極致に達した電子レーザーが、爆炎の隙間に残った黒い結晶の防壁を一直線に撃ち抜き、王の胸元へと続く一本の「光の道」を穿った。


「来い、カイエン!!」


マキマが切り拓いたその道の中を、カイエンは風となって駆け抜ける。


アイフェリスの全魔力を込めた加護。 マヤの遺志を継ぐマキマの科学の閃光。 そして、命を賭して暴走を抑え込み続けるエドガルド王の抗い。


すべての想いが、カイエンの掲げる魔剣の先へと集束していく。


「お待たせしました、エドガルド王――今、その呪縛を解き解す!!」


カイエンは踏み込み、黒い結晶に侵食された王の右胸――バグの核へ向けて、渾身の一撃を突き繰り出した。

世の中のカタルシス好きな方はわかると思うのですが、一方的な悪などはないというのを書きたくて作品を書いてる節があります。


評価コメントブックマークありがとうございます!とても嬉しいです!ぜひ作品が良いと思ったらポチッとお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。